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リトビネンコ事件⑤:元スパイ暗殺とその国際的影響~主権を侵害されたことを許せないイギリス、西側社会と相応の報復が当然と考えるロシアの論理


【画像① アレクサンドル・リトビネンコと妻のマリーナ。マリーナ・リトビネンコは、夫の暗殺後、一貫して事件真相の究明を求めて活動している。】





◆2016年に出した英国裁判所の「ロシアの国家的関与犯罪」との判断




リトビネンコ事件は、イギリス国内での重要な司法事件と位置づけられた。イギリス政府は、リトビネンコの死後すぐに捜査を開始し、2006年12月には正式な捜査委員会を設置した。捜査は、リトビネンコの体内から検出されたポロニウム210が、ロシアから持ち込まれたものであることを確認し、暗殺が計画的に行われたものであると結論づけた。


【画像② 警察官が Itsuピカデリー店舗前にバリケードテープを張り巡らせる。 2人の警察官が店舗前で警備にあたる。リトビネンコがなくなった翌日の11月24 日に撮影されたと思われる。】




捜査の結果、アンドレイ・ルゴボイとドミトリー・コフトゥンが主要な容疑者として特定された。イギリス政府は彼らの引き渡しをロシアに要求したが、ロシア政府はこれを拒否した。ロシア側の対応に対して、イギリス政府は強い非難を表明し、両国の関係は一気に冷え込んだことはこれまでも触れた。



2016年1月になって、イギリスの裁判所は、ルゴボイとコフトゥンがリトビネンコの殺害に関与し、ロシア政府が少なくとも暗黙の了解の下でこの暗殺を指示したと認定する判決を下した。この判決は、リトビネンコ事件が国家主導の暗殺であることを公式に宣言したものであり、ロシアに対する国際的な圧力を一層強める結果となった。



【画像③ 2006年11月28~29日辺りに撮影されたと思われるItsuピカデリー店の外観。現場検証後、ガラス面装飾の店舗は鉄板でふさがれた。 最寄りの2店舗は通常通りの営業を強調。】

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