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『途中学生』#4 (長文なのでお暇な時に読んでください)

⌛️中学校入学式の翌朝

私は真っ赤に充血した目で、窓の外の電線に止まるスズメをボンヤリと見ていた。

「嘘でしょ・・・今、6時半?」

昨日の夜、晩御飯を食べ、風呂と歯磨きを済ませ、部屋に戻ってきた時は22時だったはず・・・

時を飛ばすスタンドからの攻撃か!
ドドドッ

と深夜のテンションを引きずり、ジョジョ立ちをしている私を見て笑ってくれる人はいない。

「アフロ店長がサブスクリプションサービスとか教えるからだ・・・」

私のスマートフォンに初めて入ったアプリケーションはランダム再生だが、好きなアーティストの曲を無料で聴ける物だった。

鯵缶のアルバムを全曲10回繰り返し聴いた私は、その後はアプリを起動し、朝まで聴いてしまったのだった。

急いで、体温を測り、制服に着替えて朝食を食べ、学校にフラフラと向かった。昨日と同じはずの朝日がやたらと眩しい。

朝のホームルームが始まり、担任の前田先生が話している。

「今日は午前中、通常の授業を行います。昼休みの後は皆さん、体育館に集合して下さい。その時にマスクは忘れないように。午後は各部活動の先輩が部活内容を5分ずつ説明してくれます。」

担任の前田先生はサッカー部の顧問らしい。前に歌番組で観た松崎しげるに少し似ている。サッカーで日焼けしているのか。納得。

「ねぇ、野田は何部に入る?」

と隣の席の桜田ミリアがコソッと話しかけてきた。

「まだ、決めてないよ。桜はどうするの?」

「また、一緒に卓球部に入る?」

桜田と私は同じ小学校の同級生だ。2人で部活未満の卓球クラブに入っていた。

「今日の部活動紹介を見てから決めるよ。」

私は睡魔に負けそうになりながら、答えた。週2回の活動ならいいが、毎日運動するのは、気が50kg位重くなる。

前田先生は最後に「今年も運動部や文化部関係なく、大会が開催されるかは分かりません。でも君達が今しかない中学生の時に一生懸命に努力した事は必ずこれから先の助けになるでしょう。」と言っていた。

⌛️午後

午前中をほぼ居眠りをしてやり過ごしたため、体調は良くなった。1番後ろの窓側の席で良かった。

1年生が全員、体育館に集まった。全部で100人位だろうか。人の事を言える立場ではないが、最近まで小学生だったこともあり、まだあどけなさが残っている。制服の袖丈も大分余って、ダボっとしている姿は少し滑稽だが初々しい。

体育館のステージ上でまずは運動部から紹介が始まった。野球部やバスケ部の先輩方は試合のユニフォームを着て、自分の所属する部活について淡々と説明していた。

⌛️1時間後
ステージの真紅のカーテンが閉まる。次の文化部の準備が始まったようだ。

しばらくして、カーテンの向こう側から、
パーーーッ、パッ、パッ、パラッ
ボンッ、ボボボッ、ボンッ、ボンッ
ドン、ドンドン、ダンッ、ダカダカッ、ジャワ〜ン
と多種多様な音が鳴り始め、全員が呆気にとられた。

音が止み、静寂の中、カーテンがスルスルと上に開いていく。

ステージ上には5人の男女が立っていた。(正確には1人はドラムセットの前のイスに座っているので、立っていたのは4人である。)

突然だが、私の父は東京スカパラダイスオーケストラという音楽グループが好きである。家族で出かける時、車内ではスカパラか西城秀樹の曲が流れていた。

その影響か、今、目の前に立っている先輩達の楽器には見覚えがあった。女性が2人、キーボードとトランペットを担当している。そして、男性が3人、ドラム、エレキベース、おそらくテナーサックスと呼ばれる楽器をそれぞれ担当している。

「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。初めまして、軽音楽部の"ロックメッセンジャーズ"です。それでは聴いて下さい、『チュニジアの夜』!」

トランペットの女性の挨拶が終わると、雷の様なドラムが鳴り響いた⚡️



10分後

制限時間を大幅にオーバーしたため、教頭先生に注意されながら、先輩達がスゴスゴとステージ袖にハケて行った。

私は、放課後になったら軽音楽部の部室に行くことに決めた。全く軽くない音楽が、私の身体中を駆け巡り、黒コゲになるまで感電させていた。

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