解像度の高いレンズに磨き上げる 〜『名著の予知能力』〜【11月読書本チャレンジ14】
昨日に引き続き、同じ「100分de名著」のディレクター・秋満吉彦氏の本を取り上げます。
昨日紹介した『「名著」の読み方』からちょうど1年ほど経って出版されているようだったので、書店で見かけたときは「あ〜、同じような内容を新書に焼き直したのかな?」と思ったんですね。といっても、また名著が紹介されているなら読みたいな、と思って、しばらく積読だった本です。
ところが内容はかなり違う!?
いや、タイトル違うんだから違ってて当たり前なんですけどね。
「100分de名著」の番組を作るときにどんなことが起こっていたのか、というドキュメンタリーっぽくも読めるし、前の本のように名著を読みたくなるような紹介文でもありました。
アルベール・カミュの『ペスト』がコロナ禍でよく売れた、ということは知っている人も多いかもしれません。私も実はそのときに買ったけど、途中までしか読んでいません。
「100分de名著」では緊急事態宣言が出される前のタイミングで、カミュの『ペスト』を取り上げたシリーズを再放送したのです。最初の放送当時はそのときの状況に即した普遍的な解釈で問題を扱ったのだが、いざコロナ禍というパンデミックを経験してみると、秋満氏自身が「あまりにも新型コロナ禍に置かれた私たちの状況と重なって見えて驚いた」のだそうです。
「概念とは解像度の高いレンズ」とは、第一章で語られている話です。これは哲学の定義を「概念を創造すること」と述べた哲学者ジル・ドゥルーズの言葉から、脳裏にはりついて離れなかった概念だそうです。
番組で練り上げた概念は時代を見つめるレンズになる。コロナ禍より前に作った番組で磨き上げたレンズは、同じパンデミックという状況に見事にマッチしたということでしょうか。今ここで起きていることを見通す力がつく、それもまた名著の力。そういうことではないかと思います。
なんて素敵なお仕事なんでしょう!
秋満氏は「ゴールデンタイムの人気番組に比べれば視聴率は十分の一以下」とご自分で最初に書かれています。でも名著のもつ力を世に知らしめてもらうことが池に落ちるひと粒の水滴でしかないとしても、その本を読む人から広がる動きは池全体に広がる波紋のようにじわじわと力を発揮するのではないでしょうか。
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