第14回:ザ・入門編!!スペシャル
執筆者:&ツルコ
第14回:ザ・入門編!!スペシャル
*intoxicate vol.67(2007年4月発行)掲載
5月下旬から、いよいよTOKIOの国分太一が噺家を演じる映画『しゃべれどもしゃべれども』が公開! この映画をきっかけに落語への興味が広がっていくと楽しいですね。春に公開された、土屋アンナが吉原の花魁を演じた映画『さくらん』は、まさにその落語が熟成した江戸時代のお話。吉原は多くの噺に出てきますので、落語の予備知識として観てもおもしろいかも。
ライヴで落語を観てみたいと思ったら、年中無休の寄席へどうぞ。東京都内に4件、横浜に1件、大阪にもついに昨年、天満天神繁昌亭ができました。寄席では落語だけでなく、漫才や太神楽曲芸、紙切り、曲独楽などの色物と呼ばれる芸人さんたちも登場し、1人(組)の持ち時間は15〜20分程度(トリはたっぷり)。短時間で入れ代わりますから、どのタイミングからでも入場OK。春や秋に行われる真打昇進披露興行、お盆や新年の特別興行などは立見の賑わいですが、普段と違う寄席の表情が楽しめておもしろい。週末、若手噺家が勉強会として行う早朝寄席や深夜寄席もリーズナブルなお楽しみ。
噺家には身分制度があって、『しゃべれども〜』で国分くん演ずる三つ葉は、“二ツ目”という段階。師匠に入門を許されると“見習い”として半年程、適正判断期間があり、認められれば“前座”という最初の身分に。師匠から名前をもらい、晴れて一門の一員になれます。師匠の家での雑用仕事、寄席の楽屋では、着物をたたみ、お茶を出し、高座で座布団を返し、めくりをめくり、出囃子の太鼓や鉦を叩き、と覚えることは噺以外にも山ほど。でも月給はなし。寄席働きの日当(安い)と、師匠たちからのお小遣いなどでしのぎ、休みもほとんどないような4年前後の前座修行を終えると、いよいよ“二ツ目”に。楽屋働きは卒業、着物も紋付、羽織を着られるようになり、噺家としてようやく一人前。個人や仲間との勉強会を行ったりして、落語により集中していく期間です。三つ葉も新作落語のちまきとの会をやってますが、真打目指してレパートリーを増やし、自分の落語を確立していく、試行錯誤の時代。国分くんも悩んでます。仲間はたくさんいますが、あくまでも芸は個人、の厳しさが身にしみる二ツ目時代を10年ほど過ごし、いよいよ最終段階“真打”昇進。寄席でトリを務め、弟子をとれる立場になります。見習いから十数年。長い道のりですが、この後何十年も“大看板”と呼ばれる日を目指し、修行は一生、です。
寄席には前座、二ツ目、真打とみんな出演してますが、お気に入りの噺家を見つけたら、個人の勉強会や落語会などその人目当てに通う楽しみが増えてきます。そこで必携なのが、唯一の落語情報誌『東京かわら版』。月刊で、寄席の出演情報はもちろん、毎日の落語会情報が、“こんなに!”と驚くほど載ってます。これからですと、7月の“大銀座落語祭”が超オススメ! 落語のフジロックやラ・フォル・ジュルネのようなもので、東西の噺家さんが銀座に集結。数か所の会場で様々な落語会が催されます。
残念ながら寄席や落語会にはなかなか行けない、というかたには落語CD。新しい作品がどんどん出てます。ソニーからは円生や志ん朝CDを手掛けたプロデューサーが、現在の大看板から若手真打まで、朝日名人会など落語会での名演をリリースしてますし、ワザオギ・レーベルからは三遊亭円丈など新作落語のベテラン&若手や、落語台本を募集しての新作落語など、ツボを押さえたいい作品が続々登場。ビクターも、CD、DVD、配信を目指した落語会「蓄音器の犬」をスタートさせたので、今後のリリースに注目です。過去の音源も数多い落語ですが、選ぶときにおすすめなのが、『落語CD&DVD名盤案内』矢野誠一/草柳俊一(だいわ文庫)、『古典落語 これが名演だ!』『古典落語CDの名盤』京須偕充(光文社新書)、『今夜も落語で眠りたい』中野翠(文春新書)など落語通によるガイド本。『落語ワンダーランド』(ぴあ)も落語の今がわかる充実ムック。たまにはのんびりと、落語。お楽しみください!