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コア人材の採用に失敗しやすい企業に共通する5つの問題とは?

グローバル化とテクノロジー進化の非連続な進化により、企業が持続的成長を得る難易度は急激に高まっています。中には中期経営計画を策定したものの、描いたシナリオ通りに進まない企業が増えてきました。
 
その要因のひとつとなっているのが、事業変革に必要なコア人材(タレント)採用の失敗です。コア人材が採用できないばかりに、事業計画が頓挫してしまったり、延期される事態に陥ったりすることも少なくありません。

我々が多くの企業の採用を支援する中で、企業規模や業種は異なるものの、コア人材の採用において、同じような課題に悩んでいる人事・採用責任者や担当者の方々を数多く目の当たりにしてきました。そこで実感した共通する問題点と、その改善方法についてお話ししたいと思います。

問題1:採用市場にフィットしていない要員計画

1つ目の問題は、経営戦略と採用戦略が紐づいていない状態で要員計画が策定されてしまっている状態です。

買い手市場のときは、採用ブランドが一定確立している大手企業などでは現場が求める人材を採用できていました。それが4〜5年前から、そういった企業でも目標とする採用人数が達成できなくなってきました。
 
それが経営にどのような影響があるかというと、例えば、DXシナリオをIRでコミットしている企業では、採用人数が目標に届かないため、計画していたシナリオを延期させるようなことが起こっています。豊富な資金調達を実行したSaaS企業でも、必要な開発能力を有するエンジニアが採用できないばかりに、事業計画が頓挫してしまうことが起きています。
 
その要因の発端は、採用市場の相場観を無視した要員計画が立案されていることです。これまでであれば、その観点で計画を立てなくても目標とする採用人数を確保できていましたが、企業側の求人意欲は衰えないが、その需要に応えらる供給がない社会構造になってきて、この問題が顕在化するようになりました。
 
これまで多くの企業の要員計画は各事業部から出される採用予算を、最終的に役員会議で事業伸長率などを検討した上で決定されていました。その要員計画は採用実現の可能性の有無は精査されずに判断を下されることが多いのが実態でした。しかし、採用競合企業との人材争奪戦が激しくなる現状では、今後は事業計画策定の意思決定の場で、人事責任者が、要員計画の組み立てを採用実現可能性から説明を求められるようになってきます。
 
今まで採用実績のある職種なら「このぐらい予算をかければ採用できます」という見立てがつきますが、事業戦略上、非常に重要なポジションで、かつこれまで実績のないような職種を採用しなければならない場合は、要員計画が根本から崩れてしまうことが起こってきます。
 
もっと言えば、業界や産業の垣根がなくなり、採用環境が刻々と変わってきている中では、これまで採用してきた職種でも、採用できないという事態もあり得るケースも出てくるかもしれません。

問題2:採用プロセスの最適化が進まない組織構造になっている

採用職種や採用規模が大きい企業では、効率的に採用業務を行うために全社の採用業務を採用部門にて横断的に一括管理、運用していました。事業部制やカンパニー制を敷く企業も多く、大手企業などではこの採用体制が主流でした。この体制は買い手市場の場合により機能します。
 
売り手市場となる今後は、職種別に採用ターゲットの志向や価値観はもちろん、候補者から見える企業のポジショニングまで異なるので採用プロセスを各採用ポジション、ターゲット群ごとに個別最適化する必要があります。例えば、フィールドセールスを志望する人にとってはランキング上位の企業でも、DATAアナリストやDXコンサルタントからすれば、ランキング外になることが起こってきたわけです。
 
このように採用ポジション、ターゲットごとに市場特性が違うので、採りたいターゲット候補者がどういう人材で、どこにいてどういう志向性をもつのかを把握して、狙うべき候補者群にアプローチできなければ、採用成功まで至りません。

そのためには、人事部と各配属現場が協働で同じ目標を追いかける体制をつくれるかどうかが非常に肝要になってきます。「自社のコア人材」の採用、その活用戦略、さらに目標達成についてコミットメントを共有することです。

その状態を基盤として、ターゲットごとの採用プロセスを個別に最適化していくことが可能になります。

問題3:採用ターゲットの解像度が粗い状態でのアプローチ設計

狙うべきターゲットはどういう志向性で、自社のどの部分に魅力を感じているのかを、データをもとに分析して、そのファクトから候補者インサイトを掴んでアプローチする必要がある状況にある昨今のマーケット環境。

これまでのように、「大企業で採用ブランドが一定確立しているから大丈夫だろう」ということを前提にしたアプローチ設計では、経営戦略上必要な人材の採用成功を実現できないケースが増えてきています。
 
先ほども触れましたが、採用職種によって、企業のマーケットポジショニングが変わるため、求めるターゲット像の認識を、どのくらい細かな粒度で捉えられるが重要になってきます。

そのためには、採用ポジションごとの採用進捗率の細かな可視化と、その背景にある候補者インサイトをできるだけ1次情報のレベルで捉えることが有用です。

ATS運用の活用が不十分で、採用における各プロセスごとの可視化精度を上がらない結果として、この採用ターゲットの解像度が上がらない。また、エージェントとの連携が不十分で採用成功に結び付かないケースから得られるターゲットインサイトを見逃している状況を併発している場合も多く見受けらるます。

問題4:採用母集団形成の手段が単一的、かつ候補者DBとしての活用ができていない。

下記グラフのように、人材紹介事業者が預かる求人の充足率は近年低減していく傾向にあります。

出典:厚生労働省「職業紹介事業の事業報告の集計結果」

今後この社会状況が大きく改善することは見込めない中では、これまで採用成功できていた母集団獲得手段のみならず、採用ターゲットにリーチできるであろう手段は取り入れられるものは先ず取り入れ、運用しながら自社課題に最適化していくことが求められています。

また、それぞれ各ルートで接触した候補者情報をDB化して、育成(ナーチャリング)する手法を構築して、それぞれのタイミングでアプローチしていくこと基盤づくりも必要になってきています。
 
このやり方は、通常の採用活動に比べて実装の初期段階では相対的には効率が良くない手法です。ですが、事業戦略上必要なコア人材は、今や顕在的な転職活動をしていないケースがあります。そういう人材には潜在段階で接触してお互いの関係性を構築しておける活動が必要になり、実際その活動を活用して難易度の高い採用を成功させている企業も増えています。
 
昨今では、こうした活動を効率よく行えるツールが整ってきています。ワークプロセスを整備すれば、業務が高度化し、複雑化しても持続的に行えるようになります。ホームページやリファラルからの応募が増えている企業では、この候補者人材の情報DB(データベース)をATSの運用をエンハンスしながら採用成功につなげています。

問題5:面接やオンボーディングにおいて候補者体験の向上ができていない

買い手市場の場合は、候補者が企業の設定した選考プロセスに合わせる(ある意味我慢する)ことが求められていましたし、それでも力学上は顕在的な問題にはなり得ませんでした。

また、採用プロセスにおいても母集団形成までは採用部門が担当し、面接においては現場部門に引き継ぎを行うケースがおおく、その引き継ぎ場面で候補者に対しての対応コンセプトが浸透しておらず、採用部門の方々が設計していた対応にならずに、結果、採れるはずの候補者の採用成功を逃がすケースも多く見受けられました。

環境として売り手市場になっていく昨今では、この候補者体験の設計と実装を配属現場の選考者とともに目的と共に擦り合わせて、設計したコンセプトでの進行をマネジメントをして最適化していくことが、採用成功にむけた要件になってきています。

この市場下では、候補者はいくつもの転職先候補からも声がかかっているのが当たり前となっている中で、候補者体験の最適化マネジメントの欠如は採用競争力を削いでしまう結果ともなる可能性があります。

自社が求めている人材は、自社の今後の事業戦略を担っていく貴重な資本です。選考も含めた採用プロセスからオンボーディングまでを一貫して最適化しなければ、採用にもつながりませんし、たとえ採用ができても入社後のギャップにより早期に退職してしまう可能性もあります。

採用部門と配属現場責任者、HRBPが一体となってタレントアクイジションの目的、コンセプトを共有しながら、プロセスを可視化し磨き続けるいくことは、地道な活動ですが事業の将来にとってとても大きな資産になることは、先行している採用成功し続ける企業が立証をしています。

TA体制を成功させるための5つの重要要素とは

これまでコア人材の採用を失敗しやすい5つの問題点とその対策について伝えてきました。最後に、これまで説明したことと重なる部分はありますが、先行企業が実証している「TA体制を成功させるための5つの要素」を挙げておきます。

1、 中長期事業戦略と採用戦略/計画が密に結合している

2、採用戦略や目標達成について、人事部門と各配属部門がコミットメントを共有し、協働している

3、求人票の最適化が頻度高く行われている

4、ポジション毎の候補者DBが構築され運用が最適化されている

5、各部門のHRBP/リクルーターが主体となり、各施策※を最適化している
※エージェントマネジメント、ダイレクトリクルーティング、リファラル

上記の構造を体現している企業はTA機能のトップが経営ボードの1人であることも共通項としてあるように見受けられます。経営イシューとして、TA体制をつくることのゴールを設定してコミットしています。

外部環境変化のスピードが非連続に早くなっている中で、事業成長、変革に必要な人材はマネジメント人材のみならず業務エキスパート、エンジニアリングなど各領域に必要となりその獲得が事業成長の成否を分けるといっても過言ではない社会になりました。

採用の在り方は、経営、配属現場、採用部門が一体となった上で改革、改善していくことが必要となったのだと痛感しています。

さいごに

 InterRace株式会社では、採用の課題抽出から採用戦略・戦術設計、運用・稼働までトータルでのご支援を行っております。

採用戦略策定、体制構築までの一気通貫でのご支援、採用機能のモジュールごとのご支援、プロのリクルーターを派遣するご支援、あるいは正社員形態でのプロ人事をご紹介するようなご支援など、お客様の課題に沿ったご提案をフレキシブルに行い、お客様の採用成功に日々伴走しております。
 
ディスカッションや情報交換だけでも歓迎しておりますので、気になることがあれば、お気軽にご相談いただければ幸いです。


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