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ラーメンチェーン店「AFURI」が吉川醸造を商標権侵害で提訴
ラーメンチェーン店のAFURI(株)は、吉川醸造(株)に商標権侵害訴訟を提起しました。吉川醸造が日本酒に「AFURI」という表示をしているからです。
AFURI(株)のプレスリリースの赤枠で囲った部分のように、吉川醸造は「AFURI」を日本酒に使用しています。
AFURI(株)は、吉川醸造が「AFURI」の著名性にフリーライドしているため、吉川醸造の商品をすべて廃棄するように主張しているそうです。
SNS上では、ラーメン店がなぜ業界の異なる日本酒の表示に文句をつけるのか、批判が高まっています。
しかし、AFURI(株)は日本酒分野への進出を計画しており、酒類について、以下の数多くの登録商標や出願中の商標を有しています。
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吉川醸造は、「雨降」という商標を「日本酒」に登録しています。しかしこれは「雨降」のみで、「AFURI」「あふり」が付されていない商標です。
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「清酒、日本酒」など
この登録商標に対してはAFURI(株)から、自身の有する「AFURI」商標に類似するとして、無効審判が請求されましたが、これは裁判所で無効ではないという判断が下されています。「雨降」と「AFURI」は類似しないという理由です(前回ブログ参照)。したがって、吉川醸造は「雨降」商標について使用を継続できます。
しかし、「AFURI」「あふり」の言葉を付した以下の2つの商標は、まだ登録されていません。それどころか、AFURI(株)の上記5つの商標に類似するとして、特許庁から拒絶理由が来ています。
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吉川醸造のこれらの商標登録出願は、先願主義でAFURI(株)のこれらの出願に負けてしまったということです。
結局、吉川醸造は、「AFURI」「あふり」という表示を日本酒に使用する権利を現在ところ、有していません。
吉川醸造の言い分は、「雨降(あふり)」は、丹沢大山の「あめふり(あふり)山」と大山阿夫利神社にちなんで命名された、ということです。
しかし、たとえ地名に由来する名前であっても、「AFURI」という他人の登録商標がある以上は、使用することはできません。
吉川醸造が日本酒に「AFURI」を今後も使用したいのであれば、同社が意見書のなかで主張しているように、酒類の業界では、商標のみを比較して類似と判断されるのではなく、メーカーと共に消費者は出所を認識する、と主張し続けることです。しかしこの主張が認められるのはほぼ不可能です。
それが認められなければ、「雨降」という態様で日本酒に使用することです。「雨降」と「AFURI」は非類似であるという判断が折角、裁判所でされているからです(前回のブログ参照)。
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。