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スリル・ミー

ずっと気になっていたスリル・ミーを、このタイミングで運よく観ることができました。チケット手配から感想までうだうだ書いていますので、お読みいただけるとありがたき幸せ。

はじめに

Story(上記公式サイトより)
監獄の仮釈放審議委員会。収監者“私”の五回目の仮釈審議が進行中である。34年前、“私”と“彼”が犯した犯罪。物語は、34年前に静かに遡っていく—。
19歳の“私”と“彼”。ある契約書を交わした2人。彼らに一体何が起きたのか。
“私”と“彼” 衝撃の真実が明かされていく—。

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舞台上には"私"と”彼”、それとピアノが1台だけ。その構成が、観客の心をより作品に集中させるべく、不要と思われるものは極力そぎ落とされているようでした。
今回は3パターンの"私"と"彼"がいて、ペアそれぞれのカタチを堪能できるのが、この作品の特長の1つ。"私"には冒頭の告白で観客を作品の世界に一気に引き込むだけの力技が求められるし、"彼"には「彼とともに生きていくため…」と"私"(と観客)に思わせるだけの魅力が必要で、2人の持ち味が上手く化学反応を起こすと、より深く濃い世界が広がっていくのだなと感じました。
それと、ピアノたった1台でも、音域の広さを最大限に活かし、高音部で緊張感を・低音部で不穏な空気を醸し出しているようでした。

2021年4月23日(金)18時【松岡×山崎】@東京芸術劇場 シアターウエスト

実は、スケジュールが発表された時、東京で観るか大阪で観るか物凄く迷っていたのですが、諸事情により大阪で観るのは厳しいかも…ということで、カメレオンズ・リップ@シアタークリエの日程に合わせ、23日18時の回のチケットを取りにかかりました。結構ギリギリまで迷っていたせいで、補助席しか残っていない状態でしたが、取れた席がL1扉付近だったのはとてもツイていました。
しかも、東京と大阪に緊急事態措置が取られることになり、翌24日が東京楽・大阪公演は中止となったので、本当に滑り込みセーフ…ギリギリで生きるのにも程があるぞ、私。

事前にCD(松下×小西)を入手していたため、一応ストーリーはわかっていたものの、実際舞台を観ると、今回観た新キャストの松岡"私"と山崎"彼"のカタチはCD版とは当然違ってて、これがあの2人のカタチなんだな…と。

今回観て、松岡"私"に対し一番強く感じたのは、なんて健気な”私”なのだろう…というもので、対する山崎”彼“は(ラスト以外)終始低体温そうで(熱がない訳ではない)、そんなふうに見えたのは、役作りだけでなく、松岡さんと山崎さんのビジュアル(含む身長差)も大きな要因だったかったかと思います。例え方がアレで申し訳ないですが、ロングコートチワワが「遊ぼ、遊ぼ」と一生懸命なのに、気が向いた時だけ構ってあとは知らん顔しているドーベルマンのようで…それ故、ラストはチワワが反撃をくらわせて茫然とするドーベルマン、みたいな感じでした(←だから言い方…)。

健気で可愛らしい感じの松岡"私"に対し、山崎"彼"はクールな佇まいも相まって「みんな君に夢中」と言わしめるだけの説得力が抜群だなぁと思いました。あと、松岡さん、キャストの中で最年少なのに、54歳の枯れた感じもすごくよかった!この二人の"私"と"彼"が、月日を重ねていくうちに、今後どんなふうになっていくのか、すごく興味深いです。

2021年5月30日(日)17時【田代×新納】(オンライン配信上演)

伝説の初演メンバー回、ありがたいことに配信で観ることができました。先日観た松岡×山崎ペアとはまた違う、"私"と"彼"の関係性を味わうことができました。それぞれの細かい表情がいっぱい観れたのは、配信ならでは!

冒頭の、54歳の"私"の告白は低く重く、それ故「彼とともに生きていくため…」という言葉がどれだけ重い思いだったかを観客に感じさせるのですが、田代”私”の涙の美しさも相まって、その重さに追い打ちをかけていたようでした。

田代"私"はとにかく愛らしくて、冒頭の告白のあと過去へと遡っての19歳では、目にハートが入っているような、さながら少女マンガの恋する乙女のようでした。一方、新納"彼"は、体内に溜まった熱の発散方法がわからず、終始燻っている感じが、如何にも(主人公が憧れる)悪くてカッコいい男子そのもの。その燻っている炎に、田代"私"は惹かれ、自分だけのものにしたかったのかな? "彼"からの「お前がいなきゃだめなんだ」とか、そんなこと言われたら"私"が協力しない訳ないじゃない、ずるいーと思って観てたのですが。ラスト、"私"と"彼"の形勢が逆転した時、絶望した"彼"とは対照的に、嬉しそうな"私"の姿は、恋が成就したヒロインでした。田代"私"の嬉しそうな姿はとても愛らしく、それ故怖かったです。
しかし、初演から10年経ってもなお、あの一瞬の煌めきを放つ2人凄いな…

終わりに

今回2組観ることが出来ましたが、それぞれの2人のカタチがあって、結末が同じでも違った味わいがあるんだなぁと思いました。成河×福士ペアは、都合により配信すら観ることができなかったので、次回公演時にはリベンジできるといいな…。

余談ですが、CDを聴いた限り、松下"私"って小西"彼"と対等っぽいんですよね。意外とゴリゴリ押してる感じで。
上記の通り、松岡×山崎ペアも田代×新納ペアも、力関係が”私”<<<"彼"な感じだったので、成河×福士だけでなく、歴代ペアがどんな感じだったのかも、すごく気になります。柿松ペア、いつか復活していただけると、本当に嬉しいなぁ…

はっ、これって、スリル・ミーの沼に落ちているのか…


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