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中国共産党の”台湾影の政府”計画が発覚~香港の教訓ふまえ占領後に共産党中心の権力移行の迅速化を企図


【画像① 北京の人民大会堂での「鄧小平生誕120周年記念座談会」において台湾にかかわる重要演説を行う習近平国家主席・総書記。8月22日。】





◆鄧小平生誕120周年記念座談会で「祖国の完全統一は宿願」と強調した習近平主席




このところ、経済不振や政権運営の独裁傾向強化に不満が高まっている中国について、米国など国際社会の一部の見方として「習近平政権による台湾統一(武力侵攻)の直近での可能性は遠のいた」との見方が出ている。しかし、独裁的な政権によくあることだが、国内での不満を逸らすことを目途に国の方向を外に指向させるといった意味で、台湾統一という目標を習近平指導部が折につけ強調しているという動きは相変わらずだ。


8月22日は現在の中国現代化路線の端緒を「改革・開放」路線としてひらいた鄧小平氏の生誕120周年にあたり、北京の人民大会堂で中国共産党中央委員会は座談会を開催した。そこで習近平主席が”重要演説”を行った。


「習氏は次のように強調した。鄧小平同志は全党・全軍と全国各民族人民が広く認めている、人望のある優れた指導者、偉大なマルクス主義者、偉大なプロレタリア革命家、政治家、軍事家、外交家、長い試練に耐えた共産主義の戦士、党の第2世代中央指導集団の核心、中国の社会主義改革開放と現代か建設の総設計師、中国の特色ある社会主義の道の開拓者、鄧小平理論の主要な創設者、世界の平和と発展に重要な貢献をした偉大な国際主義者だった。党・人民・国家・民族・世界に対して際立った貢献をし、功績は歴史に輝き、永遠に後世を励ます」


(参考)「北京で鄧小平生誕120周年記念座談会 習近平氏が重要演説」2024/8/23 新華網日本語

https://jp.news.cn/20240823/fa50b875d5224178b19cc6a7f80cfc64/c.html


この”重要演説”では、メディアに公開されていない部分でこう述べられたという。


「香港に続き台湾を祖国に復帰させる『祖国の完全統一』こそ、鄧小平氏ひいては毛沢東主席以来の宿願であり、党にとっての最大の目標である」


習近平氏は、第20回中国共産党大会で慣例を超えて最高指導者3期目の継続となる頃から、しきりに「台湾統一」の号令を発してきた。「人民解放軍創建100年(2027年)までに台湾統一を」との談話を人民解放軍幹部(全人代代議員)を集めて行ったことが、米議会公聴会でも報告されている。


今回もあらためて、自身の政治目標としての「台湾統一」を確認した形であるが、中国外交筋によれば単なる”宣言”にとどまらない裏付けが今回の発言には込められているのだという。中国共産党政権による台湾掌握をめざした”影の政府”作りが具体的に踏み出される段階に至ったというのだ。


【画像② 「鄧小平生誕120周年記念座談会」の様子。「『祖国の完全統一』こそ、鄧小平氏ひいては毛沢東主席以来の宿願」と重要演説で習近平氏は述べた。】





◆”影の政府構想”を厦門(アモイ)大学両岸都市研究所が立案




”影の政府”とは、人民解放軍による台湾占領後、直ちに中国共産党政権による台湾統治が機能するようあらかじめ台湾統治のための暫定的な行政機構を”影の政府”として発足させ、様々な想定のもとに実験的運営を開始するという内容を持つものだ。中国共産党の関係部門に周知する説明のための機密指定文書に記されているものだが、構想の立案はおそらく党中央から出ていることをボヤかすために台湾に最も近い大陸側の対岸部にある厦門市の厦門大学両岸都市研究所が行っている。


【画像③ ”影の政府”構想を提案した両岸都市研究所のある厦門大学。日本の中央大学と提携関係にあるなど、各国との学術教育機関への連結・浸透を図る海外工作の拠点大学でもある。】

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