盛り上がらぬ「2025 大阪・関西万博」~”コロナ後”の沈滞の中で浮かび上がる「延期」論、背景に自民党の思惑も
◆「不要」68.6%の世論調査結果、2025年開催予定の大阪・関西万博
2025年4月13日~10月13日に大阪湾の人口島=夢洲で開催予定の大阪・関西万博に、厳しい逆風が吹いている。共同通信社が11月5日に公表した世論調査では、7割近くの人が開催について「不要」と答えたのだ。
「共同通信社の世論調査で、会場建設費が上振れする大阪・関西万博開催について『不要だ』は68.6%、『必要だ』は28.3%だった」
(参考)「大阪・関西万博の開催『不要』68%」2023/11/5 共同通信(KYODO)
https://nordot.app/1093774167277486273
こうした世論の逆風に、開催を後押しする経済界、政界の面々は大焦りの様子である。しかし、開催反対論の背景には、パビリオン建設整備費の倍近い上昇などもあり、「そこまでして今開催する意義があるのか」という声をなかなか打消しにくい状況だ。
「万博への『ノー』を最もかき立てるのが、上振れが続く建設整備費だ。資材価格や人件費の高騰により、当初の1250億円から、倍近い2350億円に膨れ上がった。物価上昇や現場の人手不足は続いており、今後さらに膨張する可能性さえある」
「中でも、約350億円を費やす木製の巨大環状屋根『リング』への風当りは強い。…『多様でありながら、ひとつ』を示す万博のシンボルといい、約2キロの円周で会場を取り囲み、高さ15~20メートル、内径約615メートルの”世界最大級の木造建築物”とうたっている」
「この『リング』を巡り、今月(11月)6日には、万博協会トップの十倉雅和・経団連会長が『必要である。ぜひ完成させたい』と記者会見であらためて強調。8日の(国会の)内閣委員会では、自見英子万博担当相も『夏の日よけとして大きな役割を果たす』と珍妙な理屈を展開した」
(参考)「『大阪万博、中止でええやん』署名続々 五輪や万博ってやめられないの?歯止めが利かない裏側にあるものとは」2023/11/10 東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/289081
◆「国内の大型事業の関係もあって…」~資材高騰、人手不足で直面する困難
万博であるから、海外からの大々的参加が前提だが、11月末の時点で自前でパビリオン建設をめざして参加するとしている55カ国中、日本の建設業者と契約を結べているのは30カ国にとどまっている。万博協会関係者は、「今の準備状況では予定通りに完全な形で万博を開催することは不可能だ」といい、次のように述べている。
「今の状況で、参加国が自前の予算で建設するタイプのパビリオンに固執しすぎているから、業者との契約が進まないのだ。ただでさえ、国際情勢の影響による燃料、さらに資材価格の高騰で大変なのに、現在日本国内では熊本県でTSMC中心の大半導体製造施設群や北海道での同様な計画での建設事業に人手がとられている。こんな中で、参加各国が提示する予算の範囲で求める立派なパビリオン建設など、国内業者が請け負うことは不可能だ」
◆「維新の会と岸田文雄首相の希薄な関係も一因…」(大阪政界関係者)
大阪の経済団体関係者は、岸田文雄政権下の政治的布陣状況も、「開催行き詰まり」をもたらしていると見て、次のように話している。
「大阪府政と市政をあずかっていた維新の橋本徹氏、松井一郎氏が政権中枢にいた安倍晋三元首相や菅義偉前首相ときわめて関係のよい”蜜月関係”だった頃のようだったら、現在のような万博準備の遅れを挽回するために政権側は挙げて協力しただろう。しかし、岸田首相と日本維新の会との間のパイプはほとんどない。おまけに、昨年らい、内閣支持率がダダ下がりの岸田内閣はそれどころではなく、政権のどこの部分を見ても大阪・関西万博を成功させようという情熱なんか感じられない」
そして、最近の国政選挙における日本維新の会の躍進状況を見て、現在の自民党では密かに「大阪万博を延期に持ち込むことで、維新の失点にさせたい」との思惑も頭をもたげてきているという。
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