言葉には世界を動かす力がある〜『世界を動かした名演説』〜【9月実用書チャレンジ11】
昨日の予告通り、今日は『世界を動かした名演説』です。パックンことパトリック・ハーランと池上彰の共著です。新書とはいえ、全281ページでかなりボリュームのある本です。
すべてパックンと池上さんの対話で演説が解説されています。パックンの英語ネイティブの語感、そして池上さんの国際政治に長年関わってきたジャーナリストとしての知識と感覚で演説当時の状況がよく分かる内容になっています。戦後現代史のおさらいとしてもよい本だと思います。
最初のチャーチルの演説を音読してみて思いました。
ノンネイティブが読んでも読みやすいし、リズムがそろっている。これはきっと聴く人からすれば心に直接響くものだったろうと推察できます。ギリシャ文化からの伝統を受け継ぐ英語などヨーロッパ諸語では、修辞学つまりレトリックが重要視されます。最初の語の韻を踏むアリタレーションで音の爆発を生み、首句反復という特定の単語をくり返し使って言葉の強勢を強めるなどいろいろと技法はあるようです。私もまったく詳しくありませんが、音読してみるとその効果は分かります。
この演説は第二次世界大戦においてドイツの電撃作戦で後手に回り続けていた連合国軍が反転するきっかけとなった、という点で世界を動かした、といえるのですね。
修辞学やレトリック、というと日本人としては非常につかみにくいところがあります。私もよく理解できていないのですが、本書によると、「説得力のある演説には3つの要素がある」といいます。それが、その人自身の信頼性であるエトス、論理的なアピールと磨かれた言葉の力を表すロゴス、聴いている人の感情がパトスだそうです。チャーチルはロゴス、そして本書では二番目に出てくるゼレンスキー大統領はエトスとパトスの人とあります。
他にも有名なキング牧師やケネディ米大統領、南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領など、歴史的大事件となったような演説から、中国、インド、そして最近の人としてはドイツのメルケル前首相、NZのアーダーン元首相などの話も載っています。「名演説とは時代や歴史、社会問題や政治運動を色濃く記録したサムネール(縮図)だ!」と本書の帯にあります。歴史を演説から切り取ってみる、この視点、とても面白いと思いました。
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