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TDKの元社員が営業秘密持ち出し

TDKの元社員が営業秘密を持ち出し、不正競争防止法違反であるとして、書類送検されました。
この元社員は、TDKに研究職として勤務していたとき、同社サーバからMEMS(微小電気機械システム)の製造開発に関するデータなどを、社内PCから自分のメールアドレスに送信とのことです。

営業秘密は不正競争防止法で保護されています。
この法律の2条1項4~10号には営業秘密の不正取得等について規定されており、その一態様として、以下が規定されています。

①    窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(2条1項4号)
② ①のように不正取得した営業秘密を使用、開示する行為
(2条1項5号)

この事件の場合、従業員が会社のサーバにアクセスして営業秘密を自分のメールに送信しているので、①の窃取に該当します。従業員であったときのサーバアクセスなので、不正アクセスではなかったかも知れませんが、自分のメールに送信していること自体が、「不正の手段により取得した行為」に該当します。「私的利用の目的で」自分のメールにデータを送信することは禁止されているはずです。

あるいは、百歩譲って、業務のために自分のメールに送信することは認められていたとして、データを送信したメールを退職後も保持していたことは「不正手段による取得」に該当します。

「不正の手段」とは、「窃盗罪や詐欺罪等の刑罰法規に該当するような行為だけでなく、社会通念上、これと同等の違法性を有すると判断される公序良俗に反する手段を用いる場合もこれに含まれる」とのことです(「逐条解説 不正競争防止法」経済産業省知的財産政策室 編)。

特に、この従業員は在職中から転職活動をしていたとのことで、転職のために営業秘密を不正取得した可能性が高いといえます。
元従業員の営業秘密の事件は多く、転職の際の「みやげ」のように使われることもあります。在職中に営業秘密を他社に示すこともあります。社員の帰属意識が薄くなった今日、以前よりもこの類の犯罪が多くなった印象を受けます。

参考サイト

弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。