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【中国語講座】「知らんけど」続編

前々回のブログで「知らんけど」というのを書きました。その中で、有名な中国語の先生L老師のX(旧Twitter)でのつぶやきの中で使われていた“不知道~~”という言い回しについて書きました。ちょっと思い出すために、そのL老師のつぶやきをここにも書いておきますね。

不知道大家考得怎么样?
Bù zhīdào dàjiā kăode zěnmeyàng ?
皆さん試験の出来はどうでしたかね~?

僕はこの現象について、自分の中で問いかける自問のようなニュアンスなのかもと書きました。

この件について、読者の方から質問が届きました。今日はこの質問について書かせていただきたいと思います。

ご質問は、この“不知道~”とか“不知~”のような言い方は、自問というより相手に直接問いかける時にも使われている、それはどういうことなのか?というものでした。

例として、ドラマのセリフを書いてくださっていました。宴会に出席する人が入り口で次のように質問されます。

不知贵客可否带了帖子来?
Bù zhī guìkè kěfŏu dàile tiězi lái ?
(字幕:招待状をお持ちですか?)

これは確かに自問ではなく、宴会の会場に入ろうとする人に直接問いかけている場面ですね。

心の中で「あの人招待状持っているのかな?」という場面ではなく、相手に直接問いかけています。さて、これをどう説明しようか考えようとしていたら、この質問者の方は、ご自分でほぼ完ぺきな答えを用意しておられたので、伊藤がアアダコウダ言う必要はありませんでした(笑)。

つまり、このような言い方は、高貴な方々の丁寧な言い方で、直接ものを尋ねるぶしつけさを回避しているのではなかろうか、とのことでした。

まさにその通りだと思います。日本語で言うと、「招待状をお持ちかどうか私には分かりかねますが、、、」のように、質問したいことを自分の問題のようにして、つまり自問して、聞いている相手が「ああ、招待状を持っているかどうか私に言ってほしいんだな」と思うように仕向ける、忖度させる、そんな言い方なのではないかと思います。

中国は日本ほど相手の言葉の裏を読むようなことはしませんよね。忖度とかしなくてもいい文化だと思います。しかし、ざっくばらんに言いたいことを言い、尋ねたいことを尋ねるのは、相手によってはちょっと勇気が要ります。特に目上の人、尊敬すべき人の場合は、難しいですね。

多分、文化大革命で色々な基準が逆転する以前の社会では、高貴な人々はこういう言い方を多く使っていたのかと思います。質問者の方によると、相手に質問する時に“不知~”“不知道~”と切り出す言い方は、時代劇において頻繁である、とおっしゃっていました。さもありなん。

今回のご質問のおかげで僕もいろいろ理解を深めることができました。皆さんも何か質問がありましたら、遠慮なくおっしゃってくださいね。

通訳・翻訳家 伊藤 祥雄
大阪外国語大学外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院文学研究科 博士前期課程修了。通訳・翻訳業に加え、明治大学、東洋大学等の中国語講師を務める。NHK国際放送の中国語ネットニュース番組元キャスター。
著書に『すぐに役立つ中国語の基本単語集』(ナツメ社)をはじめ、『中国語検定対策2級問題集』(白水社)などの中検対策書多数。NHKテレビ「中国語!ナビ」のテキストで「中国語お悩み相談室」好評連載中。