伝統工芸キット”In the pouch"がオーストラリアとコラボしてポーチ(pouch)を作った話。
今回のnoteについて
こんにちは、伝統工芸DIYキットの”In the pouch"です。
”In the pouch"は、地域の暮らしや文化に触れ、ものづくりの楽しさを体験できるDIYキットを販売するプロジェクトです。
約2週間ほど前に記念すべき初noteを投稿してから
2回目のnoteでいきなりコラボの話?!と、
キット自体の詳しい説明もできていない中、色々すっ飛ばしてますが
クリスマスギフトのお話なので、クリスマス前にnoteに書きます(笑)
結論から言うと、オーストラリアデザインを扱う事業”JAU”のクリスマスギフトセット専用のポーチを伝統工芸キットで使っている伊勢型紙で作りました。
今回はその制作裏話です。
オーストラリアと日本をつなぐJAU
そもそもなぜ、オーストラリアとのつながりが生まれたのかですが、
実は”In the pouch"は、合同会社Long Formeという会社の1プロジェクトとして運営しています。
合同会社Long Formeは、オーストラリアから日本に移住した代表のソニーが、オーストラリアと日本のそれぞれのデザインを紹介し、融合させながら、デザインを通じて両国をつなぎたいという思いから会社を立ち上げました。
ソニーは日本の文化や特に建築(宮大工の木組みの技術)などに感動する一方、日本でオーストラリアのデザインがあまり知られていないことから両者のデザインやプロダクトを紹介するプロジェクト”JAU”を2020年に始めます。
JAUは、Japan、Australiaと一緒になるを意味するUnitedの頭文字をとっており、現在はオーストラリアのデザインを日本に紹介する事業をメインに展開していますが、いずれはオーストラリア人デザイナーと日本の伝統工芸をつないだプロダクトなども作りたいと思い、日本の伝統工芸にフォーカスして始めたのが”In the pouch"です。
オーストラリアのJAUと日本の伝統工芸キット。
一見真逆に見える2つのプロジェクトは、実はふたつでひとつのように根底の思いは共通したプロジェクトなのです。
クリスマスギフトのラッピングどうする?
スタッフからの提案もあり、今年のクリスマスはJAUとして初めてギフトセットを作ることになりました。
ギフトセットの企画会議を進めるなかで出てきたのが
「ギフトラッピングどうする?」
というのも、JAUは環境配慮などの考えからギフトラッピングを本格的に提供したことがなかったのです。
せっかく作るなら捨てられず使ってもらえるものが良い、
誰でもラッピングができる、という観点からコットンポーチに決まります。
そして肝心のデザインですが、スタンプやシルクスクリーンなど色々アイデアが出る中、ふと思いついたのが伊勢型紙を使った制作でした。
伊勢型紙を使った型染めは、型紙を繰り返し使えることができるのでエコかつ、小ロットの生産であれば費用もかからずぴったりでした。
さらにオーストラリアと日本の伝統工芸を掛け合わせたデザインは、両国をデザインで繋ぐJAUらしさが出てぴったりだと思いました。
伊勢形紙共同組合の方も伊勢型紙を知って頂けるのであれば、と快諾くださり、In the pouchがポーチを作るプロジェクトが始まりました。
伊勢型紙を使ったオリジナルポーチ製作過程
型紙のデザイン図案作成
伊勢型紙を使うことを決めてまず取り組んだのが型紙に彫る図案作りです。
今回、オーストラリアのビーチをモチーフにしたデザインにしました。
このデザインがのちのちの作業に影響するとも知らず…
図案をもとに型紙彫り
図案のデザインが決まれば次は型紙を彫る作業です。
ここで型紙の図案デザインの難しさと彫り職人の技術を知ります。
まず、型紙を彫るのは想像以上に難しい。
伊勢型紙は繰り返し使えるよう和紙を何枚も重ね、柿渋を塗って補強しているため厚みがあって通常の紙より硬いのです。
真っ直ぐ彫るのだけでも一苦労。
本場の伊勢型紙の職人は江戸小紋柄にように1センチに幾つもの柄が入った
細かい図案を彫っていると思うと、改めて職人の技術の素晴らしさを身を持って感じました。
さらに図案を彫り進めながら気づいたのが、ロゴJAUの「A」が彫れない!
型紙の図案はすべて型地紙(茶色い台紙)と繋がっていないといけないのです。文字で説明が難しいのですが、「A」の横棒を全て彫ると、三角の部分が再現できないのです。(下記、写真ご参照ください)
実際に伊勢型紙はデザインを考える図案師と、図案師が考えたデザインを型紙用に再構成して彫り作業を行う彫り職人の分業制で作られています。
デザインから型紙づくりに試行錯誤しつつもなんだかんだうまく彫ることができました。しかし小さな図案を彫るだけで、かなりの体力と集中力を消耗します。
伊勢型紙の職人は、図案によっては7時間座りっぱなしで彫ることもあるそうですが、とてつもない集中力です。
いざ、型染め!
いよいよ!染め作業です。
今回は布用のインクを使ってひとつひとつポーチを染めていきますが、ここでも型染めの難しさを痛感。
太陽をモチーフにしたストライプの柄を染める時にインクが滲んでしまい、ストライプが表現できないのです。
どうしようかと悩んでいたところ、伊勢形紙共同組合の方からご連絡を頂きます。
今回、デザイン製作→型紙づくり→染めまでの一連の流れはJAUで作業をしていますが、事前に伊勢形紙共同組合の方に図案を送っていて、図案を見た組合の方から「インクの量を減らしてみてください」と、アドバイスを頂きました。
図案を見てすぐ、ストライプの部分を染めるのに苦戦するだろうと予測できたそう。流石です。
組合の方のアドバイスに従うと綺麗に染めることができました。
製作した感想
製作工程でも書きましたが、作業の随所で職人がいかに高い技術と創造力を使って製作をしているのか、簡単な作業ながら一連の流れを自分たちで体験することで、より身を持って感じることができたと思います。
一方、仕上がりはとても満足で、オーストラリアのビーチと太陽をイメージしたデザインとの日本の伝統工芸が掛け合わさり、唯一無二のポーチが出来上がりました。
ラッピングでとして喜んでもらうだけでなく、できれば日常でも使ってもらい、伊勢型紙を身近に感じてもらえると嬉しいです。
製作秘話を読んでくださりありがとうございました。
このnoteを読んで、自分も伊勢型紙でオリジナルグッズ製作を体験してみたいと思った方は、ぜひIn the pouchのウェブサイトもご覧ください。