第59回:思い出し笑い「笑門来福!うれしい再発3タイトル」(&ツルコ)
第59回:笑門来福!うれしい再発3タイトル
*intoxicate vol.114(2015年2月発行)掲載
落語CDのうれしい再発お知らせが! 三遊亭圓歌『中沢家の人々・完全版』、林家木久蔵(現・木久扇)『キクラクゴ』、林家木久扇&木久蔵の『キクキクラクゴ』の3タイトルは、発売当時に関わらせてもらったこともあり、思い入れのある作品。
『キクラクゴ』は2004年リリースで、意外なことにキクちゃんこと木久蔵初となるCDでした。収録は、自身の創作落語で代表作ともいえる2席。小学生の頃から好きだったという日本の名作映画の数々を、登場する片岡千恵蔵や嵐寛寿郎の声色で次々に紹介していく《昭和芸能史》も、“ふるえるおじいさんの話”として知られる、林家彦六に入門してからの師匠と弟子のおかしいやりとりを声色をまねて演じる《彦六伝》も、木久蔵にしかできない、まさにキクラクゴ!
2007年には、息子きくおの単独真打昇進のタイミングで木久蔵の名を生前贈与として譲り、自身は「笑点」で公募した中から“木久扇”の名を選んで、親子W襲名というおめでたい披露になったのですが、それを記念して親子の落語を収録した『キクキクラクゴ』を発表。パパ木久扇は、まだまだある師匠・彦六の爆笑エピソード満載の《新・彦六伝》を、古典落語で実力を磨く当代・木久蔵は、父譲りの明るさと素直な伸びやかさで演じた、きくお時代最後の記録となる《幇間腹》を収録。さらに「笑点」でよくキクちゃんが歌っていた「いやん、ばかん」もボーナストラックで聴くことができますよ。バカバカしいおかしさが、昭和な感じでやっぱりステキ。
今年芸能生活70周年という、落語協会最高顧問の三遊亭圓歌は、1月に86歳になりましたが、まだまだ元気で寄席にも出演しています。歌奴時代から数々の新作落語で日本中を笑わせてきましたが、中でも自身の体験を元に創作した《中沢家の人々》は人気作。自分の親、妻の親、亡くなった先妻の親の6人のお年寄りを抱えた暮らしぶりを虚実交えて描く爆笑落語です。2005年リリースの『中沢家の人々・完全版』は、寄席では15 〜20分程度で抜粋して語られる《中沢家の人々》をフルバージョンで聴きたい、さらには残したい、ということで、録音を目的とした“完全版”を自身の独演会で口演してもらったもの。10年前ですから76歳の頃ですが、普段はやらない1時間以上に及ぶ完全バージョンを見事に語りきり、会心の一席となりました。このアルバムは落語CDなのになんとオリコンチャートにも登場しちゃったんですよ!
というわけで、音源もジャケット周りも当時のままで、3タイトル揃って日本コロムビアから再発売。ワン&オンリーな落語として、落語コーナーの棚にずっと残っていてほしい作品です。
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昨年末&年明けと2回に渡り「大改造!!劇的ビフォーアフター」で、立川談志が住んでいた練馬の一戸建てを大改装してました。弟子の志らくが引き継いで住むことになったとかで。家自体はもちろんのこと、談志が山ほど残していた落語関連の本や音源などのお宝もなんとかしなければ、ということでしたが、その貴重音源の数々は、談志の信頼厚かった落語エンジニアの草柳俊一さんちでお預かり、だったんですね。談志が収集していたのは、名人の高座や自身の高座の記録など膨大だったそう。内容を確認していくうちに見つかった、30歳の時の音源が、『談志30歳』としてCDになりました。ここに収録された7席はすべて1966年の音源。まだ落語協会に所属していて、「笑点」がスタートし、著書の『現代落語論』がベストセラーになり、注目度が高まっていた30歳の談志の若々しい高座を聴くことができます!
ベストセラーといえば、師匠・談志とのことを書いた立川談春の『赤めだか』がドラマ化だそうで、談志役は、談志の弟子・立川錦之助でもあったビートたけし、談春役には嵐の二宮和也。こちらも、楽しみですね!