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次々と続く党員粛清~現代社会から乖離した日本共産党の未来論はユートピアにすぎない 筆坂秀世


【画像① 異論者を次々に追放する日本共産党執行部トリオ=小池晃書記局長(左)、志位和夫議長(中)、田村智子委員長(右)。】




昨年、元日本共産党中央委員会の安保外交政策の中心メンバーで出版社幹部の松竹伸幸氏、元党京都府委員会常任委員で京都の共産党の重鎮だった鈴木元氏が「党首公選」など党改革を提案する著作を世に出した(これについて、日共は「2人は謀議して分派を形成した」などと尾ひれをつけている)ことで、日本共産党から除名されている。松竹氏は、今年1月の党大会に向け「除名は不当だから再審査してほしい」と要請したが、これについては大会代議員には諮られず、”党大会幹部団”の判断で審査却下が行われた。


こうした日共最高指導部のふるまいについて、党大会そのものでも疑問を呈する声があがったが、大会で新たに選出された田村智子委員長はこの発言に対してパワハラ的に「党大会結語」で吊し上げ批判を行い、世間の批判を集めて新委員長としての門出を濁すことになった。その後も、党福岡県委員会で県常任委員である神谷貴行氏が県委員会の会議で松竹氏の党除名扱いについて批判的な意見を述べたことに起因して、役職解任の上、最終的には党勤務者として解雇、党からも除籍された。


歴史を振り返るなら日本に限らず、世界の共産党では存在する中で常に党内抗争が発生し、時々の執行部を握る指導者たちに異論を持つ者が排除され(最悪の場合、処刑されたり殺害されたり、という物質的抹殺まで横行した)、党幹部になった者の相当部分がまともに引退することが出来ず、”裏切者””反党分子”などのレッテルを貼られて表舞台から退場することがあまりに普遍的に見られている(”名誉回復”されても、それはほとんど死後になってからの話だ)。現代から見て、とっくに過去の話になっているべき”党からの粛清”現象が、日本共産党ではいまだに続いているということだ。


時代の流れの中で「改革しなければ党が存在しえなくなる」などの危機感から、松竹氏や鈴木氏は党内改革提案をしたのだが、そんなものを日本共産党指導部は全く受け付ける気配がない。そして、お決まりの排除対応となり、これに異論を唱えたものも次々に排除される…こうした外から見れば自分で自分の首を絞めるような愚行の裏には、日本共産党指導者たちが唱導する空虚な未来社会への見通しがあるのではないか?~かつて党No.4の地位にまで就いていた元日本共産党参議院議員で政策委員長だった筆坂秀世さんが、粛清相次ぐ日本共産党の深層を考察した。


【画像② かつて「日本共産党最強の論客」と言われ、テレビ放映の予算委員会質疑などでは「登板すると視聴率がグッと上がる」とされた元参議院議員、筆坂秀世さん。】




以下、筆坂さんの論考「次々と続く党員粛清~現代社会から乖離した日本共産党の未来論はユートピアにすぎない」を掲載する。



◆福岡県の有力党員、除籍へ~投げかけられる「日本共産党の未来社会論」への疑念




昨年らいの松竹伸幸氏らの除名問題は、いまだに共産党にとって重荷になっている。松竹氏に対する除名処分には、党内からも多くの反対意見が表明されていた。今年1月の党大会では、神奈川県議である大山奈々子氏が松竹氏の除名処分に対し、疑問の声を上げた。その要旨は次のようなものである。


 ――昨年、地方選前に松竹氏の著作が発刊され、その後まもなく彼は除名処分となった。大事な時期にと松竹氏に怒る仲間の声があったが、問題は出版したことよりも除名処分にあるのでは。何人もの方から、「やっぱり共産党は怖いわね」「除名なんかやっちゃだめだよ」と言われた。党内ルールに反していたとしても、「こんなことになるなら、将来共産党が政権を取ったら党内に限らず、国民をこんなふうに統制すると思えてしまう」と。党の未来社会論への疑念にもつながっている。


――「結社の自由」を唱えてみても、党内論理が社会通念と乖離している場合に、寄せられる批判を「攻撃」と呼ぶのではなく、謙虚に見直すことが必要だ。規約に反すれば、当然、処分もあるだろうがそれがなぜ除名なのか。犯罪を行なったわけでもない人に、この処分の決定の速さと重さに疑問をもつ仲問は少なくない。


――報告では、指導部の選出方法(党首公選論)や民主集中制について、その見直しを求める論は「『革命論』抜きの組織論だ」と強調されたが、もっと党内で意見交換すべきではないか。除名という形は対話の拒否だ。排除の論理ではなく、包摂の論理を尊重すべきだ。



大山氏は、発言の最後で「『共産党愛』から発した意見です」と述べているように、熱

心に共産党の党勢力の拡大にも取り組んでいる共産党県議である。発言内容も抑制的である。


【画像③ 1月の党大会で松竹氏の除名処分について、「除名という形は対話の拒否だ。排除の論理ではなく、包摂の論理を尊重すべき」と抑制的な批判の発言をした神奈川県の大山奈々子県議会議員。党大会で田村智子委員長が行った「結語」できびしく吊し上げられ、その後はSNS上で党員とおぼしきアカウントから袋叩きにあっている。】





◆党福岡県役員をしていた神谷貴行氏の除籍





この大山氏がまた苦悩する出来事が起こった。共産党福岡県委員会で常任委員を務め共産党推薦で福岡市長選挙にも立候補したことがある神谷貴行氏が8月6日に共産党から除籍され、同16日に福岡県委員会を解雇されたのだ。同氏は京大法学部出身で紙屋高雪(かみやこうせつ)というペンネームで漫画評論家としても有名な人物らしい。私は漫画も読まないし、世代も全く違う上に、党を離れて20年近く経つので全く知らない人だ。「ご飯論法」という言葉の命名者で2018年新語・流行語大賞を受賞している人物だ。



なぜ除籍となったのか。党福岡県委員会は次のように説明している。

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