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祟りかご利益か、諏訪の祓旅

今年も暖冬で御神渡りは見られない。

辰年なのに、諏訪の水神様は湖を渡らないようなのだ。そうだけどどうしても行きたい。なんとしても諏訪大社四社をコンプリートしたかった。そこで「あずさ」で茅野にいき、守屋山方面に。駅から歩いて30分ほどで前宮に到着する。その道すがらなにかがおかしかった。小学生のころ、給食を食べてすぐ校庭を走り回ると横っ腹が痛くなったが、それ的に久々片腹に疼痛、駅の「八ヶ岳オクテット」 で巨大野菜のサンド(シャキシャキでうまかった)を食べてすぐ歩き出したからかも。

前宮は守屋山の麓にあり、本殿の付近には山の水が流れ集まる禊の池、水眼の池もある。諏訪信仰発祥というが、四社で一番ナチュラル。四方の御柱も見事な丸太の柱が4本屹立している。山に近くて神域感が濃い。

先客が5名。一人は華やかな中年女性であとの4人は地味な若い女性たち。華やかな人が若い人たちに「もっと力を感じなさあい、感じて受け取るのですよお」と言い聞かせている。若い女性たちは神妙な顔をして、神殿にむかって手を合わせる。最近では神社に参拝するのにスピリチュアルガイドがつくツアーというのもあるという。回り順、拝殿の方法、願い事の内容などなど、神々に届きやすいコツがあるのかもしれない。

そこから神長官守矢史料館 に。御柱を見たからミシャグチ信仰もカバーしないとバランスが悪い。そんなことを考えながら、御頭祭の展示がある資料館から、同藤森照信氏の意匠である空飛ぶ泥船を経て、本宮へ。その時まだ片腹が痛くて、筋肉痛かと思っていた。

上社本宮は山に向かってぐっと深い施設。武田信玄の墓所もあって、マッチョな政治や権力、秘密の匂いがする。ご神体の守屋山には本宮に沿って神域の森もある。お参りをして、諏訪湖へ向かった。本宮から諏訪湖は遠く、畑中の道を延々歩いて、上諏訪駅まで2時間弱。疲れ切ってしまって電車に乗り下諏訪へ。その日は毒沢鉱泉泊。毒沢鉱泉・神乃湯は町を抜けて普通の住宅地を抜け、突如現れる里山にある。宿の後ろの山から例年御柱をおろすのだそうだ。人里に近いが深山の趣。飲泉もできる鉱泉はミカンみたいな味がする酸性で、総木造りの湯舟、ポッとともった電灯の明かりに湯気が煙る、山の外気が気持ちいい、求めていた秘湯欲を満たされる。すっかり緩んでしまい、9時前にぐっすり眠ってしまった。

ふと1時ごろ目が覚める。部屋には4方向から音が聞こえる、隣室の人のリズミカルないびき、施設のモーター音、別の隣室のテレビの音、そして二階屋の二階なのに上からも足音が響く。前にも古い温泉地でそんなことがあった、半分寝ぼけて考える。バタバタと走り回る足音、子どもの歓声、屋根裏から聞こえるのだろうか。いびきとモーター音が規則的なミニマルミュージックのようで、うるさくもあり、催眠効果もあり、いつのまにか朝になっていた。

翌朝は、下社春宮へ直行、ここは前宮とは違う意味で完成度が高い。洗練された山の社という感じで、コンパクトで清々しかった。秋宮もだが、下社では本殿の前に神楽殿があり、神楽殿を迂回しないとお参りできない。湖から来た者がまず向かい合うのは神楽殿になる。これは何の用心(上社は神楽殿で遮られない、ただ本殿は鳥居から直行はできない位置)なのだろうか。私感だけれど、交通の面でも規模でも、秋宮は四社で最も外に向かって開いている印象もある。諏訪信仰については何も知らないが、ここは最後にお参りするのにふさわしい。前宮から守矢、本宮、御柱の森にある神の湯、春宮、秋宮の順番で参拝したら、何かの中に入り、外に出た気がした。諏訪は各所でお湯がわいていて、つい手を浸す、都合手を濡らし清めながら進む巡礼みたいだった。

蕁麻疹+疼痛、いやいやいや…認めたくない

帰宅して夜、片腹に蕁麻疹が出現した。そういう体質なのかちょっとしたことで腹部に蕁麻疹が出る。いつもは納まる蕁麻疹は収まらない。時々疼痛もあり、筋肉痛と蕁麻疹が連動しているみたいな感じがする。嫌な予感、あれかも?認めたくない、あれじゃない可能性を探る。一週間たっても回復せず…片腹の激烈な痒みと腫れ、焼けるような疼痛が日に日に強くなり、眠れない。将来どこかで因果が繋がる予感があったあれか?いやいや、認めたくないのだ。病院が嫌いなのだ、行きたくないのだ、ネットで調べれば調べるほど、あれだ、という確信。悪化すると入院?ついにあきらめて皮膚科に行ったら、我ながら見立てはバッチリ帯状疱疹だった。抗ウイルス剤を一週間投与、あとは何もなすすべなし。

茅野で「痛たたっ」てなったときに、現実から目を背けず、早めに皮膚科に行けばもっと軽くて済んだ。思えばここ数週間、ずっと不調だった。書き物が進まずぼんやりしていたし、眠れない日もあった。皮膚の内側では脊髄から忍び出たウイルスが着々と神経を冒し増幅していたんだったのだ。そんな悪状を抱えたまま、衝動的に諏訪行を強行して発病。

これは祟りか、ご利益か。結果龍神に祓われて永年の悪いモノが表に出たとか。

なんかね、世界的にあれ、コロナ罹患経験者に増えているそうですよ。