映画のなかのインテリア #01 キャロル
映画はいろんな人生を生きる人たちのインテリアを見せてくれます。また、映画のなかでのインテリアは時にその後のストーリー展開を暗示させたり、言及されていない真実を知る手がかりになったり、登場人物の性格を知るヒントになることも。
このシリーズでは、インテリアが印象的な映画を取り上げ、その空間から感じることを書き連ねていきます。第1回は12月にぴったりの映画「キャロル」です。
ストーリー
舞台は1952年クリスマス目前のニューヨーク。マンハッタンの高級百貨店のおもちゃ売り場でアルバイトとして働く若きテレーズ・ベリベット(ルーニー・マーラ)。フォトグラファーに憧れてカメラを持ち歩き、恋人のリチャード(ジェイク・レイシー)から結婚を迫られてはいるが、それでも充実感を得られず何となく毎日を過ごしていた。
そんなある日、4歳の娘リンディへのプレゼントを探しにおもちゃ売り場に訪れたキャロル・エアード(ケイト・ブランシェット)の美しさに目を奪われるテレーズ。キャロルもその視線に気づいた。瞬間的に惹かれ合ったふたりは、キャロルの忘れ物をきっかけに言葉を交わすようになるが――。
惹かれ合うふたりの共通点のないインテリア
主演のふたりのファッションや、監督のトッド・ヘインズが参考にしたという写真家のソール・ライターの面影を感じる街の喧騒が美しく滲む映像を観ているだけでも飽きない映画ですが、インテリアも目を引きます。面白いのはキャロルとテレーズがそれぞれ暮らす部屋の雰囲気の異なり方。互いに惹かれ合うふたりのインテリアに共通しているところがほとんどありません。
そもそもキャロルは裕福な家庭の奥様で、テレーズはフォトグラファーを志す若い女の子という年齢や経済状況の差異があります。キャロルの家のインテリアはクラシカルな花柄の淡い色合いの壁紙に焦げ茶色の優美な木製家具を合わせたエレガントさとステータスを感じさせるもの。テレーズの部屋は照明が全体的にやや暗めで(おそらく部屋で写真を現像するため)、細かなものが多いことから一見雑多な印象を受けますが、棚に飾られた小物など彼女自身が愛着を持って置いていると感じるアイテムがところどころ目に入ってきます。
一方、キャロルの家には彼女自身が大切に思っていると感じるものはあまりない印象を受けます。愛娘リンディの存在以外には……。
映画の後半、テレーズが部屋の壁の模様替えをするシーンがあります。インテリアの様子が変わることで、そこに暮らす人の明らかな心境の変化を感じさせる印象的なシーンです。
映画「キャロル」公式サイト http://carol-movie.com/
*2019年12月現在、NETFLIXでも配信中