『途中学生』#1
アラームが鳴る前に目が覚めた。
窓の外からスズメのチュンチュン鳴く声がする。
いつもと変わらない朝だった。
1つだけ変わった事は、私は今日から中学生になった。
朝食の時間迄、あと1時間位ある。
私は体温計を腋に挟み、熱を測りながら、スマートフォンに触れる。中学生になったので、昨日、父が買ってくれたのだ。まだ、使い方がよく分からない。電話帳には父と母の番号だけ入っている。
何となく自分の部屋を見渡す。
白い壁の部屋には小学生の時から使っている学習机、ホームセンターで買った3段のカラーボックスと洋服箪笥がある。あとは、私が座っているベッドがあるだけのシンプルな部屋だ。
カラーボックスといっても白色なのでカラフルではない。部屋は白色と茶色の2色しかなく、カフェオレの様な空間を形成していた。
ボックスの中には『ハリーポッター』シリーズ全7巻が入っている。私が唯一買って、今でも読んでいる本だ。
ピピッ、ピピッと体温計が鳴る。
「35.9℃か。」
いつも通りの平熱で安心する。学校に行っても大丈夫そうだ。
午前7時
制服に着替え、リビングに行くと、父は先に仕事に行っていたので、母と2人で朝食を食べる。
「今日の入学式、晴れて良かったわね。お母さん達は入学式行けないのが残念だけど、頑張ってね。」と母は言う。
「頑張るって、別に運動会じゃないんだから。」と私は苦笑する。
「何事も最初が大事でしょ。自己紹介でアピールして、友達作れるように頑張らないと。」
特にアピールポイントを持たない私は、それを聞いて、5g位気が重くなった。
「そうだね。スポーツマンシップに則り、頑張ります。行ってきます。」
私はマスクをつけ、鞄を持ち、玄関へ向かう。
私の1日が始まる。
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