ICJ, APPLICATION OF THE CONVENTION ON THE PREVENTION AND PUNISHMENT OF THE CRIME OF GENOCIDE IN THE GAZA STRIP(SOUTH AFRICA v. ISRAEL) - 仮保全措置命令が出ました。
https://www.icj-cij.org/sites/default/files/case-related/192/192-20240126-ord-01-00-en.pdf
要旨
以下は要旨です。
CHRONOLOGY OF THE PROCEDURE
南アフリカの仮保全措置の要請は次の通り。
イスラエルも訴訟に応じ、上記の要請を却下するように求めました。
PRIMA FACIE JURISDICTION
紛争とは、当事者間の「法律上または事実上の見解の相違、法的見解の対立または利害の対立」である。本件において紛争が存在するか否かを判断するために、裁判所は、締約国の一方が条約の適用を主張し、他方がそれを否定していることを指摘するだけにとどめることはできない(19)。南アフリカは、裁判所の管轄権の根拠としてジェノサイド条約の付託条項を援用しているため、裁判所はまた、手続の現段階において、原告が訴えている行為および不作為が当該条約の範囲に入る可能性があるかを確認しなければならない(20)。
↓
特にイスラエル側の主張は次のようなものです(一部省略)。
裁判所は次のように述べて、一応の管轄権を肯定。
III. STANDING OF SOUTH AFRICA
南アフリカの当事者適格についてはガンビア対ミャンマー事件を引き、次のように述べてあっさり肯定。
IV. THE RIGHTS WHOSE PROTECTION IS SOUGHT AND THE LINK BETWEEN SUCH RIGHTS AND THE MEASURES REQUESTED
パラ54は原文も掲載しておきますね。ジェノサイドがあるというためには、単なる大量殺戮があっただけでは不十分で、それを国民的、人種的、民族的、宗教的集団を「集団として」破壊する意図(特別な意図)が必要。それの蓋然性が必要なのですが、その認定がどこでされたのか、今ひとつ分かりにくい形になっています。
V. RISK OF IRREPARABLE PREJUDICE AND URGENCY
VI. CONCLUSION AND MEASURES TO BE ADOPTED+OPERATIVE CLAUSE
主文だけ紹介。
若干のコメント
今回、裁判所は南アフリカが求めていた停戦命令は出しませんでした。批判する声もありますが、これは、裁判所がジェノサイド条約9条を超えなかったという意味で妥当だと思います。ウクライナ対ロシア事件が何だったんだろうかという話です。
また、本命令では集団の構成員の殺害等を禁止するときの「特別の意図」が何であるのかは明示していません。反対意見もそのような意図の蓋然性がないとしています。リンク先の記事でミラノビッチが指摘していますが、本案では特別な意図はないと認定される可能性が高いかもしれません。
なお、『法学教室』2024年1月号収録の玉田大「ジェノサイド条約――ジェノサイド犯罪の防止と処罰」は、ここまでこの記事を読んでくださった方には必読です。