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現場も人事も納得する「活躍人材」はどう見極めればよいのか?

自社の採用活動を成功させるためには、ニーズにマッチし長く活躍してもらえる人材を見極める必要がありますが、この見極め方で悩んでいらっしゃる企業様が多くいらっしゃいます。

さらにいえば、人事と現場部門が協働して見極めるわけですが、「役割分担が曖昧になっている」「判断する観点が重複し非効率」など、異なる組織が協働するという点でも課題が多いようです。

そこで、人事採用のスペシャリストとして活躍する梅田 杏奈さんに取材し、人事と現場部門の採用の役割分担や、面接で確認すべき判断ポイントについてお伺いしました。

インタビュイープロフィール

梅田杏奈

新卒で株式会社リクルートキャリア(現:リクルート)に入社し、人材領域の法人営業に従事。2014年より人事・スタッフ領域にて、新卒採用・中途採用・社内広報・人事企画・若手起業家支援などを経験。その後、スタートアップでの人事領域執行役員を経て、現在はエンターテインメント領域で経営企画に従事。


どう見極める?採用基準はどう作る?

ーいきなり本題ですが、判断基準についてお伺いしたいと思います。ジャッジは難しく、悩んでいる企業様も多いと思うのですが、率直にどう見極めればよいのでしょうか?

再現性高く見極めることを目指す前提に立つと、基準を明確に決める必要があるのはおわかりいただけると思いますが、基準を作るところで悩んでる方が多い。

しかし、基準を作ることはステップとしては決して難しいことではありません。

  1. ジャッジメントの要素を言語化する

  2. 要素を項目分解する

  3. 項目を見極める質問項目を作る

このステップで、基準を言語化・共通化していきます。当たり前に聞こえるかもしれませんが、このようにして言語化にこだわることが非常に大切で、やりきれていないケースが多いものです。

例えばですが、全社に共通する部分として

  • グレードに紐づくベーシックなスキル

  • 中長期も見据えた活躍可能性

などが挙げられますが、これらの要素は感覚的に判断すると偏ってしまう可能性があるので、定量的なデータや事実をベースに、人事と現場部門が対話しながら言語化にこだわる必要があります。

そうして初めて、誰が面接をしても同じ基準で見極められるような再現性を担保することができるようになっていきます。

「カルチャーフィット」を例にすると、バリューを基に行動指針を定めている企業では、そういった振る舞いを体現する人を評価し、企業にフィットすると定義されることが多いと思います。

ただ、カルチャーの土台となる「バリュー」は、時にキーメンバーさえもそれぞれ異なる解釈を持っている可能性があるというのが問題で、ちょっとした解釈の異なりであっても面接での判断軸に影響してしまいます。

再現性ある採用基準へ。基準をどう共通言語化するのか?


ー確かに実質的にはズレていて、なかなか共通言語化しきれていないケースが多いように思います。では、共通言語化するにはどうすればいいでしょうか?

例えばバリューからカルチャーを言語化するのであれば、

  • バリューで定義している○○とは、別の言葉で置き換えるとどういうことですか?

  • 何を体現するとOKで、どのようなケースがNGに該当しますか?

など、愚直ですが一つひとつ具体性を持って問いかけて確認していくこと、納得のいく言語になるまでこだわることが重要です。

もちろん、抜群にフィットする人であれば曖昧な要素であっても見極められますが、言語化しておくと特に判断に迷った時に指針になります。

スタートアップの場合は、人事が主導で決めるよりも現場部門と話し合って言語化した方がリアリティのある要件定義ができます。人事と現場部門がお互いに納得できる言葉や基準に落とし込むことをお勧めします。

なお、これはカルチャーに限ったことではありません。

ーやはりウルトラCはないというか、愚直に言語化・すり合わせが必要ですね。

はい、そのとおりです。けどここで終わりではりません。

ここまでで言語化できているのはジャッジメントの要素です。これをさらにこれを具体的な項目に分解します。

例えば採用基準が「多くの関係者がいる中で物事を進められる推進力」という要素の場合、そのままでは抽象度が高すぎます。

複数部門の多様な意見をまとめて調整する力も、軋轢や反対に対し意思表示をして前進していく力も、どちらも推進力。特に一般的に使われる単語が要素だった場合、自社ならではの求めている事・解釈をもう一段具体化していくステップを踏む必要があります。

ここまでをしっかりこなして項目が具体化出来たら、その内容と粒度を揃えて、いよいよ質問を作っていきます。

先程の項目だしを踏まえて、「推進力を発揮したエピソードを教えてください」ではなく、「対立する意見が出た時の壁の乗り越え方は?」「自分で意思決定して推進した経験を教えてください」などと聞くことで、見極めの精度が上がります。

具体的な質問まで考えておくことで、人による評価のばらつきを防ぐことができるというわけです。

基準作りで押さえたい3つのポイント

ー基準づくりの中身について、梅田さんのこれまでの経験から何かアドバイスはありますか?

採用基準において認識しておいたほうがいいと思っていることが、3つあります。

  1. 入社後も見据えた時間軸で考える

  2. 総合点の高さだけで評価しない

  3. 価値観を知る

の3つです。

まず1つ目の「入社後も見据えた時間軸で考える」という点ですが、人材採用は短期的な入社の成果だけでなく、中長期的な責任や価値が伴う活動であるということをまずちゃんと腹落ちして理解したいということです。

もちろん、現時点でのポジションニーズで活躍する人材を採用できるかどうかも大切な視点ですが、一時的な投資ではないことを認識して採用活動を行っているかが本当に重要だと考えています。

例えばスタートアップの場合は、現場部門の成長曲線に沿って成長できる人材なのか、つまり変化対応力を含めた未来予測が大切です。

どのような時間軸で、どこまでを求め、どのような角度で成長してほしいのか。自社の成長戦略に合わせた要件を、言葉で定義しておくべきです。

ー2つ目の「総合点の高さだけで評価しない」についてにはいかがですか?

「カルチャーアド」という言葉がありますが、多様性や異質性を持ちながら組織を強くしたい場合は「総合点の高さ」だけを評価しない方がいいと考えています。

たとえ何かが欠けていたとしても、別の何かが突出していればいいという思考は、これからの組織作りにとても重要だと考えています。

そのために、あらかじめ譲れないラインと、許容できるチャレンジラインを明確にしておくことが理想的です。

これは正直、明確な解のあるテーマではありません。ただ、受け入れ先の現場部門責任者と一緒に判断することができれば、いい採用プロセスが作り出せると考えています。ある意味チャレンジテーマですね。

ー最後に3つ目の「価値観を知る」についてにはいかがでしょうか?

人材のバリューを最大限発揮するために必要な観点だと考えています。

例えば責任感が強く役割としての仕事を全うしたい人と、好奇心が強くのめり込んで仕事をしている人では、成果の出し方やモチベーションが異なります。

個々のバリューを最大限に発揮するためには、その人の強みや価値観、志向などが企業側のニーズや環境とマッチすることが重要です。

中途採用の面接では、どうしても直近の実績や経験・スキルを聞きたくなるもの。でも、自社にフィットする人材を見極めるためには、直近の経歴だけで判断するのではなく、価値観を知りたいんです。

ベーシックな質問は聞きにくいかもしれませんが、長く働いてもらいたい人ほど、その人の根底にある考え方はしっかりと聞いておきたい要素です。

人事と現場部門、ジャッジメントの主体はどちらにあるのか?

ーここまで見極め方について伺ってきましたが、見極めのプロセスの中で、人事と現場の役割分担はどのようにお考えでしょうか?

採用の判断基準は「全社で共通する部分」と「現場部門や職種で異なる部分」に分けられますが、現場部門や職種で異なるテクニカルスキルは現場のほうがジャッジしやすいため現場、一方で全社共通部分は人事の方がジャッジしやすいため人事、と棲み分けるのが一般的です。

そのため、主体=最終意思決定者と定義するならば、ジャッジメント主体は現場部門になるという理屈です。ただ、場合によってはジャッジメントの主体が異なるケースも存在します。

私自身、大手企業とスタートアップという企業規模が大きく異なる両方の職場で人事を経験しましたが、この2つの職場でも、採用ジャッジメントの主体がケースバイケースで変わっていました。

例えば、従業員の入れ替わりが多く企業のカルチャーに変化があり、中長期で活躍する人材の目線を合わせる必要が出ているフェーズではどうでしょうか。その場合は全体を俯瞰して判断する立場の人事が主体となってジャッジしたほうが良いと考えられます。

あるいは、規模が小さい企業は中途入社した人材が現場部門や組織に与えるインパクトが大きく、採用には特有の葛藤があります。特にマネジメントラインにおけるゲームチェンジャーの採用は企業の成長にとって極めて重要である反面でリスクも大きい。

こうした採用では、どちらが主体と決めるのではなく、人事と現場部門が一緒に判断をする、リファレンスチェックを行い客観的な意見も踏まえて見極めるなどを通じ、お互いに覚悟を持って協働で受け入れる姿勢が重要になってきます。

このように、企業の状況によって、ジャッジメントの主体も可変であり、必ず現場、必ず人事というものでもありません。適したやり方を選択するべきと考えています。

さいごに

今回は、 梅田さんに採用基準の作り方、現場と人事の役割分担についてお話いただきました。

特に時間をかけてしっかり採用基準を言語化するといったことは、当たり前ながらも、各社なかなか実施しきれていない部分ではないでしょうか。日常業務に忙殺される中ではありますが、ぜひ立ち戻って見直してみることも、おすすめします。

なお、ノウハウや工数でお困りの場合は弊社でのご支援も可能です。ディスカッションのみでも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。

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