採用という専門スキルを活かして活躍し続けることができるプラットフォームをつくっていく
今回はタレントアクイジションマネージャーやプロリクルーターを支えるInterRaceのVP of Human Resources 森本さやかさんにインタビューしました。どのようなキャリアを築き、今何を大切に企業の採用支援やソロプレナー、プロリクルーターをサポートしているのか。今後目指していきたい世界とは何なのか、詳しく伺いました。
不確かな未来を生き抜く力を身に付けるために、リクルートへ
──リクルートからキャリアをスタートされたそうですが、入社した動機は何だったのでしょうか。
私が就職活動していた頃は、「就職氷河期」で当時は新卒の就職率が55.1%と最低を更新していました。景気も低迷しており大阪で中小企業を経営していた実家の周りでは、倒産する会社も少なくありませんでした。そんな時期に社会人になったので、「これからの人生、学生時代のようにのほほんとしていてはダメだ」という潜在意識を強く持っていたと思います。
そんな背景から、経営資源として一番重要である「ヒト」の採用事業を持ち、自分に生きていく力が身に付く会社として「リクルート」を選択し、入社しました。
最初配属になったのは、関西での求人広告の営業です。入社して1年間は、「ビル倒し」といわれる、ビルの上から下まで順番に会社に飛び込んで名刺獲得や、1日100件以上の企業に電話をしてのアポとりなどを、ひたすら行っていました。その後、関西の大手企業担当として、新卒や中途の採用支援はもちろん、お客様の採用課題を解決するために、社員研修やセミナーなど、採用〜オンボーディングに関わることまで幅広い提案営業を任されるようになったのです。
入社5年目には、リクナビNEXTのIT人材採用を強化するため、新規部署の立ち上げメンバーに抜擢され、東京へ異動。その後、営業企画→商品企画→事業企画などを担当し、スカウトサービスの商品企画マネージャー、そして事業全体の責任者を任せていただきました。
個人の達成から、育児と両立しながらのマネージャー業務は、チームでパフォーマンスを出すことに魅力を感じた
──HRで経験を重ねてきて、入社した当初と、その後では、仕事への向き合い方は大きく変わりましたか?
仕事自体は大変でしたけど、面白い体験も数多くして、仕事観は大きく変わりました。入社した当初は、何年か働いたら、結婚して子供を産んで仕事を辞めるのかなと思っていましたから。営業の仕事を通じて、社会との接点を持ち続けることで、いろんな人に出会え、それが楽しみになってきたのは、自分の中で早々に塗り変わってきたことです。
とはいえ、結婚して出産する前後ぐらいまでは、記憶がほとんどないぐらいの働き方をしていました。子供が4歳の時に、「マネージャーにならないか」という打診があって、その時はまだ自分のまわりに、私と同じような立場の女性マネージャーがいなくて、非常に迷ったのを覚えています。
子どもができると、以前と違って時間的な制約ができるので、これまでのようにがむしゃらにやればなんとかなるという状況ではない分、どういうことができればマネージャーとしての責務が全うできるのか、いろいろな人に相談しました。
すると「こういうマネージャーじゃないといけない」とか「マネージャーとはこういうものだ」というのが、人によって全く違っていたんです。同じ会社でも、これほど認識が違うのなら、「自分なりのやり方で、課せられたミッションをクリアしていけばいいんだ」と考えられるようになり、マネージャーへのチャレンジを決断しました。
それでも、メンバーの頃とは比べものにならないほど、ものすごい量のタスクが降りてきました。それをきっかけにメンバーに助けを求めたり、仕事を任せたりして、メンバーが最大限のパフォーマンスを出せるような環境を整えることに注力し始め、この頃からチームでパフォーマンスを出していく面白さを実感するようになりました。
プロフェッショナルな人たちとワンチームで、採用のリブランディングや従業員のエンゲージメント向上を実現する
──これまでで印象に残っている案件はありますか?
入社3年目の頃に、私の仕事の原点ともいうべきプロジェクトを担当しました。クライアントは大手のアパレルメーカー。それまでの私はリクナビやリクナビNEXTなどのメディアを中心に、研修プログラムなど、その周辺のHR関連商品しか営業していませんでした。
しかしこのプロジェクトでは、採用のリブランディングや従業員のエンゲージメントの向上、働き方の変革など、これまでとは違い、一歩踏み込んだ提案を行いました。当時、アパレル業界は、ほとんどが若い社員で、服が着られなくなったら辞めていき、定着しにくい風土や環境が課題としてありました。そこで「人とともに服も成長していく」といったコンセプトで、「ずっと働き続けてほしい」というメッセージを、アパレル企業として初めて社内外に打ち出したのです。
このプロジェクトでは、私は営業担当として関わり、さまざまな年代の従業員の方々にインタビューをして、冊子を作ったり、従業員の意識改革や、インナーコミュニケーションの強化のために動画を作ったり。また、それを採用のために生かすためのさまざまな施策を立案して、実行していきました。
たとえば、今では大手企業やベンチャー企業では当たり前に行われている「タレントプール(ストックデータベース)」を先駆けて導入しました。アパレル業界では、セール期は繁忙期なので、この期間は若い子たちをアルバイトで採用しますが、セールが終われば、すぐにリリースしてしまいます。そういった子たちは少なからずアパレル業界に興味があるので、正社員採用や、新たなセール時に迅速にアプローチできるように、これまでつながりのあった人材のプロフィール情報などを蓄積するデータベースを構築しました。
このプロジェクトを通じて、まずHRという言葉の定義を広げることができました。新卒・中途採用に限らず、アルバイトや契約社員も採用ターゲットでしたし、従業員のエンゲージメントの向上も離職率の低下に貢献できるため、HR領域で重要なものであることを、この時学びました。
もう1つは、多くのプロフェッショナルな人たちと関わりながら、プロジェクトを進めていく醍醐味を味わえたことです。制作ディレクターやコピーライター、カメラマンなどのクリエイターや、ストックデータベースを構築するためのIT開発会社など、全く異なる専門性を持った人たちとワンチームで仕事をするのは、これが初めての経験でした。クライアントとプロフェッショナルとの橋渡し役を担当しましたが、ここでの経験は今のプロリクルーターやソロプレナーの支援に非常に活きています。
「社会課題」として女性のリーダー育成に取り組んできた
──その他には、女性のリーダー育成やキャリア支援などにも取り組んでいたとお聞きしています。
そうですね。管理職になってからは、女性の次世代リーダーの育成なども関わりました。基本的には個別相談ですが、時々クライアント企業から、「女性のマネジメントについて話してほしい」「リクルートの女性リーダー育成の施策を教えてほしい」といった依頼を受け、パネラーとして登壇したこともあります。
実は、当初は自ら率先してやっていたわけではなく、会社からミッションとして与えられ、しかたなく取り組んでいました。性別の違いはあるものの、私自身「女性だから…」という考え方があまり好きではなく、「そもそもフラットでいいのでは」という考えがベースにあったからです。でも、いろいろと勉強してみると、もともと女性が働きにくく、昇進しづらい社会構造になっていることが分かってきて、これは恣意的な変化を創り出さないと変えられないことも理解できるようになってきました。そこからは「これは社会課題だ」という認識で、前向きに取り組むようになりました。
この経験があったので、InterRaceでも、女性のキャリア相談は定期的に受けています。ホームページで私のプロフィールを見て、私の話を聞きたいという相談も少なくありません。この世代にしてはレアキャラなんだと思います(笑)。
企業には、成果だけでなく汎用性のあるノウハウを提供。パートナーには心理的安全性のある関係づくりを
──InterRaceでは、どういった役割を担っているのですか?
現在は、主にはHRを主管しています。弊社のHRには2つの役割があり、一つは自社の人事・採用。これまではリファラル中心で仲間を増やしてきましたが、お陰様で多くのお客様に恵まれ、これから多くの仲間を採用していきたいと思っていますので、採用と組織作りがとても大切なミッションになっています。
またもう一つは、弊社のパートナーの皆様のご登録やアセスメント、アサインを主管する役割です。現在「プロのコンサルタントやリクルーター」といわれる方に、300名近くご登録いただいており、彼ら彼女らの力を借りながら、ワンチームで仕事をしている。そんな感覚で、仕事を行っています。
その他、キャリアアドバイザーの仕事もしていますし、プロジェクトにおけるフロント責任者を担うこともあります。規模によってはプロジェクトマネージャーを担当することも。
──クライアントやパートナーとは、それぞれに対してどんなことを重視して関わっているのでしょうか?
クライアントに対しては、当たり前ですけど、価値をお返しすることです。クライアントが何を達成したいのか、私たちに期待されていることをしっかりと把握して成果を出していく。100点ではなく、120点ぐらいで返し続けたいと思っています。
その中でプロとしてこだわっているのは、企業に一過性なものではなく、私たちの手が離れても企業内で再現できるように、汎用性のあるノウハウとして成果を提供することです。それが結果、私たちの事業の継続性にもつながってきます。
プロリクルーターとして活躍している人に対しては、私自身ディレクターやアカウントマネージャー、バックオフィスという立場で関わっているので、その方が持っている「Will やCan」をしっかりと把握して、それを活かして、伸ばせる案件にアサインすること。
またソロプレナーとして独立している方は、どうしてもライフと切っても切れないなかで仕事をしていると思うので、「他の仕事がどういう状況にあるのか」「体調はどうなのか」…そういうプライベートも含めて対話できる関係づくりをつくるように努めています。俗に言う心理的安全性が担保されるような環境づくりには、常に気をつけています。
多岐にわたる相談に応えられるチームをつくりたい
──最後にこの先、どのような世界を描いていきたいとお考えですか?
個人としては、企業からの多岐にわたる相談や要望にもっと応えられるようになりたいと思っています。課題先進企業の皆様に多様な課題をいただいてきたお陰で、採用については幅広くお答えができる状況になっていますが、オンボーディングや育成、さらに人員配置などにもつながってくるため、そのあたりも、他のプロフェッショナルと協業しながら、チームとして対応できるようにしていきたいと考えています。
一方、InterRaceとしては、個人が最大限のパフォーマンスを発揮できるように「あたらしい働き方」のプラットフォームを作りたいと取り組んでいます。実際、大手企業にいる若手や中堅層の方々の中には、自分のやりたいことが見出せずに、「次のキャリアをどうすればいいか」迷いながら、くすぶり続けている人が少なくありません。
そこで、私たちは採用領域において「正社員」だけでなく、「副業 や ソロプレナー」として、適材適所(あるいは適材配置)で、かつ継続的に活躍できる環境を整えようとしています。もっというと、個人が自身のライフやキャリアのタイミングによって、正社員や独立した働き方を行き来できるような、一方通行ではない社会を作りたいと思っています。
私は長年求人広告の営業をやってきましたが、このスキルはどこかで役立つのか疑問に思っていた時期がありました。同じようなに若手の子たちの中にも、「私、全然専門性がなくて…」と言う人がたくさんいます。
でも、本人は気づいていないかもしれませんが、みなさんそれぞれ専門性を持っています。ただ、そのままでは社会に貢献したり、成果につなげたりすることはできません。その専門性をしっかりと磨いて自らアップデートし、新たな価値を付与して、その価値で対価をいただけるようになる必要があります。彼ら彼女たちが、これからのキャリアに悩まなくてよいプラットフォームを、ここ10年でInterRaceとして創り上げていきたいと思っています。
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