日記(2020/8/3):数学本要約3/4完了
●何があった?
昨日(2020/8/2(日))、どうやらここ丸1年かかっていたらしい、数学の本、複数冊の要約が、終わったようなのですね。
とはいえ、4冊のうち3冊までなので、まだまだ先は長いのですが、とりあえずだいぶスッキリしました。
ものとしては、彌永昌吉の数論の本『数の体系(上)』『数の体系(下)』、彌永昌吉・彌永健一親子の公理的集合論の本『集合と位相I』と位相幾何学の本『集合と位相II』があり、前者3冊の統合的な要約を果たした、というところです。
●ここはなんだ?
主に数論上の知見を拡げるという目的で、上記の彌永昌吉本4冊を今後読む方のために、念のためお伝えしますと、こういうロードマップがあり、そのためこういう読み方がオススメですよ。という記事です。
●心構え
こんな風に考えます。
まず、急に自分が小学生になったと考えます。
小学生の算数の時間では、手持ちの数学的概念は、まず『自然数』か、せいぜい『平面の図形』くらいしか分からないはずです。
***
さて、ここで魔が語りかけてきたとします。
「+-×÷の出来る1,2,3,...のことを、『自然数』という。算数の一番基本的な道具に見えるが、実はもっと基本的な道具がある」
「いわゆる数にはレベルがあり、自然数より基礎的な数もあれば、より高度な数もある」
「いわゆる図形にもレベルがあり、平面の図形より基礎的な『空間』もあれば、平面の図形より高度な図形もある」
「数と空間は、同じ基本的な道具から、別の系統で発展させて、それぞれ作っていくものである」
「ある種の高度な数は、数と空間の性質を併せ持つ。ここで合流がある」
「いつか、空間の性質を持つ数の、より高度なものが持つ重要な性質が、理科・科学の基礎である物理学の説明に、ものすごく役立つ時が来る」
え? 何! 怖いよう!?
***
まあ、要するに、
「数学において、数と空間はこういう位置付けにある」
ということと、
「数と空間の性質を併せ持つ高度な数がある」
ということと、
「高度な数はゆくゆくは物理学の説明に役立つ」
ということなんですよ。
おっ。意味の分からない(からくそつまんない)数学には、なんと科学の説明の道具に役立つ、という有り難みがあったのか。
科学、特に自然科学は、自然現象や、その背景にある自然法則の説明だから、現実世界との関わりがとても強いんだろう。
その科学を、数学がさらに説明してくれるのか。
あの屁理屈の塊の数学に、そんな不思議が…
(というか、科学の説明としての多種多様な数学を、統合的に基礎づけして説明出来るようにしたくなったので、屁理屈、否、公理系を多用した、公理的集合論等の数学基礎論他が発達したと考えた方が良いのだろうが…)
えっ? じゃあ、科学が分かんなくなったら、数学的な説明を聞かないと、分からんまんま、ってこともありうるのか?
で、数学が分からんと、何もかんも分からん、ってこともありうる?
ええー! 結局数学が分からんと現実世界の説明も理解もうまくいかねーのかよ!
ウッゼエェーッ!
ほんっとーにごちゃごちゃうるせーな。現実世界なんか力でどうこうなるんだから、理屈なんてどうでもえーんじゃボケー。
あ? エアプじゃないんだから、現実世界は力付くだけではどうにもならない、分かるだろ、って?
カラテも単に力だけでなく、型にメチャクチャ影響受けるじゃん?
バイクや車で、急ブレーキや急カーブで、自然法則の慣性や遠心力、避けがたいやろ?
力も、物理学の一つ、力学のいろんな法則に従う?
んで、力学のいろんな法則は、関数を使えば、メチャクチャ簡単に扱える?
要は、バイクや車の乗りこなしは、特に加速度的なことは、指数関数とかの数学に従う?
はー。そーなん? よー分からんが…何かうまく口車に乗せられている気もするが…
●ロードマップ
さて、そんな訳で(何が???)ロードマップは以下の通りです。
1.分岐:基本的な道具(『集合』)→基本的な数(『順序数』)、基本的な空間(『位相空間』)
2A.発展(数):基本的な数(『順序数』)→普通の数(『自然数(の順序的代数系)』)→やや高度な数(『整数(の順序的代数系)』→『有理数(の順序的代数系)』)
2B.発展(空間):基本的な空間(『位相空間』)→やや高度な空間(『距離空間』)
3.合流:やや高度な数(『有理数(の順序的代数系)』)・やや高度な空間(『距離空間』)→高度な数(『実数(の順序的位相的代数系)』)
4.合流以降:高度な数(『実数(の順序的位相的代数系)』)→より高度な数(『複素数(の順序的位相的代数系)』)→より高度な数の重要な性質(『代数学の基本定理』)→(…)→物理学のいろいろへの応用
と、こういう流れがあるのです。
***
なお、『順序的代数系』と書いてあるのは、
「ある種の計算(演算)のルールを満たすもの」
即ち
「代数系もしくは代数的構造(演算の構造)」
と、
「順序的構造(順序のルールに従って出来る構造)」
の組み合わせです。(私が勝手に呼んでいる便宜的な名称です)
最も基本的な数、『順序数』においては、順序的構造の話が出てきます。
また、自然数以上に高度な数においては、代数的構造の話が出てきます。
こうなると、個々の数ではなく、順序や計算を考慮した数全体を考えないと、数の性質があんまり分かってきません。
●彌永本4冊の読み方
・下から積み上げていく場合
もし、丁寧に
「基本的な道具、集合とやらから、数を作る? マジかよ。そんな魔法みたいなことが出来んのか?」
とか
「自然数(の順序的代数系)を太らせるやり方の理屈を知りたい」
とか、
「デブの複素数(の順序的位相的代数系)の秘密の魔法とやらを、せめてメイキング解説だけでも、ぜひ見せてもらおうではないか」
などの積み上げ方をするつもりがあるなら、これは下から堅実に積み上げていくスタイルになります。
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なお、複素数の順序的位相的代数系の秘密の魔法、代数学の基本定理の、実用的な応用については、これらの本には書いてないので、他の方の他の本を読んだ方がいいですよ。
パラパラーッと眺めていたのですが、題名からしてそのものずばりの、ファイン&ローゼンバーガー『代数学の基本定理』とか良いのではないでしょうか。
・『集合と位相I』(3-4.3除く)
まず、『集合と位相I』を全部読みます。
野放図な汎用道具、『集合』というやつから、数を作りたい。
しかし、野放図なままだとそうはいかない。いくつかのルールが要る。
いわゆる『ZFC公理系』と呼ばれるいくつかの制約をつけると、あら不思議、いろんな加工の末に、
『自然数全体の集合』や、
個々の『自然数』や、
計算を考えた『自然数全体の代数系』が!
やれば出来るじゃないですか!
***
ただし、重要なポイントがあります。
『第3章 自然数と整数、有理数-関係、同値関係-』は、いったん後回しにして下さい。(整数は高度な数になるので)
また、『第4章 有理数と実数、選出公理』のうち、『4.1 実数』『4.2 有理数と実数』『4.3 収束数列とCauchy列』も、後回しにして欲しいのです。(有理数と実数も高度な数になるので)
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『4.4 選出公理』でやる、ZFC公理系でいうところの"C"に該当する、『選出公理』。
これは、さっき書いた『順序数』を作るのに使いますので、読んでおいて下さい。
・『数の体系(上)』全部
『数の体系(上)』を読みます。ここは特に何も考えずガーと読んで下さい。先ほど読んだ『集合と位相』Iの大部分がうまく噛み合い、自然数までのことがかなり見えてきたりします。
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念のため、概念として、
『自然数全体の集合』
『自然数』
『0』
『自然数全体の拡大』(自然数全体の集合に0を合併させたもの)
『一意的に存在する自然数全体の集合』
『一意的に存在する自然数全体の拡大』
というのを、持っておいた方がよいかもしれません。
***
『一意的に存在する』とは何か、と言いたくなるかも知れませんが、ZFC公理系から自然数めいたものを作ろうとした時に、それは存在するし、別のバリエーションはない(一意的)、ということです。
これの確認のために、いったん自然数を作って、それを元に、「自然数は真に由緒正しい唯一の存在である」という身の潔白を示さねばなりません。
で、読み進めていけば、めでたく身の潔白は示されるので、ご安心下さい。
つまり、自然数に期待される性質を持つものは、自然数そのものしかあり得ないため、安心して自然数を使いまくってよい、ということになります。
***
ということで、
『一意的に存在する自然数全体の集合』
『一意的に存在する自然数全体の拡大』
を使って、
『順序集合としての自然数全体の集合』
『順序集合としての自然数全体の拡大』
『自然数全体の集合の加法系』
『自然数全体の拡大の加法系』
『自然数全体の集合の乗法系』
『自然数全体の拡大の乗法系』
を作り、いろいろ組み立てて、先ほども出てきた
『自然数全体の代数系』
も経由して、最終的には
『自然数全体の順序的拡大系』
を作る、というところまで持っていきましょう。
これが、これこそが、フルセットの自然数、ということになります。
***
ちなみに、『加法系』とは足し算のルールに従って出来る代数的構造のことです。どういう種類の代数的構造かはその時によります。(自然数の場合は半群というものになります)
『乗法系』とは掛け算のルールに従って出来る代数的構造です。(自然数の場合はこれも半群というものになります)
『代数系』とは、ここでは特に、足し算と掛け算を共に考慮した代数的構造です。
しかし、自然数以上に高度な数を考えると、これだけではまだ完全ではなく、順序的構造(順序のルールに従って出来る構造)との組み合わせで完全になると考えて下さい。
これを仮に『順序的代数系』と呼んでも良いかと思います。(自然数の場合は順序半群というものになります)
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ちなみに、自然数の場合は、これに0を合併させた場合の、『順序的拡大系』が、目指す在り方となります。
整数以上に高度な数の場合は、0は含まれていて当然なので、単に順序的代数系として扱います。
逆に、『0を除いた』パターンというのが時々出てくるので、それは0を除かない通常のパターンと区別しておいた方が良いでしょう。
実数や複素数は位相的構造(空間としてのルールに従って出来る構造)までついてきて、ゴージャスになります。
***
基本的には、
数全体の集合
→数全体の元(要素)としての個々の数
→個々の数同士の関係としての順序的構造・位相的構造・代数的構造
→数全体の順序的(位相的)代数系
という風に作れば良いでしょう。
これは、ZFC公理系が、
(素朴な意味合いでの)集合
→集合に所属する元(要素)
→複数の元を含む部分集合
→(…)→順序関係・演算
→順序数
という風に構築されるので、それに合わせていくと、こうなります。
(別に合わせなくてもよいのかも知れないが、これを基本型として考えると、作りやすくなるし、話がかなり簡単になる)
・『数の体系(下)』(I-II)&『集合と位相I』(第3章)
さっき保留していた『集合と位相I』のうち『第3章 自然数と整数、有理数-関係、同値関係-』を読んで下さい。
また、『数の体系(下)』のうち『I 整数』と『II 有理数』を読んで下さい。
これで、整数(の順序的代数系)や有理数(の順序的代数系)を理解していきます。
同時並行でやることをオススメします。両方の整数パートと整数パート、有理数パートと有理数パートを読み比べるのが良いかと思います。(どちらに何が書いてあったかは識別出来るように工夫しておいて下さい。後で読み返す際に混乱するので)
・『数の体系(下)』(III&付録一部)&『集合と位相I』(4.1-4.3)&『集合と位相II』全部
さきほどとっておいた
!『集合と位相I』:
『4.1 実数』『4.2 有理数と実数』『4.3 収束数列とCauchy列』、
!『集合と位相II』:
全部、
!『数の体系(下)』:
『III 実数』:
全部
!同書:
『付録 複素数まで』:
『位相的概念について』から『コンパクト空間』まで、
『環の準同型とイデアル』、
『Qの完備化、カントルの方法』、
『参考書』、
を読んで下さい。
実数(の順序的位相的代数系)の、順序や計算の性質と、ある種の空間(『距離空間』)としての性質について理解するには、これをやらなければなりません。
かなり面倒になりますが、大事なところです。
これらが終わってから、複素数に進むことにしましょう。
・『数の体系(下)』(付録他の一部)
!『数の体系(下)』内
『付録 複素数まで』:
『多項式環』から『体の代数拡大』まで
を読みます。
これで、複素数(の順序的位相的代数系)を理解していきます。
・『数の体系(下)』(付録残り)
!『数の体系(下)』:
『付録 複素数まで』:
『連結空間』、
『複素平面、いわゆる代数学の基本定理』
を読みます。
これで、複素数(の順序的位相的代数系)の便利な性質、即ち、代数学の基本定理を理解していきます。
●それから先のことは…
さて、このクソ長いあれをやっていると(先ほども書きましたが、私は3/4まで行くのに丸一年サクリファイスしています)、数というものに対する理解が、かなり猛烈に上がってくることでしょう。
***
これを道具として、さらに四元数や八元数や十六元数などのめくるめく(しかも物理学に応用のある)数論のジャンルに行くのも、挑戦、って感じですね。
もちろん、数を使う、数学の別の(しかも物理学に応用のある)ジャンルに行ってみるのも、もちろん大事なところです。
しっかりと腰の据わった、背骨の入った姿勢で、何処にでも行って、何でも創ってやりましょう。
***
俺? もう半年サクリファイスして、残りの1冊(『集合と位相II』)を組み込もうかしらね。
やるぞー。
(一仕事終えた後なのであまりテンションが上がりきらない模様)