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閉鎖した病院のウェブサイト復活が著作権侵害

閉鎖した病院のウェブサイトを復元し、そこに掲載されていた病院内の画像を無断で掲載し、健康食品やサプリなどの広告を掲載した会社役員の男性が、書類送検されました。
この男性は、病院のドメイン名をオークションサイトで購入し、サイトを復元しました。病院のサイトであれば、検索で上位に表示される、という動機です。

この事件では何が問題でしょうか?
病院内の画像を掲載したことです。これは写真事務所が撮影したものであり、撮影者の著作権を侵害します。

では具体的に著作権のどの権利の侵害でしょうか?
まず、写真を複製しているので、複製権。
つぎに、ウェブサイトは公開されるので、公衆送信権。
さらに、撮影者の氏名を掲載していなければ、氏名表示権です。

閉鎖された病院のウェブサイトに撮影者の氏名が記載されていたかどうかは報道からは不明です。しかし、もともと病院のウェブサイトに撮影者の氏名が記載されていなくても、それは病院と写真事務所との間で著作者人格権(氏名表示権はこのなかの一つ)を行使しないとの契約が締結されていたはずですから、問題ないです。

一方、ウェブサイトを再現したこの男性は写真事務所との間でそのような契約を締結しているはずもないので、氏名表示権の侵害です。
また人が写っていた場合には、その人の肖像権の侵害にもなります。
さらに、編集著作権も関係する可能性があります。

ウェブサイトにも著作権があり、画像や連絡先、説明文などの配置には編集著作権があります。もっともウェブサイトは同じような文言配列になることが多く、時計修理業同士のウェブサイトの配置が似ていても、著作権侵害とは認められなかった判例もあります。この事件では、他社との比較でアピールポイントを記載すること、末尾に送信フォームを設けることは一般的に行われる手法であり、創作性なしと判断されました(東京地裁平26.7.30、東京地裁)。

しかし、この事件では病院のウェブサイトの配置を模倣したのではなく、これを復元したのですから、まさに編集著作権の侵害とも判断される可能性があります。

このニュースは大きく取り上げられています。ドメイン名をオークションサイトで購入したことから始まるかなり手の込んだ行為です。健康食品をあたかも病院が推奨しているかのように思わせるのは、著作権だけではなく、病院の商標にもただ乗りしていると言えます。

参考サイト

弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。