「女性天皇をなぜ議論の俎上に載せない?」~全体会議について、福島みずほ社民党党首に聞く①
◆3者だけだった「女性天皇」容認論~「男系男子継承」温存で進められようとした全体会議の2回にわたる議論
5月17日と同23日の2回にわたり衆議院議長公邸で国会内の各党各会派代表者を集めて「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果の報告を受けた立法府の対応に関する全体会議」(以下、「全体会議」とする)が開催された。そこでは、既報の通り大多数の会派が「男系男子継承」温存(あるいは先送り)を前提とした「女性皇族の結婚後の皇籍維持」や「旧宮家を含む皇統に属する男系男子の養子受け入れ」「法律による皇族への編入」との有識者会議報告で提起された3つの方向での「皇族数の確保」策に沿った見解表明がされた。
一方で、社民党の福島みずほ党首ほか、日本共産党、沖縄の風の代表が「女性天皇容認」の方向での所見を表明した他、れいわ新選組は「政治とカネ問題や税金問題など他の課題の議論こそ優先されるべき」との意見を述べた。
この中で、社民党は画像③のような「皇位継承問題について」と題する所見をまとめたペーパーを第一回目「全体会議」に提出し、それに沿った発言を福島党首が行った。そこではまず、「政治利用や元首化につながらないよう、憲法が定める範囲で厳格に運営するべき」「天皇制は、国民主権の原則の下で、主権者である国民の総意に基づいて運用されることが大前提であり、制度の維持を自己目的とした制度いじりは疑問」としつつ、およそ以下の3点にわたり考え方が示されている。
(1)皇位継承を「男系男子」に限る合理的な理由はない
(2)男性皇族と女性皇族の扱いに差があることに合理的な理由はない
(3)安定的な「男系男子による皇位継承」を維持するために旧男系皇族を復帰させることはさらに問題が多い
これらは、筆者らが静岡福祉大名誉教授の小田部雄次先生の助言を得ながら学んできた皇位継承の安定、皇室のあり方についての方向性に完全に合致してはいないが、ほぼ沿ったものと受け取れた。そこで、福島党首に以下に示すような4項にわたる質問を送り、インタビューに応じていただけるようお願いしたところ、快諾を得て「全体会議」で示された考え方について、詳しく聞くことができた。
あらかじめ、福島党首にお示ししておいた質問項目は、以下の通りである。
<福島みずほ党首への質問>
1.4月に公表された共同通信世論調査で、女性天皇容認90%、女系天皇容認84%、男系男子継承に反対が74%だったのに、衆院議長公邸で5月17日に開催された全体会議では、自民党、公明党、日本維新の会などから出された見解は「男系男子継承」維持前提で、世論と大きくズレていますが、現状をどう考えますか?
2.「全体会議」の意義と進め方について、適切であるとお考えですか?国会の正規の会議とは別の場所で、議事録も公開されない形で今後、議論が進められることは望ましくないのではないでしょうか?
3.ジェンダー平等が進められ、LGBTQ理解促進法が成立したのに、国民の範であるべき皇室で、皇族が男に生まれるか女に生まれるかで皇位継承の可否が異なったり、結婚にあたっても自身と配偶者の身分扱いに差が設けられる状況は望ましくありません。せいぜい明治20年に制定された旧皇室典範以降のルールに過ぎない「男系男子継承」ではなく男女問わず天皇の直系長子が皇位継承で優先されるあり方に改められるべきではないでしょうか?
4.通常国会の冒頭で岸田文雄首相が「126代にわたり男系」と述べたことは、歴史学の研究の到達からは乖離した虚偽というべき内容ではないでしょうか?
歴史学、考古学をあわせた研究では例えば第26代継体天皇より前の皇位継承実態は天皇そのものの実在を含めて不明な点が多く、それとは別に祭祀は女性、具体的な執政は男性という形で男女が分担した双系という形での大王が存在したという説も研究側で提起されてます。「すべてが男系継承」という前提で政治の場で決着をつけるのは誤った道に陥るのではないでしょうか?
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