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「門前払い」

 先日の大学の学内会議での通訳にて。
「その申請は文科省に門前払いにされて受理されず、、、」

え〜?門前払い??そこで使う???
と思ったのも一瞬、会議はどんどん進みます。

 私がその一瞬でひねり出したのは、

"rejected at once"

でした。

 そもそも「門前払い」とは、

1 来訪者に面会せずに、帰らせること。「門前払いを食う」
2 江戸時代の追放刑の中で最も軽いもので、奉行所の門前から追い出すこと。
(大辞泉より)

という意味だそうです。2の意味が転じて今では1の意味で使用される、ということでしょうか。

 研究社の新英和大辞典では、
"turn away (a visitor) at the door, refuse to see (a person)"
などと表現されており、日本語の意味のほぼ直訳という感じです。

 私が直面した状況は、「申請書が文科省に受け付けてもらう前に却下された」と考えられるので、ならばrejectというチョイスは悪くなかったと言えるかもしれません。refuseを使うとこの場面ではちょっとキツすぎるかな。瞬間的にきっとそう考えて私もrejectを使ったのでしょう。もう当人も覚えておりませんが。

 このように通訳の場面では字義通りの意味だけでなく、その場面でのニュアンスや意味合いを把握して話す必要があります。特に同時通訳では迷っていたら話が先に進んでしまいます。重要でないと判断したら、次善の策ですがその部分はカットし、次の重要な部分を落とさないように伝えなくてはなりません。

 全体を俯瞰しての状況判断、そして今の自分にできうる限りの適訳を探す過程で、左脳を使った逐次処理をしていたら到底間に合いません。「門前払い」と聞いた瞬間に場面をイメージ化、そしてそのイメージに合う単語を自分のボキャブラリーストックから引っ張り出した訳です。そのストックもイメージで収納してあるので、処理時間は一瞬です。

 さらに「え〜?」と思ったことで瞬間的に脳がフリーズしてるので、そのフリーズによる遅れも取り戻すべく状況判断をします。先日の場合は、スピーカーの教授が早口でなかったし、非常にロジカルにお話しされる方だったため、問題なく進むことができました。

 ね?イメージ処理って重要でしょう?

 「私は同時通訳になんてならないもん!」と思った方、そうでもありませんよ?右脳のイメージ化能力をフルに活用して脳内で言語に関わる処理が高速化すれば英語の学習ならイチコロで上達しますし、それがただのおまけか!というぐらい思考が高速化します。

 なんでもかんでも高速化すればよいという訳ではもちろんありませんが、有り余る情報があふれ出している今の世の中、正しい情報をつかみ、判断を下すのが速くて悪いことはありません。

 そんな私の同時通訳者として20年以上の経験に基づいた要素が詰まっているプログラムを明日ご案内する予定にしています。英語の習得に苦労なさっている方には是非読んでいただきたいです。

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