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共産党人生の徒然 ―5

日共系全学連の終焉のドラマ
―東大教養学部自治会脱退
学生の良識に破れた「政治カルト」=日本共産党

「社会運動史上の大事件」
―東京大学教養学部自治会の日共系全学連脱退


 二〇一二年の初夏、私にとって刮目に値するニュースが流れました。友人である代々木小夜氏がインターネット評論サイト「JBプレス」(Japan Business Press)に「ついにとどめをさされる『全学連』東大の自治会がひきおこす社会運動史上の大事件とは」を掲載し、それを皮切りに東京大学教養学部学生自治会が、日本共産党系全学連と都学連を脱退する動きが、 ネット上に次々と現れたのです。

 くわしくは後述しますが、日本共産党傘下の全学連(全日本学生自治会総連合【※1】)は、私が大学生だった三〇年ほど前には数系統ある「全学連」のうちの最大勢力、自称「学生一〇〇万以上を結集する」学生運動のナショナルセンターでした。近年、日本共産党をはじめとする左派運動が大幅に後退し、その指導下にある青年学生運動も「絶滅寸前」といった状況となって、全学連の例外ではなく「実際に活動に参加している加盟自治会のある大学は、八大学しかない」(前掲、代々木小夜氏記事)まで二〇一一年時点で落ち込んでいました。

 そうした状況下で、東京大学教養学部学生自治会は、全学連及びその東京段階での下部団体である都学連(東京都学生自治会連合)にとって、「大黒柱」とでもいうべき位置にありました。その東大教養学部自治会(全学連用語では、東大教養CZ。以下、こう呼びます)が脱退することは、日共系全学連の崩壊に直結する「社会運動史上の大事件」というわけです。

 しかし、私がこの件に注目するのは、東大教養CZ脱退により戦後日本の社会運動史で大きな役割を果たした全学連が、終焉の時を迎えていることへの感慨が理由ではありません。この「歴史的事件」を引き起こしたキーマンが、ひとりのごくまじめな現役東大生であることでした。

 既に報道で実名も出ているのですが、ここではあえてそのキーマンをKさんと呼びましょう。Kさんは二期にわたり東大教養CZ委員長を務めたのですが、中国国籍ながら日本共産党シンパで自治会委員長も党の指示があって選挙に立候補して就任した、という人物です。ところが、昨年六月までにKさんは仲間の学生たちと共に「特定党派(日本共産党)から介入、支配される全学連への加盟は学生の利益にならない」と主張し、多数の東大生の支持を得て東大教養CZの日共系全学連からの脱退を実現したのです。

 Kさんは外国籍なので日本共産党や民青同盟(日本共産党傘下の青年組織)には入れませんでしたが、「会議に出る以外は、党員、同盟員活動家と同じ扱い」(Kさん談)という扱いでした。そして、当初は日本共産党の方針に沿って他の学生同盟員や党員と共に自治会役員を務めたといいます。

 Kさんと仲間たちは、どういう経過で東大教養CZを日本共産党傘下の全学連から脱退させようとし、それを実現したのでしょうか?

  • ※1 昭和二〇年、終戦にともなってそれまでの軍国主義的教育体制への反発から、高等教育機関で学生ストが続発し学生自治運動が全国各地で広がりましたが、それを背景に昭和二三年(一九四八年)に一四五大学の学生自治会をたばねて結成されたのが、全日本学生自治会総連合でした。「反戦平和」的風潮を背景に発展した運動の一翼だけに、日本共産党の影響がつよく、有力活動家には後の日本共産党首脳である上田耕一郎(故人)・建二郎(不破哲三)兄弟や当時は学生共産党員だった田中角栄秘書の早坂茂三さん(故人)や読売新聞グループ本社会長・主筆の渡邉恒雄さんなどがいました。
      一九五〇年代の日本共産党主流派が「武力蜂起」路線へ転換したり、分裂したりするなどの流れの中で全学連も分裂し、過激な革命路線を標榜する新左翼セクトの各分派系統が生まれました。一九六〇~七〇年代の安保闘争や学園紛争(全共闘など)の主役となったのは非日共系の学生運動でしたね。現在、日共系を含め「全学連」を名乗るのは五派があるといわれていますが、実態のあるのは日共系くらいでしょうか?(日共系、中核系、革マル系、革労協現代社派系、革労協赤砦社派系)

日本共産党にとって特別に重い、東京大学の位置づけ

 以前、この連載でも書きましたが、私自身は大学浪人の時に日本共産党へ入党しました。当然、大学入学後は日共傘下の学生運動の中心部隊を担うことが期待されていたわけですが、入学先が自治会のない(というか崩壊していた)立教大学で、直接的に全学連の活動に関わらないで推移しました。

 学生時代の党活動はともく民青同盟員や民青新聞、さらには党員や「赤旗」「学生新聞」【※2】の拡大が中心で、活動の目標として「立教大学自治会の再建」が掲げられてはいましたが、学生党支部を指導する党地区委員会もそんなつもりはまったくありませんでしたね(笑)。

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