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『英語のハノン』

 英語を教えるようになってから、世の中には素晴らしい英語学習者向けの本があることに今さらながら感心している。私が英語を学習者として学んでいたウン十年前に比べると、その目的やシチュエーション別に色々な切り口で学習本が用意されているように思える。

その中でもとりわけ目を引くのが「やりなおし」系だ。
 「やりなおし」系とはつまり、中学校英文法やりなおし、とか、スピーキングやりなおし、などのように大人が英語を学び直す需要に応えようとしているものになる。中高大学生向けの参考書、TOEICや英検など資格試験対策と並んで書店の売り場を占めている。

ではその中で一体どの本を選んだらよいのだろうか?

もちろん学習者のレベルによってオススメ本は異なるが、英文法をかろうじて覚えているような、でもそれが何かと問われると分からないような、というぐらいの初級学習者の方で話せるようになりたい方には、『英語のハノン初級』をお勧めしたい。出版日が2021年4月とまだ出て間もない本になる。

この本の素晴らしいところは、音声とセットで繰り返し練習するようにできているところだ。その繰り返しも音声はギリギリその文章を繰り返すことができるぐらいのポーズしかなく、学習者は反射的に口頭で発話しなくてはならない。そして段階を踏んで否定形を作ったり、従属節(ifやwhenなどが使われた本文に追加的に使われている文章)の位置を前や後にしたりする練習も含まれている。これだけの文章を反射的に口に出すことができれば、実際に会話するシーンでも口をついて出てくる言葉が多くなるのではないだろうか。

「ハノン」とはピアノの練習曲を集めた教本のこと。この本では英文法を楽譜に、英会話を演奏に例えて、楽譜が演奏に不可欠であるように英文法は英会話のためにこそある、とある。この点はまさに私も大いに共感する点だ。私も英文法は見知らぬ土地を歩く時に必須の地図のようなものだ、と考えており、英文法を理解すれば英語四技能、つまりリーディング、リスニング、ライティング、スピーキングのすべてに効果があると信じている。つまり、英文法を習得したら鬼に金棒だ、ということだ。

そして私自身が通訳者になるための修行の過程で英語を口に出して繰り返したり、シャドーイングしたりしてきたため、この教材の有効性がよく分かる。私自身、この本を最初から最後まで繰り返して弱点のブラッシュアップをはかりたいと思う程だ。実際、自分もこの「ハノン」を繰り返してみたいと思っている。英語上級者でも得るものは必ずあると思う。

さらにこの本に収録されている英文が自然なもので、いわゆる受験英語にあったようなわざとらしさが少ない。その点でもとても好感が持てる。表紙もさすがは筑摩書房、シンプルでおそらく楽譜をモチーフにしたのだろうか、すっきりとした装丁になっている。多色刷りで目を引く表紙もよいけど、この質実剛健な感じも私は好みだ。

この本は英語を今からやりなおしたい、英語を話せるようになりたい、ガチでそう思っている方には強くお勧めしたい。私自身も使いたいし、英語を教える時にも是非活用したいと思っている。

近いうちにまた体験セミナーの募集の告知をする予定なので、本を買って独りで学習するのが不安な方はまたその時に声をかけて欲しい。何かしら役に立つことはお伝えできると思う。


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