「すしざんまい」の商標事件
「すしざんまい」((株)喜代村)という有名寿司店の名称に類似する「Sushi Zanmai」を、ダイショージャパンのマレーシアでの使用したことに関するニュースが報道されました。
これはどういう事件でしょう?
まず、本家本元の「すしざんまい つきじ喜代村」の商標は登録されています。
これをもとに、マレーシアでのダイショーの「Sushi Zanmai」の使用を差し止めた、という事件ではありません。この点で誤解が広がっています。
この事件は、ダイショーグループのひとつである「スーパースシ」が、マレーシアで「Sushi Zanmai」という名称のレストランを展開し、日本の取引者、需要者向けに、ダイショーがウエブページで
「手頃な価格で幅広い客層が楽しめる回転寿司。厳選した食材と豊富なメニューで、人気を集めています。」という記載とともに、
という記載や表示をしたことが問題になっています。
日本の商標権は日本国内にしか及ばないので、マレーシアでの商標使用を差し止めることはできません。
日本向けウエブサイトで「寿司三昧 Sushi Zanmai」と表示したことは、商標の使用に該当するとして、問題になりました。
商標法には、商標を広告として使用することは使用に該当する、と規定されています。
「役務に関する広告・・・を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法2条3項8号)
注)「役務」は本件では、「飲食物の提供」(つまりレストラン業)。「標章」は「商標」。「電磁的方法により提供する行為」はインターネット上にアップロードすること。
ダイショーがマレーシアでのレストランの宣伝として、「Sushi Zanmai」とウエブサイトに表示することは、まさに広告的使用に該当する、と喜代村は主張しました。
一審の東京地裁ではこの主張が認められ、ダイショーのウエブページでの「Sushi Zanmai」表示の使用禁止と、約600万円の損害賠償が命じられました。
しかし、二審の知財高裁では、その判断が覆ったのです(つまり、ウエブページに「Sushi Zanmai」の表示とともに、「手頃な価格で~」と説明することは、商標の使用ではない、と判断されたのだと予想します(判決文が公開されていないので、予想するしかありません)。
つまり、喜代村が逆転敗訴したことになります。
これだけ商標が似ていて、ウエブサイトで使用もしているにもかかわらず、なぜ一審の判決は覆り、喜代村は敗訴したのでしょうか?
判決文は未だ公開されていないので予想するしかありませんが、このウエブサイトでの「Sushi Zanmai」の表示の使用が「商標として使用されているのではない」と判断されたと思われます。しかし、単に「Sushi Zanmai」を言葉として使ったに過ぎず、商標として使用したのではない、と判断されたのでしょう。
この事件では、マレーシアでこの名前でレストランを開いていたことがミソです。だからこそ、日本の商標権を及ぼせず、それでいて日本の消費者、取引者向けにウエブサイトで説明文とともに「Sushi Zanmai」を使用しているので、日本で使用しているが、商標としては使用していないような微妙な使い方となっています。法律の隙間をかいくぐって勝訴したようなケースです。