不確実性の時代にアート思考をどう活かすか #2
さて、前回に引き続き、
不確実性の時代にアート思考をどう活かすか
のセミナーの続きを。
前回だけを見ると、
「アート思考の何がいいの?(笑)」
という印象しか持たないと思います。
ずばり、アートがデザインとロジックより強力な部分は、
情動力だといいます。
ここで、Amazonの事例を。
Amazonは、今でこそ日用品から家電や自転車なんてものまで、
幅広く商品を取り揃えていますが立ち上げ時は本しか取り扱っていませんでした。
ただ、普通の本ではなく、超マニアックな本。
ありきたりな書店には出回っていないもののみを扱っていたそうです。
そこから人気が出て、色々な本を扱うようになり、
本だけでなく、様々なものオンラインで売るメガストアに進化しています。
さて、この事例を考えてみた時に、
アート思考が役に立ったと予想できます。
アート思考とは、主観的情動を重視して物事を決めていくこと。
デザイン思考&ロジカル思考は、客観的要素(感覚か思考かの違いはあれど)を重視して物事を決めていくこと。
普通に考えて、オンラインストアを開設しようと考えた時に、
超ニッチな書籍だけを販売しようとはしません。
まず、ロジカルに考えていくと、マーケットが大きいもの、
おそらく、日用品を扱うようなものの販売をしよう、という発想になるのが自然です。
ただ、オンラインストアの大きなハードルがありました。
それは、クレジットカードでの売買しかできないという点。
購入者は、クレジット番号を登録する必要があったのです。
オンラインストアが世の中に全然出回っていない時代に、
「自分のクレジット番号を入力するなんて、なんだか怖い」
と思われることでしょう。
しかも、例えば日用品であるティッシュを買うために、
わざわざクレジット番号を登録して買う人など、ほとんどいないに違いない。
そこを、
“超マニアックな書籍”
という、狭いけれどクレジットカード番号を入れてまでも
欲しがる人が数人いるコンテンツにすることで、
最初の高いハードルを突破したのです。
つまり、客観的要素から考えるロジカル&デザイン思考でなく、
主観的情動から考えるアート思考でしか辿り着けない戦略だったのです。
さて、ここからさらに踏み込んで考えてみましょう。
アートの教育を受けた者として、私見交えて書いていきます。
では、アート思考が常に効果を発揮するかというと、
決してそうではありません。
Amazonは、幸運にも成功を収めましたが、
それは約束されたものではなかったはずです。
前回の投稿でも近しいことを述べていますが、
アート思考は、一種のウイルスです。
骨を強化する方法として、
時には折ってみることが効く、
というような発想に近い気がします。
つまり、
企業の中にアート思考ばかり持った人がいると、
その企業は、間違いなく破綻します。(笑)
人間の身体を1つの企業と考えた時に、
ウイルスばかりが入ってくると死んでしまいます。
でも、少々のウイルスは、むしろ身体を病から防いでくれたり、
治すよう身体が反応したりします。
ずばり、アート思考の使い方として、
アート思考の立ち位置をなんとなく掴んでおくことが重要なのだと思います。
(過信していると、ドツボにはまりそう。)
というのが、アートを学んでいたものの実感としての意見です。