エピソード1-8 酒精に導かれ
誘われたのはワイン会。彼女の仲間達が一堂に会して開催されるのだ。
ウイスキー派の私には余りにも疎い世界であるが、そこにお酒が有るならば断る理由はあるまい。
しかし今夜私にはやるべき事があった。前回(エピソード1-7参照)記した通り、遂にAmwayに登録する日が来たのである。
ワイン会がスタートする19時より30分程早い東新宿。駅前の広場で彼女と集合し、入会の手解きを受けることに。
律儀に過去の記事も読んでくれている読者なら察しているであろうが、会場はかつて訪れた例のタワマンである。(エピソード1-2を参照)
集合するなり手際の良い彼女は登録画面のURLをLINEで送信。住所等の情報を入力する。
注意すべきは、ここで紹介者の会員番号を入力する必要がある点だ。勿論この欄を入力しなくても登録は可能であるが、彼女のビジネスに賛同している手前ここをスルーすることは不可能であった。
次に2種類の内からコースを選択。概要は以下の通り。
簡単に言うならガチ勢コースorエンジョイコース。
お遊びである私はエンジョイコースを選択するのが妥当である……しかし折角奇妙なコミュニティに接触したというのにどうして「副業なんて考えず、ただ純粋に1人でAmwayを楽しみたいの」って考えなくっちゃあいけないんだ?違うんじゃあないか…?
選ばれたのはガチ勢コースでした。当然だ。ここで彼女に“覚悟” を見せつける必要がある。そしてこう言う。「1年以内に新規を見つけて年会費より多く稼げばいいんでしょ?」
彼女は「へぇ、賢いじゃん(意訳)」と返し、両者は更なる発展を誓い合う桃園の様な空気感が演出された。
ま、1年以内に退会&バックレは当然なのだが。
さて、登録が完了し正式に会員に。折角なのでと彼女は私にカタログを渡す。サプリのお得な毎月便の営業を軽くかけた後はいよいよお楽しみのワイン会である。
高層階の部屋には既に人が集まっており、先日お会いした家主夫妻もお揃いである。Amwayについて解説して下さった先輩も居るではないか。(エピソード1-3参照)
キッチンでは取り巻きであろう若い3人が料理を作っていた。聞くとグループのメンバーで交代で幹事やセッティング等を割り振っているらしい。下っ端ならではの楽しげなやり甲斐搾取に敬礼。
家主と先輩に挨拶をし、程よく飲み会のスタート。テーブルに並んだワインは約10種類。人数は15人程。コロナ禍1年目の夏とは思えへんわな(笑)
ワイン協会だかソムリエ協会だかのお偉いさんを招いてワインの見識を深めつつ楽しもう、というのが目的らしい。
流石は副業界隈。なまじ金と人脈があるとこうした催しが可能なのである。金魚の糞として楽しませて貰おうではないか。
聡い読者なら察しの上であろうが、このメンバーの殆どはAmwayユーザーである。故にこのワイン会には隠されたもう1つの目的がある。
名付けて「あの飲み会の人達みんな副業で収入得てるんだよね、君もやってみる?作戦」である。
エピソード1-2の時と同じ。全くの素人をコミュニティに招き、こちら側に引き込むのである。映画ミッドサマーかよ!
実際、初めてタワマンを訪れて少し居心地悪そうな人も数人いた。Amwayユーザーは彼らの心を酒と巧みなトークで解きほぐすのが腕の見せ所。
興味深いのは、この飲み会の間は誰も一切Amwayについて言及しないのである。共通認識なのか暗黙のルールなのか。お酒のこと、趣味のこと、故郷や仕事のこと等取り留めのない談笑が展開される。
考えてみれば、全くの素人に飲みの席で唐突に副業について話しても逆効果である。
何とも技巧な頭脳戦。夜神月もベガ立ちで「やるじゃん」と言いそうだ。知らんけど。
穿った見方をしているが、飲み会自体は素晴らしいものだ。流石は人脈。ワインに詳しい方が基礎知識や洋食の蘊蓄をレクチャーし、何気に楽しく勉強になる。用意されているボトルもなかなかのラインナップらしい。
ま、疎いジャンルの酒は取り敢えず甘い物からハマるので私が気に入ったのは1番甘い白ワインであったが。とはいえウイスキー派ではなかなか飲む機会のないお酒を数種類も飲めるのは結構な良い経験。悪くない。
楽しいひと時はやがて仕舞いに。参加者で食器とゴミをまとめてお開きに。
名残惜しいが参加者の方々に挨拶をして彼女と共にタワマンを後にした。
さて、彼女は月に何度かこうした催しに参加しているらしい。また、Amway仲間同士で研鑽する為にセミナーにも行っているとのこと。
確実に信頼を重ねているお陰で彼女は私に新たなカードを何枚も提示する。恋愛もこうして簡単ならいいのにね☆
この遊びはまだまだ終わらない。
次回はセミナーへの参加、自己啓発が促され、向上心が飛躍する……かもしれない………