【中国語講座】上
前回は学生さんからの質問をネタにメルマガを書かせていただきましたが、実は同じ学生さんがもう1つ質問をしてくれていました。中国語ネイティブで日本語がほとんど分からない先生の担当箇所の質問なのですが、中国語や英語で質問するほどの勇気はなかったようで、伊藤に質問してきたようです(笑)。今日はその「もう1つの質問」をご紹介します。
実はこれも結果補語に関するものでした。
“上 shàng”という字が結果補語としてよく使われるのをご存知でしょうか?例えば:
在本子上写上自己的名字。
Zài běnzi shang xiěshang zìjĭ de míngzi.
外は寒いから、早くコートを着なさい。
外边冷,快穿上大衣。
Wàibian lěng, kuài chuānshang dàyī.
外は寒いから、早くコートを着なさい。
请帮我拉上窗帘。
Qĭng bāng wŏ lāshang chuānlián.
カーテンを閉めてください。
学生さんによると、テキストの説明ではよく分からなかったそうです。テキストには「動作を行った結果、何かと何かが合わさった感じ、あるいは、ある物の上に何かが存在・追加されるような感じ」というような説明がありました。テキストは中国で出版されたもので、解説も中国語と英語で書いてあります。余計分かりにくかったようです。
でも確かにちょっと分かりにくいですね。
僕は、この“上”という字は、くっつくというニュアンスがあると思っています。結果補語として使われている場合に限らず出て来る意味合いです。例えば:
黑板上写着字呢。
Hēibăn shang xiězhe zì ne.
黒板に字が書いてある。
墙上挂着火腿。
Qiáng shang guàzhe huŏtuĭ.
壁にハムが掛けられている。
いずれも「黒板の上方」「壁の上方」ではありません。黒板の表面に字がくっついている状態、壁の表面にハムがくっついている状態を言いたい時に“上”という字を使いますね。
上哪儿? - 上重庆!
Shàng năr ? - Shàng Chóngqìng !
どこに行くの? - 重慶に行く!(老舍《谁先到了重庆》より)
この“上”は動詞です。辞書を見ると「行く」と書いてありますね。“上学(登校する、学校に行く)”や“上班(出勤する、会社に行く)”も同じ用法と思われます。この意味の場合、最終的にはその目的地に「くっつ」きますよね?やっぱり「くっつく」というニュアンスが“上”という字にはあるような気がするんですよね~。
そして結果補語として使われると、動作を行った結果何かと何かがくっついている感じになる、と考えれば大体うまく説明がつくと思っています。上記の結果補語の例で考えてみましょう。
在本子上写上自己的名字。
ノートに自分の名前を書いた結果、ノートに自分の名前(字)がノート表面にくっついている感じ。つまり、単に書くのでなく、書いた字がきちんとノートに書かれた状態になっている。かすれたり薄すぎて見えにくかったりしないようきちんと書く、という感じ。
外边冷,快穿上大衣。
コートを着た結果、コートがきちんと体にくっついている感じになる。つまり、ふわっと羽織るのではなくきちんと着る。ボタンやジッパーをきちんと閉めて寒くないようにきちんと着る、という感じ。
请帮我拉上窗帘。
カーテンを引っぱった結果、カーテンの端と端がきちんとくっつく。つまりカーテンを閉めたつもりでも少し開いた状態になったりせず、きちんと閉められた状態にする、という感じ。
よく分からない“上”が出てきたら、「くっつく」というニュアンスかも?と思って見てみると、納得がいくことがあるかもしれませんので、今度色々な“上”で試してみてください。