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宇宙イモ

鈴鹿の産直市場のフリップにそう書いてあった。握りこぶし大の黒い塊で、ごつごつした表皮をしていて、ブツブツが隆起している。手に取ると硬くて石みたい。正体は巨大ムカゴ: 山芋の葉の付け根にできる、球状の芽だった。普通のムカゴは指先くらいのサイズだけど、大きくなる種類らしい。皮をむくと皮の内側はアボカドみたいな色をしていて、身の方は緑ががかった黄色。揚げたり蒸したりして、癖がなくて甘味があり、和食に広く使えそう。珍しいものは縁起がいいんじゃないかしら。

外見が奇抜な野菜は、味はわりと淡泊なものが多い。あくや粘りもそんなに気にならない。味は芋というより、クリに似ていた。宇宙イモのフライ、宇宙イモのきんとん、宇宙イモのクリームスープ。調子に乗って買い込んだ芋が食卓に並ぶ、宇宙シリーズ。「えーまた宇宙イモかよ」…SFファミリードラマみたいな正月。