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前を向いたまま振り返る。

MOROHAが活動休止を発表した。
その文字だけをみたとき頭で理解することは
できても心が理解することを許さなかった。
何が起こったのかわかりたくなかった。

「昨日新譜出したやん。。」
「なんで。。」

その後にたくさん出てくる思いを、
思考を無理矢理止めて
Instagramのストーリーに貼ってある
YouTubeのリンクを押した。
何を思うにもそれを見てからじゃないとダメだと思った。


僕がはじめてMOROHAを聴いたのは
しゃべくりセブンで東出昌大さんがゲストとして出演されてる回で東出さんの「今会いたい人」のようなコーナーでMOROHAさんを挙げてライブを披露されてた時。


今年こそ?来年こそ?
何年生きれるつもりで生きてきたんだ
今日が終わる いや今が終わる
そう思えた奴から明日が変わる

MOROHA 『革命』より

胡座をかいて弾かれるギター。
歌と最初わからないくらい腹から声を出すボーカル。
釘付けになった。
今も昔もインストの曲でも歌モノでも
「音」として聴いてしまうから何かフレーズが刺さって何回も聞き直すことで歌詞が入ってくるけれど、
こんなに脳を通り越して心に言葉が一発で突き刺さってくる音楽を初めて聴いた。
初めて聴いた瞬間から大好きになった。
今までにない熱量を音楽から感じた。
当時高校球児だった僕はアフロさんも野球部だったって知ってなんだか嬉しくなった。
僕も補欠だった。
長野ほどじゃないけど雪の降る地元だった。
当時は夜素振りする時にモチベーションを上げたくてイヤホンからMOROHAを聴きながらバットを振った。
プロ野球選手を目指したことは一度もないけれど、
最後の試合が終わって少ししてから聴いた
『tomorrow』は、
結局試合には出られなかったけど、
朝誰よりも早くグラウンドに行って居残り練習をしてから帰ってからもバットを振った日々が無駄にはならないかもしれないと思わせてくれた。


本当は一本道の迷路を
散々迷って人は歩くよ
理由はなくとも足は出すよ
そうすりゃそれが理由になるもん!
きっと!きっと!
絶対だよ!絶対だ!信じなきゃ…

MOROHA 『tomorrow』より

高校を卒業して大学に入った時、
高校2年の時からずっとやりたかった
ブレイクダンスをはじめた。
今はブレイクダンスではない踊りに重きを置いて踊っているけれど今でも「生きる意味」と「生きること」と思えるものと出逢えた。
そうするとそれまで以上にインストの曲を聴くことが多くなった。
hiphopやhouse、funkが好きになって、
テクノやアンビエントなど聴く音楽の幅が広がった。
そんな時もかわらずMOROHAを聴いていたけれど、
アフロさんの歌声をリリックをメインに聴いていたのが逆にUKさんのギターに持っていかれることが多くなった。
直接心の輪郭を撫でてくれるような優しい音色。
曲によって激しいものやシリアスなものもあるけれど、全部奥底には優しさがあると僕は感じる。
それはきっとUKさんがどんなに自分に厳しくギターと関わってきたかの証明なのかもしれない。
UKさんはもともとメタル出身でエレキギターをテクニカルに弾いていたのが、
MOROHAをはじめるときに自分が嫌いだったアコースティックギターを手にとってそこからアコギとしてのギター人生をスタートさせたそう。
そこから唯一無二な今の音色を生み出す見当もつかない修練の道。
ストイックを絵に描いたような人なんだと思う。
UKさんは
「MOROHAはアフロの声を届けるのが大事。そのためのギターじゃないといけない」
といったふうな言葉を残されていて、そんな言葉からも「弱さ」を全く内包していない「優しさ」を感じる。

大学、社会人と時を経て
今があるけれど、
どんな時もMOROHAの音楽がそばにあって
支えられ、奮い立たせていただいた。
ダンスバトルに出る前に
『勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ』
『革命』
『震え立つCDショップにて』
『red』
失恋して本当に落ち込んだ時に聴いた
『涙』と『GOLD』にも本当に救っていただいた。
あの時聴いた『GOLD』が
僕が音楽を聴いて涙を流した最初の体験でした。
あんなに言葉を研いで研いで。
真っ直ぐに。シンプルに。それでいて決して浅くはなく深いところで着地する言葉にこだわりを持っている人が歌う
「大丈夫」のリフレイン。
ぜんぜん大丈夫じゃなかったけど、
大丈夫って言葉だけ染み込んで温かかった。
いつか『涙』の最後のように思える日が来ますようにと願った。


多分、俺も多分あなたの1番好きな人にはなれない
とおもうから、せめてあなたが1番好きになった人に
贈りたいと思える詩を歌える人になりたい。

MOROHA 『涙』より


色んな時を、MOROHAと刻んだ日を思い出しつつ
YouTubeのアフロさんとUKさんがライブ終わりに話す映像が終わった。

「MOROHAとしての自分の音楽の引き出しを出し切ってしまった。これから無理矢理昔の曲を擦るようなことをするのはプライドが許さない」
これが大きな理由なんだと少しずつ理解した。

MOROHAを語るとき。
ほとんどの場合アフロさんのリリックが話の割合を大きく占めると思う。
日々を闘う姿勢。
闘う人にも闘えていない人にもそしてきっと自分自身さえ叱咤する鋭さ。
どうしようもないところや恥ずかしいところまでも全部曝け出す生々しさ。
どんなにキツイことや苦しいことを歌っても絶対最後には少しだけでも見せてくれる希望。

そんな剥き出しなアフロさんの
『新曲出せねぇやつなんて追えねえ』
というリリックが今ブーメランのように返ってきて
YouTubeのコメント欄に
「ここで終わりかよ」
みたいな意見がたくさんあった。
もちろん有り難う、お疲れ様という言葉もたくさんあるけれど。

MOROHAを好きだからこそ
「小綺麗な理由で辞めやがって」
って気持ちはわかる。
もっと聴きたいし何よりそんな時こそ歯食いしばってやるのがアフロさんが歌ってきたことじゃないのかって。
MOROHAを好きになった人からしたらMOROHAが活動を休止することは少し裏切られたような気持ちを味わってしまうのも。

でも僕はこれでも一表現者として、そして一ファンとしてこの発表に「なんでだよ!」とはどうしても言えない。

自分に、自分の表現に対して嘘をつくなんて死んでも嫌だ。
僕が表現をする上で感じていることだ。
自分に、自分の表現に対して誠実で在りたいと思う。

UKさんの発言をラジオなどで聴いてるとどこまでもプロフェッショナルに。ギタリストとしてアーティストとしてプライドを持って音楽に接しているかが端々に溢れている。
そんな自分の道に誠実に、誰よりも切実に生きているUKさんだからこそ、今の自分が出せることがない中で新しい曲をつくってしまうのは惰性になってしまうのだと思う。

17年という濃密な時間があって、
それまで培ってきたものがあって、
これからその糧を駆使して出来上がるMOROHAの音楽はきっと素晴らしいと思うし、たくさんの人が聴くんだと思う。
でもそんなことMOROHAの2人も絶対わかってる。
それをやらないという決断がどれだけ険しい道を生むかもわかってると思う。

確かに何もなくなってから
それでも泥臭く生き抜くMOROHAはきっと
かっこいい。
倒れる時は前のめりに倒れる散り際もきっとかっこいい。
でもそんな未来が想像できてしまっている中でつくる音楽は2人にとって「MOROHA」を裏切ることになってしまうんじゃないか。
それはもう「カッコつけ」になってしまうんじゃないか。

アフロさんもUKさんも正反対と言っていいくらい違うけれど、どちらも甲乙つけるのは無理なほど表現として人としての高みにいると思う。
どちらも孤高であると思う。
ぜんぜん違う輝きと鋭さを持つ2人がかけ合わさって生まれる見たことのない世界が確かに存在する。
ただ、MOROHAの話をする時にアフロさんのリリックはどうしても大きな議題になるから
もしかしたら
「アフロさんこそMOROHA」って思ってる人もいるかも知れなくて、
その人からしたら
「アフロ何言ってんだ!今までの歌詞は約束じゃないのか!」
ってなるかもしれないけど
最後の活動休止の理由ってのは
めちゃくちゃにUKさんを表していて、
あれだけ理知的で怖いほど真剣なUKさんがアフロさんにかけた言葉をどうしても否定したり非難することはできない。

だから色んなことを思うし
全部納得できるわけじゃないし
寂しいし悲しいしモロハもっと聴きたい。
けど。

今まで有り難うございました。
そしてお疲れ様でした。

これからの自分の表現としての人生で
お2人と巡り会えたとき
「MOROHA聴いてたし聴いてます」
って伝えた時に
恥ずかしくない自分でいれるように頑張ります。

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