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文字に想いを込めるのが書体か〜『本を読む人のための書体入門』〜【3月なんでも新書チャレンジ2】

今日は、『本を読む人のための書体入門』です。

『本を読む人のための書体入門』

さて、「書体」と聞くと、何を思い浮かべるでしょうか? 私は、「明朝? ゴシック?」などいわゆるフォントのイメージが脳内に浮かんできました。書体とはつまり、今でいうところのフォントの話なのですが、それだけにとどまらない深さがあります。私自身本好きなので好きなフォントや苦手なフォントが確かにあり、新潮社のあのフォントじゃ読みにくくてイヤだ、とか、講談社のフォントはすんなり読めていい、など好き勝手言っておりましたが、それがなんというフォントなのかなんてまったく知りませんでした。ただ、明朝っぽい、とかゴシック、かな? という程度の認識だけです。

ところが本書の著者はデザイン系の仕事が本職ではないというのにフォントについて突き詰めて「文字の食卓」というWebサイトを開設されて日々研究されているというのですから、脱帽です。

この本を開くと、夏目漱石『吾輩は猫である』の冒頭部分が1ページ分現れます。なんだかよく本で見かける書体とは違う気がしますが、そこまで違和感はありません。まためくると同じ『吾輩は猫である』だけど、今度は明らかに書体が違います。最初は明朝体、次はゴシック体なのです。さらにめくると次は行書体。書道でつなげて文字を書いたような書体ですね。ちょっといい和菓子などをもらったら、説明のしおりにでも使われていそうな書体です。最後は中高生の女子が書きそうな丸文字が……これはファンシー書体というそうです。漱石の世界が急にキャピキャピに見えてくるから不思議です。

このように本書では、書体について私たちが無意識に感じていることを冒頭から見事に顕在化してくれます。ドラゴンボールでマンガに使われ始めた「淡古印」という書体がだんだんと「ホラー書体」としての地位を確立していくくだりもとても興味深いものでした。

本を読む、という行為、そしてそこから人間が理解していく過程に興味のある私としては、本書でいうところの書体が果たす役割について大変得心がいきました。

そもそも文字とは何か? それについて著者は、「文字とは、記憶を読む装置である」といいます。

 もちろん実際の読んでいるのは言葉の意味であり、初めて目にする文章だとしても、その書体がつかわれた過去の本や言葉のイメージ、さらには、その本を読んでいたころの自分まで一緒に読んでいるような気持ちになる。
 その感覚は、書体を「見分けている」というよりも、「思い出している」という方がやはり近いように思います。

第一章 文字の名前は知らなくても

私は瞬読という読書法のトレーナーもやっています。だいたいの人が本を速く読めるようになりたい、と思っている訳ですが、始めた理由は「多くの本を読むことでたくさんの知識を得て役に立てたいから」という方がほどんどです。でも本を読んで理解するためにはそもそも自分の中に何かがないと有機的に成立しないのではないか、と最近思うのです。知識を力技で暗記することではなく、本を読んで得られるのは思考力。さらにいうなら類推による飛躍、ではないか、と。ならば、文字を表した書体から来るイメージも含めて「本」というメディアの影響を考えないと、読書自体を語れないのではないだろうか。そんな風に思った本でした。

今までは言葉が持つ周辺情報(たぶん、スキーマと専門家が呼ぶものに近いのだと思う)には気を配っていましたが、書体も大いに関係あるってことかぁ。

書体って楽しいですね!
もっといろいろなフォントについても知りたいと思いました。

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