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2020年映画ZAKKIちょ~ 24本目 『魔女見習いをさがして』

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2020年製作/上映時間:91分/G/日本
劇場公開日:11月13日
鑑賞劇場および鑑賞日:TOHOシネマズ日本橋(1回目、2回目 11月13日)、TOHOシネマズ錦糸町(3回目 11月21日)、渋谷TOEI(4回目 12月5日)、丸の内TOEI(5回目 2021年1月1日)

「おジャ魔女どれみ」を愛してるみんなにとっどけ♪「最幸のハッピーラッキー」ムービー♬

【あらすじ】
教員志望の大学生ソラ、帰国子女の会社員ミレ、フリーターのレイカ。年齢も住む場所も境遇も全て違う3人が「おジャ魔女どれみ」のファンという共通点で意気投合し、一緒に旅をすることに!

 2020年で放送21周年を迎えた魔女っ娘アニメ「おジャ魔女どれみ」(以下、「どれみ」)シリーズ。
先日、別稿にて、筆者が11年前に「どれみ」が、日本アニメ史においてどれだけエポックメイキングで、放送から21年経っても年中無休のドキドキワクワクな作品なのかについて解説しつつ、むきだしの愛を綴った総括文を公開。

本作について語る前に、どうしても筆者が「どれみ」をどれだけ愛しているかを前提にせねばならなかった。
若干、ネット弁慶的な若気の至りに満ちた文章だったが、恥ずかしげもなく公開したのであった。

だもんで、本稿をお読み頂く前に、お暇を作って頂き、上リンク別稿をご一読頂けますとハッピーラッキーでございます。

 そんなこんなで「どれみ」シリーズの最新作に位置付けされる本作「魔女見習いをさがして」。

映画を観る前に、作品内容についてはなるべく事前に情報は遮断したい派なので、本作もその例に倣って予告編も観ずに、公開初日は当然仕事も休み、期待と不安に胸が溢れそうになりながら神妙に、そして浮き足立ちながら劇場へ足を向けた。

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○良かった点

良かった点は下記3点。

1.“どれみ”愛ドッカ~ン! 「ファンにとってのご褒美」ムービー♬
2.女性の自立、夢、絆を真摯に寄り添って描く「シスターフッド」ムービー♬
3.
日本7カ所を巡る「お気楽極楽☆彡GoToトラベル」ムービー♬

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1.“どれみ”愛ドッカ~ン! ファンにとってのご褒美ムービー♬

 まず、本作を観終えて思ったこと。
『これまで「どれみ」を愛し続けてて良かったああ!!!!!!』

本作は、「どれみ」への想いが大きければ大きいほど、それに比例するかのように美味しくなっていく、極上の松阪牛ステーキのようなご褒美映画!

「どれみ」を好きでいて、信じていて良かったと本気で思わせる。
これだけ、作品へのリスペクトが込められた、アニバーサリーという意味合いの強い作品は日本アニメ映画では初めて観た。

初回を観終わった直後は色々な感情がドドドドーッと襲ってきて、どっきりどっきりDON DON!!と息が荒く興奮していた。
あの息の荒さは、けしてマスクのせいでは無かった。
どれみが生まれて初めてステーキを食べた時の気持ちって、こんな感じだったんだろうか。

なぜなら、これは、「どれみ」好きによる「どれみ」好きの為の「どれみ」愛爆発ドッカ~ン映画だったのだから〜~!

今でも本作を思い出すだけでも泣けてくるし、心がじんわりと温かくなる。
まるで、ハッピーラッキーが筆者のハートに届いたかのようである。

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 本作がまず驚きな点が、「どれみ」を幼少の頃に観て育った女性3人が主役だということ。
つまり、現実と同様に「どれみ」のキャラクターが存在しない世界!
視点はあくまで、我々と同じく「どれみ」というアニメシリーズを好きな3人が中心。


これでどうやって話を成り立たせていくんだろうか…。

冒頭は若干不安も感じたものだが、いつだってハートのどまんなかにおジャ魔女がいるほど「どれみ」が好きという共通点のソラ・ミレ・レイカの3人が一同に会してからは、もう展開が早い早い!!

91分があっという間!
流れるようなテンポの良さの脚本で、体感時間がアニメ1話分の24分くらいなのが本当に凄い。


まだ4回しか観ていないので、全貌を把握しきれていないが、各シーンの細かいところの作り込みもばっちりばっちりBAN BAN!!に徹底していて、無駄なカットなどひとつも無く、旨みが凝縮している感じ。

「どれみ」が好きだった人ならクスっと笑ってしまうシーンも多く、時に本編映像が挿入されて、物語をエモーショナルに盛り上げるなど、効果的に使われており、最初から最後まで全編に「どれみ」愛に満ち満ちている。

また、「どれみ」シリーズに縁あるキャラ設定、およびかつてのキャストが色々な登場キャラクターで配置されているのも面白い。

こうした制作側の「どれみ」愛に対して、本作で初参加のメインキャスト3人もそれに応えようと演じているのが観客側からも伝わってくる。

 それでもメインキャストの3人は、本職が声優ではない。
正直、キャストが発表をされてから、本作を観るまで最大の懸念点だった。

これがびっくりびっくりBIN BIN!!
ぜんっぜん違和感無し!


声の演技が下手とか、そういうノイズのようなもので作品の没入感を阻害することは一切無かった。
むしろ観ていて、観客が3人の事がちゃんと好きになるキャラ造型の深さも後押ししていた。

このキャスティングは、結果的に大成功だったと断言できる。

以下、本作の主役である3人のキャラクター紹介をどうしてもしたい。

 愛知県の大学で教員免許を取る為に勉強している大学4年生・22歳の長瀬ソラ役を演じるのは、女優の森川葵

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ソラの性格は「どれみ」で言うところの”藤原はづき”のようなおっとりとした性格で、引っ込み思案がコンプレックスという設定。

見た目は、美空第一小学校の保健室に勤務して、生徒たちから慕われていた養護教諭の、ゆき先生に似たショートボブカット。
「どれみ」のキャラクターでは、主人公である”春風どれみ”推し。
筆者と同じ。

元々「どれみ」ファンだったという森川さんの仕事を、映画やドラマで観た事が無かったのだが、最初にソラが登場した時には、「な、なんて声量の無い声なんだ、マジで大丈夫なのか…?」と、声優ではない人間がアニメの声を当てることにかなり否定的な筆者としては、一抹の不安を抱えながら観た。

ところがドッカン、話が進むにつれて、もう森川葵ではなく、ソラとしか観れなくなってくるのである。

話運びの上手さや、キャラクターの細かい描き込みなど、色々な要因もあるが、一番大きいのは、やはり同じ「どれみ」好きとして感情移入してしまったからだと思う。

 東京で働くリーダーシップと行動力がある帰国子女のキャリアウーマンである27歳の吉月ミレ役を演じるのは、松井玲奈

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ミレの性格は「どれみ」で言うところの”瀬川おんぷ”と”飛鳥ももこ”を合わせたような性格で、生まれ育った環境がアメリカという帰国子女だけあり、思ったことをすぐにズバズバ言ってしまい、その性格が物語を大きく動かす。
「どれみ」のキャラクターでは、”藤原はづき”推し。

 松井玲奈と言えば、SKE48というアイドルグループ在籍だったことでも有名。(更に言うなら一時期、乃木坂46にも在籍していた)

松井さんはもともと「どれみ」ファンだったらしく、2019年の映画製作発表の段階では、友達と「公開されたら観に行こうね」と言っていたらしく、その後ミレ役をオファーされたという経緯が。

グループ卒業後の活動も、前述の森川葵同様、ドラマなどでそんなに目にした事が無かったので、「演技大丈夫かな~」と不安だったが、こちらも観終わる頃には完全にミレとしか観れなかった。

パワフルで行動的なキャラクターの強烈な個性が、それを演じる役者の熱と呼応し、化学反応を示したかのように、ミレ=松井玲奈と同一視化されてしまった。


 尾道のお好み焼き屋でアルバイトをしている20歳のフリーター、川谷レイカ役を演じるのは、百田夏菜子。(以下、かなこぉ↑)

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レイカの性格は、明るく元気で天然ながらも、幼少の頃の両親の離婚を経験しているという意味で、「どれみ」で言うところの”妹尾あいこ”と”春風どれみ”を合わせたような性格。「どれみ」のキャラクターでは、”妹尾あいこ”推し。

 百田夏菜子と言えば、アイドルグループ、ももいろクローバーZのリーダーとして現在も活動中。
その他、声優としてもMARVEL作品「ブラックパンサー」の日本語吹替版にも出演。

筆者は、ももクロは、グループ名に「Z」がつく前まで(2011年4月10日以前)は熱狂的なファンであったので、今回「どれみ」作品にかなこぉ↑が出る事に関しては正直「は?なんで?」と否定的だった。

かなこぉ↑は「どれみ」は本作のオファーが来る前の幼少期からずっと好きだったとのことで、裏表のあまり無さそうな彼女の性格からして、それはリップサービスではなく本当なのだろうと思う。

アイドルとしての彼女は天真爛漫な性格でバツグンの運動神経を持っていて、きんきらきんきらRIN RIN!!に華があって大好きではある。

だが正直、声優としてのかなこぉ↑は、その独特の声を聴くだけであの顔が浮かんできちゃうから、洋画とかアニメだと世界観を壊しちゃいそうで、ちょっとキツイな~という苦手意識のようなものがあった。

結果的に、本作のメインキャストの3人の中で、一番インパクトのある演技を見せたのが、元気で明るさを持ちながらも、小さい頃に父親と離別するという心に傷を負った繊細さも兼ね備えたレイカを演じきった、かなこぉ↑であった。
尾道在住というキャラクターなので、広島弁もかわいかった。

「魔女見習いをさがして」の川谷レイカ役は、間違いなく現時点での百田夏菜子にとってのベスト声優ワークと言える。

以上、メインキャスト3人の紹介でした。

声優以外の人をメインに持ってくるキャスティングについては、日本アニメ映画ではよくあることだが、実際にキャスト3人が元々「どれみ」が好きだったというのも成功の要因だったように見える。

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2.女性の自立、夢、絆を真摯に寄り添って描く「シスターフッド」ムービー♬

 まずは下記の”ハーバー・ビジネス・オンライン”という媒体の記事リンクを一読頂きたい。

「2020年の女性たちに勇気を与えたシスターフッド映画11選」


という、こちらの記事において、2020年に公開作品の中から『チャーリーズ・エンジェル(リブート版)』、『ストーリー・オブ・マイ・ライフ わたしの若草物語』、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』、『82年生まれ、キム・ジヨン』など話題になった作品を含む、女性たちが主役の、11本の「シスターフッド」作品が取り上げられている。

そのうち唯一、日本作品として『魔女見習いをさがして』が選出。

「シスターフッド」とは、“女性同士の関係性や連帯、絆を見せる作品”のこと。(「ブラザーフッド」はその男性版)

 本作は前項で述べたように「どれみ」ファンが喜ぶご褒美映画でありながらも、「どれみ」作品を観た事が無い女性にも(もちろん男性も)楽しめて勇気を貰える作りのシスターフッド映画である

若き女性3人が「どれみ」というアニメ作品が結んだ縁により出会い、それぞれの立場、夢、考え方、悩みを持つ中で、各々の意志で少しづつ前へ進んでいく。

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 オープニング早々、春風どれみと思しきシルエットのキャラクターが「ねぇ、みんなは大人になったら何になりたいの?」と問いかける。

「どれみ」を好きだった幼児の頃は、なんにでもなれる、魔法は本当にあると信じていたけど、大人になるにつれ、夢を持ちながらも、次第に壁にぶち当たり、現実とのギャップを受け入れて悩みながらも日々を送っているソラ、ミレ、レイカの3人。
こうした経験は性別関係なく子供時代に誰にでもあると思う。

また、今年、誰にも予想できなかった社会情勢の中で、仕事をしていても自分の自信とか存在価値すら失いかけて、常に不安を抱えている人が増えているのも想像に難くない。(筆者もそのうちのひとり)

 もともと「どれみ」シリーズは、小学生が等身大の悩みを抱えながらも、自分の意志や友達の支えなどで解決していく姿を描いていた。
その中で、「なんでも叶えられる魔法」を使うのには「魔女」という肩書きは不要というメッセージがあった。

「みんなの中に魔法はある」


TVシリーズ同様、本作が伝えたいテーマのひとつ。
友好的にビジネスを進められるのも、人の悩みを聞いて一緒に悩んであげられるのも、絵を描いて人の心を和ませるのも、それぞれが持つ「魔法」なのである。

 そして、自分だけの考えに囚われて動けなくても、何かの「きっかけ」で未来は変わる。
その「きっかけ」が生まれる瞬間も魔法だったりする。
ある決断にたじろいでいる時に、自分の背中をちょっとだけ押してくれる勇気も。

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 本作は、そうした悩みや不安を抱えている人が観て、何かしらの明るい道を見つける事が出来る「きっかけ」となるのかもしれない。

つまり、この作品の存在そのものが、そのきっかけである「魔法」の意味合いを持っていて、もはや、かつての魔女見習いであるどれみ達がメインで登場しなくても、成立し得ているのでは?と筆者は解釈した。

 本作は、シスターフッド映画の大きな要素として、社会的な自己実現、男性の抑圧からの解放といった、悩みをブチ壊し乗り越えていく瞬間が大きなカタルシスとなり、女性が観たらスカッとするようなシーンもある。

反面、男性の視点では、無意識で起こしているかもしれない行動に、身が引き締まるような思いだったり。

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 ちなみに筆者は、本作をどういう客層が観に来ているのか、劇場内のお客さんを怪しまれない程度に注意深くチェックしているが、やはり一番目立つのが高校生~大学生とか、20代OLっぽい女性グループが多かったりして、劇中の3人のように、かつて「どれみ」を観ていたようなメインターゲットが来てくれている印象。

さらに上映終了、場内が明るくなった後のリアクションに聞き耳を立てたりすると、「泣いた~」とか「良かった~」とか、グループ内で楽しそうに笑いあったりして、概ねポジティブな印象を受けた。

そういうリアクションを見ると、こちらとしてもニンマリとしてしまう。
本作から何かを持ち帰って貰えてたらいいなと、どれみおじさん思う。

ただし、別な層にとってはまったく反対の印象なのだが…。(詳細は後述)

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3.日本7カ所を巡る「お気楽極楽☆彡GoToトラベル」ムービー♬

 本作は「どれみ」ファンへのご褒美映画であり~、女性が観てスカッとするシスターフッド映画であり~、日本の各地方を巡る観光ムービーでもある!

GoToトラベルキャンペーンが全国的に一時休止になってしまった昨今、旅行気分を味わうのにこれほど最適なアニメーション作品はあるだろうか?!

 本作に登場する土地は、鎌倉、飛騨高山、東京、愛知、尾道、奈良、京都の7カ所。

・「どれみ」に登場するMAHO堂のモデルとなった建物がある”鎌倉”
・映画「も~っと!おジャ魔女どれみ カエル石のひみつ」でどれみの祖父母が住む地として登場した”飛騨高山”
・「おジャ魔女どれみドッカ~ン!」でどれみたちが修学旅行で訪れた”奈良・京都”

など、それぞれの土地の実在の観光スポットを、緻密なディティールで見せていく。細やかな風景描写に、美術監督の手腕が光る。

特に、”飛騨高山”とか飛騨牛くらいしか知らなかった身としては、他にも各地の名産が知れたりとか、観ていてソラ、ミレ、レイカと一緒に観光している旅情感もある。

 なお、本作を「ロードムービー」と称する人もいるが、なにかひとつの目的に向かって旅を続けるわけではないので、「ロードムービー」ジャンルとはまた異質である。(それぞれのキャラの自宅なり地元のシーンも多いし)

やはり「観光ムービー」という言葉こそがふさわしい。

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 奈良行きのビスタカー車内で出会う”瀬川おんぷ”推しの大学4年の男子、大宮竜一(CV:三浦翔平)との出会いもあり、キュンキュンする青春感が増してくるのも楽しい。

ちなみに、大宮の声を演じた三浦さんは、メイン3人と同じく、本作が制作発表された2019年の段階から自身のインスタグラムで新作が公開されることに喜びを現すかのように「なんてこった…。ありがとう。」と投稿しているぐらいの「どれみ」ファンであり、劇中の大宮さんと同じ、おんぷ推しであったらしい。

ただ、3人と大宮さんの出会いのシーンで、『男性も「どれみ」ファン多いですよ』はよく分かるのだが、『男の人は皆おんぷちゃん推しですよね~』という台詞があり、「いや、それは違うよね!」と、断固として異を唱えておきたい。

 また、出会った人の名前をネットで検索して、人間性を疑ったりするというのも、本当に世の女子たちがやってそうな、今どきの描写で良かった。
(ちなみに筆者の本名をネットで検索すると、地方のプロテニス選手がヒットします。同姓同名なので)

 あと、この3人が色んなシチュエーションで飲酒するシーンが数多く登場するのも特徴的。

大人の旅っつったら酒!解放感!分かる!

出会った頃は未成年で飲酒できなかったレイカも、物語が進むにつれて、ミレさんの影響で酒飲みへの道を歩んでしまっているのも微笑ましい。
(しかも、酔っぱらった年上2人の世話をしてて、酒に強そう)

あと、下画像の、とある事がきっかけで居酒屋でソラちゃんがグダグダ絡み酒するシーンは爆笑どころのひとつ。
正直、最初観た時には声を出して笑ってしまった。

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×良くなかった点

本作の内容はPG-12指定相当!「どれみ」の新作だからと言って、小さいお友達が観てもまったく楽しめない!

 上述の通り、かつて「どれみ」のターゲット層であった、幼稚園児から小学生低学年くらいまでの年齢層が時を経て、学生さんから20代くらいまでの年齢層が本作のメインターゲットである。

本作公開前には、どれみほか魔女見習いたちの姿を大々的に打ち出す予告編がアップされていたが、実際の本編の内容は上述の通り。

 錦糸町のシネコンで本作3回目を鑑賞したのだが、その劇場はプリキュア映画など、女児向けアニメ映画の新作が公開されることの多い、ファミリーがよく訪れる劇場だった。

筆者のすぐ隣の座席には、4~5歳くらいの女児が補助席を使って座っており、さらにその横に母の2人が座っていた。
すでに内容を知っている筆者は不安に襲われた。

「これ、女児は退屈してグズり始めるんじゃないのか…?!」

本編上映前に、プリキュア映画やセーラームーン映画の新作の予告編が流れ、女児的にはテンションが上がってきていたかと思う。

どれみおじさんの予感は的中した。
オープニングで、魔女見習いたちのシルエットが登場して少し反応するも、その後、おジャ魔女の出番は来ず、メイン3人の観光ムービーとなってからは、“♭”した気持ちの地蔵状態に。

特に心苦しかったのが、メインキャラ3人が京都・奈良に向かっている辺りのシーンで、その女児が母に「ねぇ、おジャ魔女いつ出てくるの…?」と悲しげな声で聞いていたことである。
さらに、小さい声で「…つまんない」とつぶやいていた事も隣に座っていて聞き逃せず、筆者の気持ちはしょんぼりしていくばかりだった。

4~5歳の女児が、ムカつく会社の上司に辞表を叩き付けたり、ヒモの男を背負い投げしたりするシーンなんて見てもポカ~ンだもんな…。

一応、終映後、女児の隣に座っていた母親が「これは大人の話だったね~」とフォローを入れていた。
いやいやお母さん、事前にチェックしてくださいよ!

 本作は、メインビジュアルで、魔女見習い5人の姿が堂々と映し出されているが、これは下手すると優良誤認に映るんじゃないだろうか。
そりゃあ、小さなお友達からしたら、おジャ魔女たちが活躍する姿を観たいよね…。

ティーザービジュアルではソラ、ミレ、レイカの3人がメインで映っているが、それだと「おジャ魔女どれみ」の作品だと分かりづらい…という事情は分かる。
分かるのだが、それにより、こうした誤解を生んでしまう。

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 本作は元は子供向け作品ゆえ、もちろん描写的に映倫基準は全年齢対象であるが、
作品の内容としては、”PG-12指定(小学生は保護者の助言や指導が必要)”と断言できる。
はっきり言って「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」より遥かに”PG-12指定”がふさわしい。

正直、ローティーンにも満たない幼稚園児や小学生低学年が、女性の自己実現とか夢とか現実とのギャップに悩む姿を描く本作の内容を理解できようか。
映倫側は目に映る描写でしか判断しないから、そういう事を言っても無駄なのだが。

 しかし、本作は制作段階から「大人向け」を打ち出し、「どれみ」を知らない人にも鑑賞できるように、数ある方向性の中から「おジャ魔女をほぼ登場させない」選択をしているので、ある一定の層はバッサリ切り捨てるのはやむ無しとも言える。
それに中途半端に小さなお友達へのサービスシーンを挿んでいたら、それはそれで、作品の意図がブレる可能性もあったわけだし。


 あの時、錦糸町で「魔女見習いをさがして」を鑑賞してしまった女児に、どれみおじさんから言いたい。

『たのむから、「どれみ」のことをキライにならないで。きっともっとオトナになってなにかにつまづいた時、ふとしたきっかけで本作を観返す機会が来たら、この内容が君のステキが∞(無限大)な未来の助けになるかもしれないから…じゃぁまた見てね!』

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◆結論

 以上、3点の良かった項目を要約すると、本作は下記のような方にオススメします。

・子供の頃、「おジャ魔女どれみ」を観ていた人。
・最近、映画業界で盛り上がりを見せるシスターフッド作品の日本版を観たい人。
・GoToトラベルが中止となり、旅行へ行けずに凹んでる人。

 なお、本稿を締める前に、本作のパンフ内の「どれみ」生みの親とも言える関弘美プロデューサーの発言が気になったので抜粋。

私はこの作品を作りながら、「『どれみ』は、2代目、3代目と繋げていけるコンテンツになるかもしれない」という予感を感じていました。東映アニメーションでも「ゲゲゲの鬼太郎」という作品がありまして、十数年に一回、その時代に合った『鬼太郎』が放送されています。

なるほど、確かに「鬼太郎」はこれまでスタッフ・キャストが総とっかえで何度もリメイクされて放送されている。
今回のアニバーサリー企画で終わらず、さらに末永く愛されるコンテンツとして「どれみ」も成長していってほしい。

2代目「どれみ」とか観てみたいとは思いませんか?!!


だがしかし!
その為には、なんとしても本作をヒットさせて次に繋げないと…!!!
クチコミ頑張ろう。

それでは最後にみんなで予告編を観てみよう。


© 東映・東映アニメーション

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