習近平氏の「中華民族若返りのための投資」に香港経済界がソッポ~懇願から強圧へ、中国共産党中央、経済不振への焦り示す
◆中国中央政府の「香港・マカオ工作弁公室」主任、香港経済界の中国大陸投資の促進を特別行政長官に”要請”
香港経済界筋の情報によると、9月20日に中国国務院(政府)香港・マカオ工作弁公室は香港特別行政長官の李家超(ジョン・リー)氏を北京に呼び出し、弁公室主任の夏宝竜氏(全国政治協商会議副議長・秘書長を兼務)は「香港社会のすべての部門、特にビジネス界と起業家たちが祖国に団結し、中国の経済発展のために努力する機会をつかんでほしい」「自国(中国)と香港への愛情を具体的かつ実践的な行動に変えることが香港の繁栄につながる」と申し渡した。
”要請”の形をとっているが、深刻な不動産不況に起因した中国大陸側の経済不振の打開のために、西側社会とも引き続き経済的なつながりが強い香港経済界に対して積極的な投資の展開を半ば強制的なニュアンスで命じたものだった。これは、中国共産党・習近平指導部の強い意向を受けてのもので、香港経済界筋によると「中共中央が自らの失政が招いた不動産分野への過剰投資による経済不振の穴埋めを自由な経済活動を展開する香港企業に求めるもので、責任転嫁もはなはだしい」と反発を招いているという。
◆英国投資などに逃げる香港経済界への習近平氏の怒り
今回の半ば強制と受け取れるような北京政府側からの「投資促進要請」の背景には、経済不振打破に向けて自らが呼びかけたにも関わらず香港経済界が一貫してソッポを向いていることに対する習近平主席の怒りがある。実はさかのぼる7月、香港経済界の重鎮に習近平氏が書簡を送り、「香港企業がかつてのように中華民族の若返りの夢に貢献するために中国大陸側への積極的な投資を展開することを期待したい」との趣旨の要請を行っていたのだ。
習氏が書簡を送った相手は、「香港の海運王」と呼ばれる包玉剛(Y・K・パオ、1918ー1991)氏の一族。香港経済界の最重鎮である包一族は、かつて1970年代後半から中国大陸に市場経済を採り入れる「改革・開放」路線を中国共産党最高指導者・鄧小平氏が打ち出した際、これに全面協力し、80年代以降の中国経済の急成長に出資面で尽力していた。
自らの師として公言する鄧小平氏を助けた包一族に、再び中国経済にとっての重要局面での助力を求めて「歴史的貢献」を要請したという、習氏一流の政治的パフォーマンスだったのだが、これは全く裏切られるところとなった。包一族への最高指導者からの呼びかけにもかかわらず、香港経済界はこれに一顧だにせず、むしろ「一国二制度」が有名無実化して以降、大量の香港市民が移住している英国に対して以前にも増した投資展開に走っているのである。
その筆頭にあがるのが、香港最大の企業集団、長江実業グループで同創業者で最高執行会長である李嘉誠氏は、ひたすら英国への投資増加の方向を追求している。
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