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”燃える男”カディロフ首長が「パレスチナ連帯」で怪しげな動き~水面下で介入模索か?

◆「ガザの出来事はイスラエルによるパレスチナの”民族浄化”」~チェチェン共和国のカディロフ首長


ロシア連邦の中で独自の武装部隊を保持し、イスラム教を基盤とした独自のシステムで自治国家を営むチェチェン共和国のラムザン・カディロフ首長が、パレスチナの事態について徐々に踏み込んだ発言をしている。既に「人道支援物資を2万人分、直ちに送る」と表明しているが、エジプト国境が基本的に閉鎖され、海上はイスラエル海軍が閉鎖している下ではかなり困難であろう。



【画像① ロシア連邦チェチェン共和国のカディロフ首長は「ガザ地区での悲劇はイスラム教徒であるパレスチナ人に対するあからさまな民族浄化だ」と述べ、イスラム国として看過できないとの姿勢を示した。】


しかし、既報のように同じくイスラム教徒の多いロシア連邦内のダゲスタン共和国のマハチカラ国際空港で、イスラエルからの到着便に暴徒が殺到する事件が起きたことに示されるように(プーチン大統領はウクライナ諜報機関やCIAの挑発が背景にあったと主張しているが)、たとえハマス側からのイスラエルへの奇襲攻撃に起因したとはいえ、イスラエル軍が大規模な空爆や地上砲火で無辜のパレスチナ住民を殺戮することに、敬虔なイスラム教徒たちは”同胞”を殺される思いで怒りを充満させている。1990年代半ばから数年にわたるロシアからの分離要求戦争で熾烈な戦いぶりを示し、プーチン政権が大幅な自治を認めることと引き換えで和平した後も、ウクライナへの「特別軍事作戦」で独自に直轄部隊を送り込んだチェチェンのカディロフ首長も、この事態で黙っている訳にはいかなかった。


「【グローズニイ、10月20日、リア・ノーボスチ通信】 チェチェン共和国のラムザン・カディロフ首長は、『ガザ地区での悲劇はイスラム教徒であるパレスチナ人に対するあからさまな民族浄化だ』との考えを示した。…カディロフ氏はテレグラムのSNSアカウントで、『ガザ地区で起こっている悲しい、心を引き裂かれるような出来事は、誰もが無視できない出来事だ。毎日放送される映像によって、我々一人一人は、イスラム教徒であるパレスチナ人に対するあからさまな民族浄化の目撃者となっている』とした」

「カディロフ氏は西側諸国の代表者らは犯罪者であり偽善者であるとし、『ウクライナの悪魔主義者(サタニスト)とナチストを支援している』とも語った。…『そのため、特別軍事作戦に基づいて、我々は喜んで彼らと戦っている』と述べた」

(参考)「カディロフ氏~ガザでの出来事はイスラム・パレスチナ人の民族浄化」2023/10/20 リア・ノーボスチ通信(ロシア語報道)

https://ria.ru/20231020/gaza-1904237149.html


◆日々エスカレートするカディロフ首長の発言~「イスラエル・ファシズムの残忍性はヒトラーに匹敵」


最近になってカディロフ首長の発言はエスカレートしている。「イスラエルのファシズムはヒトラー以上」と述べたのだ

「チェチェン共和国のラムザン・カディロフ首長は、自らのテレグラムで、パレスチナに対するイスラエルのファシズムは、その残忍性において、ヒトラーのものを上回っている、との考えを明らかにした。・・・『恐るべきシオニスト的民族浄化活動は、無垢の人々数千人の犠牲者を生んでいる。パレスチナに対するその残忍性において、イスラエルのファシズムは今日、ヒトラーのファシズム以上とは言わないまでも、それに匹敵するものだ』と述べている」


【画像② チェチェン共和国は数万規模の「親衛隊」(カディロフツィー=カディロフ近衛兵)を擁している。ウクライナにおける「特別軍事作戦」にも派遣され、ロシア軍と肩を並べてウクライナ軍と戦っている。】


<イスラム諸国によびかけ~和平部隊派遣も言及>

「カディロフ氏は、パレスチナのイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃し、ガザ地区への報復攻撃が始まった10月7日から2日後にはパレスチナへの支持を表明。『イスラム教諸国の指導者らに対して呼びかけます。連帯して、皆さんが友人と呼んでいるヨーロッパ諸国、西側諸国に対して、戦闘員の殲滅という口実の下に民間人を爆撃するのをやめるよう呼びかけましょう』ともしている。…カディロフ氏は、必要な場合、紛争地域に和平部隊を派遣する用意があるともしており、『誰が正しいのか、間違っているのか、我々の考えを決めた上で、戦闘を続ける人々をやめさせる』と約束した」

(参考)「カディロフ氏~『イスラエルの行動はファシズム』」2023/10/29 RBC(ロシア語報道)

https://www.rbc.ru/rbcfreenews/653d9df39a794747c28ed126

「和平部隊の派遣」をロシア連邦の枠組みからはみ出て述べているのは、かなりな決意を持っていることの表れだ。微妙な点で大事なことは、ハマスについて言及していないこと、そのうえで「誰が正しいのか、間違っているのか、我々の考えを決めた上で、戦闘を続ける人々をやめさせる」としていることだ。これは、過去のイスラエルによる重囲と差別を理由にしたとはいえ、事実上の殲滅戦につながることが明白なのに戦端を開いたハマスをカディロフ首長が全面的に支持しているのではないことを示している。

そして、実は和平部隊の話をする上で、チェチェン共和国はある重要な措置をウクライナ紛争に参加しながらとっていた。


【画像③ チェチェンの女性は夫や恋人に勇敢に戦いに出かけることを望む。建前は別として、ウクライナに出征することより、”イスラム同胞”であるパレスチナ人民のために戦いに行くことは家族たちからも強く支持されるだろう。】


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