NO.5 オムニコートでトッププロは育つのか?

どうも、プロテニスプレーヤー、乾祐一郎です。


今回は、いろいろな所で議論されている、
「オムニコートが日本人選手の世界のトップレベルでの活躍を阻んでいるのではないか」
というテーマについて、私なりの意見を述べてみたいと思います。


私たちが転戦しているITFサーキットやATP・WTAのサーキットは主に3種類のサーフェスで開催されています。
ハードコート・クレーコート・グラス(天然芝)コートの三種類です。
このうち、グラスコートは、年に1か月ほどしかシーズンがないこと、ITFサーキットでも数えるほどしか大会がないことを理由に議論から外させていただきます。


最初に私の意見を述べておきます。
私は、オムニコートは世界トップレベルの選手を国内で育成するのを阻んでいると思います。
ここでは、世界トップレベルの定義を世界ランキング100位とさせていただきます。
大体グランドスラム本戦ストレートインレベルをイメージしていただければと思います。

(100位にも及ばないやつが何を言う!と思われるかもしれませんが、それに関しては本当にすみません。更に精進します…)

ここでは、ハードコート、クレーコート、そしてオムニコートでプレーする際の感覚等から、どのようなことが考えられるかということを書いていこうと思います。


[バウンドの特徴]

まずはよく比較される球足の違いについて整理していこうと思います。

一般的に、ハードコートは球速が速く、クレーコートは遅いと比較されます。
オムニコートはどの位置に入るのか、という話ですが、私はハードコートとクレーコートの間に位置すると思います。
これを聞くと、「平均的でいい速さじゃん」と思うかもしれません。
確かに速さ的には問題ないと思います。

では何が問題なのかというと、まずはバウンドの高さです。
ヨーロッパで主流のレッドクレーコート、アメリカ方面で広く使われているグリーンクレーはオムニコートに比べてとても高く跳ねます。

実際、ITFサーキットでもクレーコートを選んで出場すると、胸より上の打点がとても増えます。
相手選手も高く跳ねさせるようなショットを多用してくるので、高い打点の処理は必須です。

ハードコートでも、球足が比較的速くなく高く跳ねるコート(スローハード)が多いので、やはり胸や肩の打点のショットをいかに力強く打てるかというのがカギになってくると思います。


対してオムニコートですが、やはりバウンドは低い傾向にあると思います。
どれだけスピンをかけてもそれほど高く跳ねることもなく、相手の胸より下の、力がしっかり入るポイントにしか行きません。

そんなコートでプレーしていると、自分のショットにスピンをかける意味が薄れてしまい、きれいなフラットドライブの球を打つようになると思います。
更に、フラットショットで弾道の低い球を打つと滑って鋭くバウンドするので、オムニコートではかなり有効なショットになると思います。
しかし、遅いハードコートやクレーコートでこれをやってしまうと中途半端にバウンドしてしまい、相手のベルトゾーンにちょうど良く弾む打ちごろの球になってしまいます。

このように、有効なショットが違う状況で何年も練習を積むと、いざハードコートやクレーコートで戦うとなったときに、高く弾ませるショットのスキルの差が顕著に出てしまいます。


そして、バウンドに関するもうひとつの問題が、バウンドの勢いです。
ちょっとピンとこない人もいるかもしれませんが、バウンド後にどれだけボールの威力が残っているかみたいなイメージをしていただけたらと思います。

レッドクレーコートは球足が遅いと言いましたが、実はバウンドの勢いはめちゃくちゃあるんです。
バウンドした球が勢いよく上に跳ねていく感じです。

ハードコートもバウンドに勢いがありますよね。
バウンド後にぐっと伸びてくる感覚があります。

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