第61回:思い出し笑い「権太楼落語の神髄! これは映像で楽しむべし」(&ツルコ)
執筆者:&ツルコ
第61回:権太楼落語の神髄! これは映像で楽しむべし
*intoxicate vol.116(2015年6月発行)掲載
今ってベテランから若手まで落語CDやDVDが揃ういい時代。だから、実際の高座を観ることはむずかしくても音源や映像で豊富な落語を楽しめます。音だけで想像力を働かせながら聴くもよし、なのですが、やはりしぐさや表情あっての芸。この場面ではどういうしぐさをし、どんな表情をしているかがわかっていたほうが、音だけで聴いたときより楽しめるかもしれません。
ここでも何度かご紹介している柳家権太楼ですが、新作DVD『フジテレビ目玉名人会 柳家権太楼』は、超オススメ! このたびリリースされたのは、権太楼十八番の《らくだ》《芝浜》という古典落語の大ネタ2席。手がける演目についてはとことん研究し、追求し、稽古し、時間をかけて練りあげられている“権太楼の落語”ですから、落語ファンの人も、初めての人でも、きっとご満足いただける作品だと思います。収録されている高座は2007年に行われた落語会で、落語通アナウンサーの“つかちゃん”こと塚越孝がプロデュースしていた「フジテレビ目玉名人会」のもの。落語会の席亭もやってらっしゃったんですね。監修・ディレクターはポニーキャニオンの落語シリーズなどを手がけている瀧口雅仁。つかちゃんから相談を受け、この落語会がスタートしたそうです。
原宿で開催された「フジテレビ目玉名人会」“柳家権太楼の会”は、昼と夜の2回公演で、今回収録されているのはそれぞれで演じた2席ということになりますが、1日でこの2席をやって、しかもどちらも素晴らしいって、すごーい! 《らくだ》は途中までのバージョンではなく、最後のサゲまできっちりと。長い話なのですが、たまたま通りかかってしまった気の弱い屑屋さんが、後半では“同じ人?”というくらいどんどん別の人になっていく様子など、じっくりと丁寧に演じられ、権太楼ならではの表情やしぐさで、これはもうぜひ映像でご覧いただきたい爆笑絶品高座です! 《芝浜》もおなじみの噺ですが、権太楼が演じると、本当に江戸の町にいて動いて話している威勢のいい江戸っ子がそこにいるようで、気持ちよく噺の世界につれていってくれます。
瀧口さんに伺いましたら、このときの《芝浜》は、初めてそれまでと違う演出を試みた画期的な一席とのこと。また、昼の部で演じた《らくだ》は、つかちゃんのリクエストに師匠が応えてくれたそうで、あまりの高座の素晴らしさに、終わったところでつかちゃんと瀧口さん、手を取り合って喜んだそうです!
この会が行われた前の年には、つかちゃんが聞き手となって『権太楼の大落語論』(彩流社)という本を出していて、「こんなことまで言っちゃう?」くらいオープンに語られているこの本を読むと、長い付き合いで落語をわかってくれてるつかちゃんへの信頼があったから、ここまで心を許して語っているんだろうと思います。
そんなつかちゃんと権太楼がタッグを組んでの落語会だったから、期待に応えての素晴らしい高座になったのかもしれないですね。このお宝がようやく蔵出しになりました。このたびの映像作品化、つかちゃんもさぞ喜んでいることでしょう。いまやあちらのほうが昭和の名人たち、志ん朝や談志などに囲まれていいなあ、なんて思っちゃったりも。
おめでとう500号!なのが、ご存知「東京かわら版」。1974年の創刊から、この6月号でなんと500号を迎えるんですね。寄席で売っているのを買って初めて見たときは、え、落語ってこんなに毎日いろんなところでやってるものなの!? と驚いたものですが、これ、本当に便利で、落語にはまっていく道しるべになってくれました。これほど長く毎月買ってる雑誌はないくらい。この記念特大号では、これまでを振り返ったり、いろいろな人からのコメントなど、読み応えあり、です。表紙文字(背表紙も!)は金色の箔押し(春風亭小朝の頭も金色)でめでたさ倍増。書店で光ってるのを見かけたらぜひお手にとってみてください!
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