リトビネンコ事件⑤:元スパイ暗殺とその国際的影響~主権を侵害されたことを許せないイギリス、西側社会と相応の報復が当然と考えるロシアの論理
◆2016年に出した英国裁判所の「ロシアの国家的関与犯罪」との判断
リトビネンコ事件は、イギリス国内での重要な司法事件と位置づけられた。イギリス政府は、リトビネンコの死後すぐに捜査を開始し、2006年12月には正式な捜査委員会を設置した。捜査は、リトビネンコの体内から検出されたポロニウム210が、ロシアから持ち込まれたものであることを確認し、暗殺が計画的に行われたものであると結論づけた。
捜査の結果、アンドレイ・ルゴボイとドミトリー・コフトゥンが主要な容疑者として特定された。イギリス政府は彼らの引き渡しをロシアに要求したが、ロシア政府はこれを拒否した。ロシア側の対応に対して、イギリス政府は強い非難を表明し、両国の関係は一気に冷え込んだことはこれまでも触れた。
2016年1月になって、イギリスの裁判所は、ルゴボイとコフトゥンがリトビネンコの殺害に関与し、ロシア政府が少なくとも暗黙の了解の下でこの暗殺を指示したと認定する判決を下した。この判決は、リトビネンコ事件が国家主導の暗殺であることを公式に宣言したものであり、ロシアに対する国際的な圧力を一層強める結果となった。
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