「鉄砲で民衆から政権を守る」~危機が続く習近平体制、”民衆暴動”に備え国有企業に「人民武装部」を設置
◆経済成長鈍化、不動産バブル崩壊で市民・労働者デモや暴動が続く中国
コロナ感染拡大時から、習近平指導体制下の中国では市民の抗議活動が相次いできたが、ことし1月以降も主要都市で何かにつけてデモが頻発している。雇用、賃金や待遇問題が原因となった大規模な労働者デモは、1~5月間に140件発生しており、2016年以来最多の発生数となっている。
中国における不動産最大手・恒大集団が大量の負債をかかえて経営破綻状態に陥ったことで、未完成のマンション購入者や小規模投資家の抗議デモも各地で頻発。同様に農地から開発で追い出された農民たちも、開発事業中断で生活の糧を奪われて中途半端な状態に置かれたことにより、地方政府などへの抗議行動や暴動も起きており、中国は主要都市のみならず全土にわたって民衆の不満が爆発寸前の状況になりつつある。
◆人民解放軍の拠点を国有企業内に設置する「人民武装部」創設へ
中国共産党政府は、体制危機に陥りかねない現状の対策として、国有企業内に「人民武装部」というセクションを創設し、ここに企業の規模に応じた人民解放軍部隊を配置・駐屯させる制度を発足させることにした。この人民武装部は、軍駐屯経費を企業側が負担するものだが、配置された軍部隊は民衆暴動などに当該企業が巻き込まれた場合、事態の収拾に直接責任を負うものとされている。
これについて、中国外交筋はこう述べている。
「恒大集団にとどまらず、今後中国では不動産の業績不振による大規模なトラブルや、それに伴う大型の民衆抗議活動の発生が予想される。これが暴動まで波及すれば、地域の国有企業が『打ちこわし』や『略奪』などによって甚大な被害を被りかねない。これを『軍による備え』で抑止し、あわせて事態が発生した際も軍の実力行動で乗り切る構えだ。これは、中国共産党中央軍事委員会の指示によるもので、不穏な事態が全土的に広がる状況に対応した措置だ」
かつて、文化大革命(1966~76年)の大混乱期、毛沢東語録を掲げて暴れまわり、「造反有理」(造反には道理がある)とのスローガン下、公的施設の破壊をこととした紅衛兵たちの乱暴ぶりに備えて、公的企業や機関に人民解放軍部隊を常時配置したことがあった。今回の措置は、50年ぶりのものといえるが、もはや現在の中国の経済不振を原因とした混乱で予測される事態に対応するには、軍の力に頼らざるを得なくなったということである。
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