【応酬の果てに】CL23-24 ノックアウトステージ16 1st leg.インテルvsアトレティコ レビュー
こんにちは!TORAです🐯
今回はCLノックアウトステージ16第1戦インテルvsアトレティコ・デ・マドリー(以下アトレティコと記載)のレビューです。
プレビューも書いてますので是非!
●スターティング
●前半-出てくる裏を狙う
大方の予想通り「インテルがボールを握る(攻撃回数が多い)」が全体像の前半。
アトレティコは前線にWB兼IHのジョレンテを起用。こちらも各所で予想はされていましたが、非保持は彼が中盤に降りることで5−4陣形を敷きました。
基本的に元々の中盤3枚は対面の選手が担当。前からプレス時にはアンカーのコケもしっかり前に出てチャルハノールを捕まえます。
ジョレンテは5-4の4を構成するとしましたが、インテルの前進度によって高さを調整するディテール成分アリ。前からプレスでバストーニに圧をかけることも。
対岸のプレスはサウールがパヴァールを捕まえます。
中盤は連動して横スライド。サウールは右のジョレンテと異なり、プレスをかける際は距離が長くなってしまうので頑張ってましたね。
しかし、インテルはそれを利用。
サウールと連動するように降りるダルミアンを起点にオーガナイズドに前進を試みます。サウールが前に出る矢印を逆手に取る格好。
ミクロの観点でやり方は様々でしたが、マクロな観点では再現性ある前進でした。24:40〜が最も綺麗な坂手取りだったかな。
立ち上がりはこれをマグネットに設定。からのサイドチェンジで、左のギアをグッと上げるアタックに最も期待値があったでしょうか。
その左サイドはバストーニが大外、ディマルコがハーフレーンを主な勤務地としました。
ここで引っかかったのはアトレティコの守り方。
押し込みフェーズになった際、大外バストーニを離しがちでした。空間を空けて監視し、ボールホルダーになったら距離を潰すアプローチ。そもそも5-4ブロックはフレキシブルに攻め上がるインテル両CB対策でしょうから、少し矛盾を感じるところ。
ただ、上記図解のように今季インテルの得意技「バレッラの逆サイドお引っ越し」は今日も元気だったので、ここを意識して補足するための目的だったかな。
本ポイントが何かの決定打になった訳ではありませんが、28:45〜のようにバストーニにボールが入って、モリーナが詰めてくるその裏をディマルコにランニングされるシーンは敵ながら「これでいいいのか?」と思ったり。
サウールのプレス同様に、「出てくる裏を狙う」インテルの狙いの輪郭を深くするファクトだと感じました。
だからこそ、パスが繋がらずチャンス未遂に終わったり、チャンスに繋がっても活かせなかったり。もう少し噛み合えば…!というシーンが散見された前半には焦がされましたね。
ただ、これは90分通しての感想なんですが、アトレティコのブロック、特に最終ラインには守備の美学があり、スコアが動かなかったのはホームチームの至らなさだけでは決してなかった。
最後の最後まで集中して、落ち着いて、可能性を少しでも削ぐために粘りはCLノックアウトステージのソレでした。
●前半-持たざる中での意図
翻って、アトレティコのボール保持とインテルの非保持を確認しましょう。相対的にボールを持たざる中でも彼らには意図を感じさせる手段が光りました。
立ち上がりのインテルはハイプレスモード。
右IHバレッラが左CBエルモソにプレッシャーをかける手段。前からガツガツ行きたい時はこの設計が王道、前任のコンテ体制から続く形です。
アトレティコはグリーズマンが臨機応変に動いてレシーバーとなることが肝。プレビューでも記載しましたが、サウールは彼の動きと補完性が良く、降りるグリーズマンの奥でFW化していました。縦のレーンの使い方が抜群に上手い。
また、アトレティコが見事だなと思ったのは、バレッラが出てくることを確認するとエルモソを広げてプレスの距離を長くしようと謀った点。
インテルもアウェイチームの対策を確認するとハイプレスの頻度を落としたので(元から時間帯の設定があっただろうけど)、クリティカルにはなりませんでしたが、こういった戦術応酬を流れの中でシームレスに行える点もまた、CLノックアウトステージでした。
また複数回見られた工夫はGKリスタート時の配置。
ⅰ)左WBリーノを高め配置。その分、対岸のモリーナを落とし4バック化
ⅱ)CFグリーズマンと左IHサウールはここでも縦の入れ替え
ⅲ)ジョレンテとサウールをターゲットにし、セカンドボールを拾って、大外のリーノに展開する
リーノはドリブルで押し下げることができる点が超GOOD。
縦に抜けるドリブル、カットインで剥がせるドリブルの択を突きつけながら、正対で相手をプッシュして押し下げるキャリーが真骨頂ですね。
プレビューにも書こうか迷ったんですが(一人だけ長くなるからボツに)、事実、『ドリブル突破』自体は意外と少ないんですよね。代わりにゴール方向へのプログレッシブなキャリーがリーグ屈指で、上記の後押しとなるスタッツだと見ています。
90分通して枠内シュート0だったとはいえ、リーノの押し下げるドリブルは脅威。後半の疲労状態に、ドゥンフリースのフィジカルぶつけたことでフラストレーションを与えられましたが、その前段階の対応は2nd leg.に向けてもう少しクリアにしたいですね。宿題だ。
●後半-トラブルに後出しジャンケン
両チームともHTにアクシデントによる選手交代。
インテルはテュラム、アトレティコはヒメネスが負傷交代。代わりにアルナウトヴィッチとサヴィッチが入ります。続けて書くとややこしい。
冒頭はインテルが連打。
何度かあったチャンスの中で、47:45〜のプレス回避は圧巻。パヴァール、なによそれ。
アルナウトヴィッチはやや入り込み過ぎてミートしませんでしたね。こう見るとテュラムの”我慢できる”スキルがよく分かります。
アトレティコの転機となったのはモラタの投入。54分という早い時間帯、というか、そもそも何故ベンチ入りしていた?というインテリスタの困惑の中、ピッチでは風向きが変わりました。
テュラムという陣地回復、陣地侵略マシーンがいなくなったことで、カウンターの理不尽さが低下したインテル。
シメオネ監督は敵地でリードを持ち帰るという理想を叶えるにはココ!と踏んだのでしょう。5−4ブロック構成こそ変わりませんが、明らかに出力が上がり、縦への意識が強化。
追ってのエルモソ→レイニウドの交代はカード管理の意味合いもあるでしょうが、前がかりになった背後をケアできる早送りマンを投入することで、リスクマネジメントをするとともに、「今行け!」のメッセージを届けたかったと見ています。
この使い方のレイニウド、本当にずるい。あとこの交代でジョレンテはCF→IH→WBの部署異動、ユーティリティ性の小宇宙。
このトラブルに対する後出しジャンケンはアトレティコの総合力とシメオネ監督の権謀術数を痛感しました。
●後半-物語
風向きが変わったことを受け、69分にシモーネ監督も動きます。両WBを同時交代。3分後にはムヒタリアンを下げて、終盤爆撃兵器フラッテージを投入。
先ずピッチに影響を及ぼしたのはドゥンフリース。
前項でフライングしましたが、そのフィジカルをリーノにぶつけることで明確な優位を生みました。早々にチャンスを作り、リーノをピン留めできたことで、アトレティコはギアダウン。
互いに流れを手繰り寄せるやり合いの先にあったのは、なんとアトレティコのミス。
カルロス・アウグストのロングスローのこぼれ球をデ・ポールとレイニウドが譲り合ってしまい、フラッテージがカット兼パス。レイニウドの背後を取ったラウタロのシュートはオブラクに止められますが、リバウンドを決定機を再三決め切ず、悲壮な表情を隠しきれなかったアルナウトヴィッチが押し込む。
感動的な物語に涙を浮かべるティフォージをカメラは抜きました。
その後はアトレティコが当然、同点を先ず目指すべく攻勢を強めますが、ストレスが目に見えるイレブンにリスクを感じたのかフェードアウト。最後は「1点ビハインドでメトロポリターノに帰れるなら良し」と感情が透けて見えるような閉幕でした。
高品質な戦術応酬。痺れる流れの往来応酬。その果てにあったのがよりによってミスであるというのがサッカーですよね。
とはいえ、結果論でも何でも得点シーンは交代選手が多く絡んだ点を鑑みると、手繰り寄せたのはインテルだった、と帰結すべきかもしれません。
◇試合結果:インテル1-0アトレティコ
(79分アルナウトヴィッチ)
●雑感+印象深い選手
インテルとしては白星がもちろん最大の収穫。がしかし、試合後にシモーネ監督が発していた通り、もう1、2点決まっていても何ら不思議ではなかった点が悔やまれます。
対するアトレティコはドローでもプラン通りだったでしょう。結果、プランは叶わなかったわけですが、それでも許容範囲内であることは間違い無いでしょう。
ということで、両チームとも後悔と許容が入り混じる結果に。文字通り「前半が終わっただけ」ですね。この続きが3週間後というのは何ともにくいぜ笑。
2nd leg.は想定通り、アトレティコが攻勢に出るでしょうが、おそらく1stほど色濃いものにはならないでしょう。
ただし、インテルはテュラムが1st以上に欲しい。
記事執筆時点の第一報では思ったよりも具合がよろしくなさそうで、少し暗雲立ち込めていますが、どうなるでしょうか。
・印象深い選手-アトレティコ
CBヴィツェル
私的にアトレティコ側のベスト。何回インターセプトされました?パスの中継点でカット、ではなく、受け手のレシーブ部分を狙ったインターセプトを指します。”潰し”が圧巻でしたね。
WBリーノ
記事で取り上げたのはここはスタッツ紹介だけ。この試合のプログレッシブなキャリーの距離は約140mでチームトップでした。距離ではなく、回数は両チームNo.1。
・印象深い選手-インテル
IHバレッラ
上記リーノと異なり、記事で全く取り上げませんでしたが、パフォーマンス面でのMOM。全局面で貢献度が高く、スタッツにも現れています。細かい数字は省きますが、両チームで最もクロスを味方に届け、最もプログレッシブなパスを出し、最もシュート機会創造に絡みました。via:FBref
IHムヒタリアン
前半は周囲と「はい!ココ行くよ!」のタイミングや強さを合わせられなかったが、後半にアジャストできた点は流石のベテラン力だった。どこかでジャンピングインターセプトをかました場面があったと思うが、非保持も◎。
CFアルナウトヴィッチ
物語。
最後までご覧いただきましてありがとうございました🐯