第36回:思い出し笑い「千客万来!寄席の仙臺四郎さん」(&ツルコ)
第36回:千客万来! 寄席の仙臺四郎さん
*intoxicate vol.89(2010年12月発行)掲載
落語や色物などの芸を楽しめる寄席は、ほぼ1年中休みなしに毎日開かれていて、若手からベテランまで様々な人たちが入れ替わり立ち代わり登場しています。最初はよくわからないままに聞いていくうち、だんだん好きな芸人さん、気になる芸人さんができてきて、その人を目指して寄席に行くようになっていったりするものですが、柳家権太楼はそういう噺家さんかも。
寄席を大事にしていて、寄席で噺をきくことのできる機会が多い噺家さんです。寄席の番組の中程に登場して短い噺をさらっとやっても、トリでたっぷり聞かせてくれるときも、聞き手を引きつけて、これぞ落語!という世界に連れて行ってくれます。愛嬌あるルックスがまたよくて、高座に登場してにっこり笑うだけでこちらもつられて笑ってしまうような。あの、居酒屋さんとかに置いてある着物姿で座っている男の人の人形(←仙臺四郎というそう。商売繁昌の福の神なんだって)があるでしょ? あんな感じ。モデルになったんじゃないかと思うくらい、そっくり。師匠・柳家小さんの芸を継ぎ、人気実力ともトップクラスで、初心者だろうと落語ファンだろうと、「ああ、落語聞きたい」というときに、安心して身をまかせてしまえるのが権太楼さんですから、もし寄席の前を通りかかって、この人の名前があったら、迷わず身をまかせちゃってください。
そんな権太楼さんとお弟子さんたち一門が年に一度行っている『柳家権太楼一門会』が、CDで登場です。落語会のなかでも一門会というのは、緊張感(弟子にとっては)とアットホームさが入り交じったような、特別な空気感のある落語会。師匠が弟子のことを話したり、その逆だったり、内輪の雰囲気で一門のキャラクターを楽しめる会なんですね。
今年の夏に昼夜で行われた権太楼一門会は、師匠から「夏の噺」という宿題をもらい、2006年に真打ちになった柳家甚語楼は、師匠お得意の「佃祭」、2007年に真打ち昇進した柳家我太楼は「ちりとてちん」をネタ出ししており、それが師匠の噺とともにCDに収録されています。お弟子さんたちの噺を聞いていると、口調などところどころに師匠が感じられて、微笑ましくなります。こんなふうに弟子と師匠の噺を一緒に聞けるのもいいですね。今回は2枚のCDが同時発売ですが、1枚目の最初に、会の幕開けの師匠・権太楼の口上が収録されています。こちらには師匠の「抜け雀」、もう1枚は聴いているうちに情景が浮かび上がってくるような「たちきり」で、権太楼落語も堪能できる内容に。こういう企画って、何年かに1回あると、お弟子さんたちの成長も感じられて、楽しいでしょうね。いい記念にもなるし。一門には昨年、新たなお弟子さんが入りました。その名も「柳家おじさん」。30
歳をすぎての入門で、このようなインパクトある前座名に。一度聞いたら忘れられないからいいかも、ですね。
柳家さん喬とともにリリースされている権太楼単独の『名演集』も、もう
11作目となりました。今回の『柳家権太楼 名演集11』は、年末にふさわしい「文七元結」です。こちらもじっくり味わってみてください。
三遊亭歌之介師の名演集は、「竹の水仙」と脱線また脱線の「幕末龍馬伝」ですよ。
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