リングフィットとカプグラ症候群
最近はめっきりやらなくなっちゃいましたけど、ちょっと前にリングフィットアドベンチャーに爆ハマりしたんですよ。
ってかそもそもハマる前から、リングフィット自体は持ってたんすわ。んで買って2日くらいはやったんよ。
すぐ飽きたって言うたらそれまでっすけど、だって思いますやん。
ゲームって座ってするもんやって。
行儀悪いし。
まぁそう思ってお蔵に入れてたんすけど、ジムに飽きたことから復活して、そこからハマって毎日やってたんすよね。
リングフィットもさ、やり始めると結構面白いんすよ。とりあえずリングフィットが、フィットネスで敵を倒すRPGってことはなんとなく知ってる人も多いでしょう。
びっくりしたのが、そのフィットネス。
ビビるくらいガチなんすよ。
普通に筋肉痛になるし、終わったら汗だくやし、俺を蔑んだ目で見てくる事務員さんの態度は変わらないし。やっぱ、ちゃんとしたフィットネスなんすわ。
そんなリングフィットをこの前久々につけたらさ、ロード中のアドバイスみたいなところになんか書いてあったんすよ。
「設定でリングの声が変えられるよ!」
リングってのは、リングフィットで持たされるあの輪っかの事です。ゲーム内ではあの輪っかが「リング」って名前のキャラで、フィットネス中にアドバイスとか応援とかしてくれる奴なんすよね。
そのリングの声を変えられる。なんかよく分からんけど、新機能として実装されたんでしょう。
んで、設定画面を見たんすよね。
「リングの声を変える」
→男 女
え?
性別を変えちゃうの?
大脳通らず、女に変更するに決まってる。
だってこれまで男の応援一択やったんですよ?
そもともこっちは汗だらだら書いて、死にそうな思いでトレーニングしてんのをハイテンション男子に応援され続けてたんすよ?
ティモンディ耐久をやってるわけやないんやからさ。別に男に応援されても…って思うやないですか。
それが女性に変わるんですからね。
んなもん、パチンコ越えの即プッシュですわ。
んでいざ女性ボイスにしてステージを始めるんですけど、映像上のリング自体は何も変わらんのすよ。
でもそれ以上に、フォルムが変わらないリングに違和感が半端ないんすよ。
見た目も行動も、そしてゲーム内の自分である主人公も、何食わぬ顔で普通にダンジョンをクリアしてるんすよ。
勝ったらハイタッチして、的確にアドバイスと応援をしてくれる。
ただ声だけが女性になってるだけなんよ。
若干言葉も女性らしく変換された。
ただそれだけで、後はそのまんまの世界が続いてるんすよね。
んで思ったんすけどね。
ゲームの外にいる俺だけが、変化に気づいてる感覚がすっげぇ気持ち悪いんですよ。
ほら中二病大好き、ある日世界が変わってる妄想を疑似体験できてしまうんすよ。
急に教室にいる友達の両肩をつかんでさ、「お前…あいつの事覚えてるよな!!!」って聞いて、「チッ…ここもか…」って走り去るあの感じ。
あの感じを疑似体験できる、謎機能が実装されてたんすよね。
この気持ち悪い感覚。
これでちょっと思いだした事があるんやけどさ、皆さん「カプグラ症候群」って知ってます?
カプグラさんっていう心理学者が見つけたから名前がついてるんすけど、精神病の名前なんすよ。統合失調症の一つで、原因もそこまではっきりとわかってない、まぁまぁ珍しい病気。
そんなカプグラ症候群の特徴がさ、今まで普通に接していた周りの人が、ある日突然同じ見た目をした別人に見えてしまうってことなんすよね。
家族とか恋人、親友とかが瓜二つの替え玉に入れ替わっているように感じてしまうらしいんすよ。昨日まで何とも思ってなかったのに、なんか違和感が大きくなっていって元の人じゃなくなってしまったように感じるんですって。
なんかリングフィットの声を変えた時、これが頭から離れなかったんすよ。
リングフィットの世界ではリングはリングやないですか。これまでも当然女性であったかのようにみんなと接してるわけですよ。
ただ自分だけは今までのリングとの違和感が気持ち悪い訳です。こうじゃなかったと思い続けてしまう。
ゲームの世界と自分の感覚の乖離が、なんか変な感じに思えたんすよね。
俺が正しいはずやけど、それが常識じゃない感じ。
ありえない感覚を持ってる感じに、変なぞわぞわっとしたものを感じたんすよね。
そういえば、カプグラ症候群といえば。
昔読んだ小説にこんなんがありました。
主人公は30代の公務員で、妻と子供がいる普通の家庭を築いているんすよ。んでそのサラリーマンは役所に勤めてるんすけど、上司のパワハラに毎日苦しめられてるんすね。
休みも多くて残業も少なく、周りの友達は自分の事をうらやましがるんですよ。自分は自分で、みんなはもっと頑張ってるって考えようとしている。でもやっぱり仕事に行けばつらいことばっかり。
自分を軽視してくる周りと、心労につぶされる自分の間で、主人公はおかしくなっていくんすよ
自分はこんなにつらい。
周りはもっとつらい。
そんなにつらい環境を、普通の人間が耐えられるはずがない。
そんな自問自答を続けて頭を抱えていると、奥さんが視界に入るんすよ。
奥さんは毎日子供の世話で休みもなく働いている。ご近所づきあい、幼稚園のママ友。愚痴もたくさん聞いている。彼女はそんなに強い人だっただろうか?
そこで彼は思うんですよ。
あんなに弱かった彼女がこんな環境に耐えられるわけはないと。
コイツ、ロボットではないか。と。
そして他のみんなも、ロボットに見え始めます。
普通なら自分のようになってしまう。それでも平気なのはみんなロボットだからに決まっている、と。
でも他は確実じゃない。でも彼女は。
彼女はロボットにすり替わったに違いない。と。
そして彼は彼女を問い詰めます。
「何を言っているの?」そういう彼女の言葉もどこか無機質に聞こえはじめ、次第に苛立ちも強くなる主人公。
そして主人公は、玄関からバットを持ってきます。
おびえる奥さんを血走った目でにらみながら、主人公は言い放ちます。
「頭をたたき割って、バッテリーを取り出してやる。」
んで最後は、血まみれの主人公が頭を抱えてうずくまるみたいなオチ。
もう大分昔に読んだ本なんで、なんかの短編の一つやったと思うんすけど、誰の何かもよく覚えてないんすよ。内容も全然違ったかも知らんですけど確かこんなんやったと思います。
なんなら、今日の今日まで忘れてたくらいでした。
まぁ何でこの話書いたかっていうと、カプグラについて調べてて見つけたんすよ。
ロボットだと思って、奥さんの頭をたたき割ったって話。
本当にあったんですって。
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