2021年映画ZAKKIちょ~ 1本目 『新 感染半島 ファイナル・ステージ』
2020年製作/上映時間:116分/G/韓国
原題:Peninsula
劇場公開日:2021年1月1日
鑑賞劇場および鑑賞日:東京国際映画祭(1回目 10月31日)、TOHOシネマズ日比谷(2回目 12月27日)
ウイルスに侵された朝鮮半島!壊滅した荒廃都市に潜入した男たちの現金奪取作戦が始まる!
【あらすじ】
人間を凶暴化させる謎のウイルスが半島を襲ってから4年。香港に逃げ延びていた元軍人のジョンソクは、限られた時間内に大金が積まれたトラックをチームで回収し、半島を脱出する任務に向かうのだった!
2016年公開された前作『釜山行き』(邦題:新 感染 ファイナル・エクスプレス)は、韓国ゾンビ映画というジャンルが確立された決定的な作品だった。
ゾンビパニック物としてだけでなく、それぞれの登場人物の深みある描き方、狭い空間から広い空間へ繋ぐテンポ感のある見事な構成、一級品のエンタメ作品として本当に完成されていた。
日本をはじめ、世界中で大ヒットを記録したのも記憶に新しい。
また、今やハリウッド映画にも出演するほどの人気を獲得している、マ・ドンソクがステゴロでゾンビに立ち向かう姿が印象的で、彼の存在が世界中に知れ渡ることになった出世作でもある。
そんな、エポックメイキングな前作が偉大すぎたし、しかも、現実にウイルスが世界中に蔓延しているこの状況下で公開された、続編である本作。
少しずつ情報解禁されるにつれ、前作のキャストはまったく出ないという事が明らかになっていったりする中で、果たしてどうなのか、はちきれんばかりの期待を胸に、劇場へ足を向けた。
○良かった点
1.作り込まれたポスト・アポカリプスの世界観で描かれる人間同士のタマの獲り合い!
2.激烈熱いぜ!疾走するクライマックスのカーチェイスシーン!
1.作り込まれたポスト・アポカリプスの世界観で描かれる人間同士のタマの獲り合い!
限定された空間が舞台で息苦しささえ感じてるくるような前作と比べ、続編である本作は、狂った軍人しかいない完全に無法地帯と化した朝鮮半島が舞台。原題である「ペニンシュラ(半島)」がそれを表している。
前作と比較して、賛否が大きく分かれている印象の本作。
筆者の感想としては、劇中、食い入るように見入ってしまう、手に汗握るたまげた傑作であった。
ゾンビものの続編を作ることがどういう事か、監督はちゃんと批判は承知の上で「前作と同じものは作らない」という意志のもとで本作を撮っている点も良かった。
他の人が続編である本作を観て「前作と違う!つまらない!」って言ってんの目にすると溜息しか出ない。
本作は、前作と打って変わってウイルス禍の世界観なので、誰もゾンビに怯えず、むしろ人間同士の戦いで戦いを有利にする装置として利用されているのも、ゾンビ作品の続編のお約束だったりする。
ゾンビ映画の主題は結局のところゾンビではなく、極限状態の中で取り残された人々の人間性をいかに描くかが面白いので、本作は前作と違い、既に荒廃した世界の中を生き抜いているキャラ達がぶつかり合うから、状況が違う前作と比較するのも野暮だと思う。
韓国のみならず、日本でも大人気の俳優カン・ドンウォンが主演ということで、過去のトラウマに悩まされながらも、どんなピンチも大きなケガもせず切り抜けちゃうようなスーパーヒーロー然とした立ち位置は、「あ~彼は絶対死なないっしょ」みたいな印象が最初からあるから、ある種そこは安心して観られるかも。
「前作と同じものは作らない」ルールに則るなら、前作主演のコン・ユと同じ末路にしたら、既視感を覚えるだろうし。
あと、一番の敵役であり、いちいち勘が鋭いファン軍曹は、「北斗の拳」の世界に出てくるようなポスト・アポカリプスの世界にありがちなカリスマ性は感じられなかった。
どうにも見た目からして、ケンシロウに秒殺されそうな分かりやすい雑魚キャラ感が出ているのがちと残念だったりはするが。
本作は登場人物やゾンビ達と同じくらい、いやそれ以上のインパクトで描かれるのが、荒れ狂った朝鮮半島という舞台。
その作り込まれたビジュアルの数々だけでも「これどこまでがCG?」と目を凝らして観てしまうほどリアルに崩壊した都市を活写している。
前作と比べ、2倍以上の予算を投入したブロックバスター作品ならではの凄みを感じた。
2.激烈熱いぜ!疾走するクライマックスのカーチェイスシーン!
ヨン・サンホ監督が本作の中で最も気合を入れて撮ったとインタビューで答えているのが、クライマックスのカーチェイスシーン。
このアドレナリンがドバドバ噴射するような感触は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を想起せざるを得なかった。
それほどのスピード感、テンポ感をもって大迫力の見せ場を作っている。
荒廃した都市の地形を利用しているのも熱い。
しかもこのシーンでも、光と音に敏感なゾンビさん達は人間同士の追いかけっこの障害物として利用されている!
観ていてハラハラするカーチェイスシーンが終わってもひと息つけず、「え~!まだ続くの~!!?」と思いながらも、更に物語はドラマチックな展開に。
ここはちょっとスローモーションが多いお涙頂戴要素が若干クドいような気もしたけど、終わってみれば、「ゾンビ」まんまのオマージュシーンで終了という潔いラストシーンで大満足!!
×良くなかった点
邦題。
前作は新幹線と感染をかけていたが、そもそも韓国は「新幹線」じゃなくて「高速鉄道」だし、前作も日本人の間違った認識のもとにタイトルが付けられていて、ダジャレのようなタイトルに不満の声も多かった。
まあ前作は大目に見てやるとして、本作。
「新 感染半島 ファイナル・ステージ」…。
タイトルがクドい!長い!わけわからん!
なんだ「ファイナル・ステージ」ってよ!前作が「ファイナル・エクスプレス」だからって今回も「ファイナル」とか要らないんだよ!!
シンプルに「感染半島」だけだったら作品の内容をちゃんと現していてスッキリしたのだが、過去の邦画で「感染列島」という作品があるから避けたのかもしれない。
何にせよ、こんなくっそフザけた邦題考えた奴、前に出ろ!
マ・ドンソクが正義の張り手をお見舞いするぞ!
◆結論
「ニューヨーク1997」「ランド・オブ・ザ・デッド」「マッドマックス」「ドゥームズデイ」など、数々のアポカリプス作品がベースとなっている本作。
閉鎖された空間から広大かつ荒廃した空間へ。
世界観が広がり、ゾンビ映画の続編として、まったく別物と化したようにも見えるが、作品の本質である、「極限状態に取り残された人々の人間性を描く」という点では前作に負けず劣らずの見応えある作品に仕上がっていた。
それでは最後にみんなで予告編を観てみよう。