”思想統制は大学から”~学生運動抑制へますます強まる習近平圧制~重要大学の学長室を共産党大学委員会事務室と一体化、「党務と学務を統一」
◆習近平「ゼロコロナ」路線への反発、「民主化」要求掲げる学生運動へ警戒感
ようやくコロナ禍が落ち着いた感のある中国社会だが、恒大集団の破産と各地の「マンション焦げ付き」などの不動産大不況、失業増大などで新たな社会不安の要素が広がっている。コロナ禍の最中には、徹底した移動規制や街区ごとの封じ込め策など人権など全く無視の共産党政権の強硬な対策に都市部では市民からの抗議活動が広がり、特に大きな大学のあるところではこれが「習近平辞任」「共産党排除」までスローガン的に求めるような反政府・反中国共産党色の強いデモンストレーションにもつながった。
特に大学生などは「市民的自由」「言論自由」を求める声を率先して上げ、住民、労働者(失業者)の運動を牽引する役割を果たした。言論的主張が弾圧を招く恐れから、白い紙を掲げて抗議デモを行う「白紙デモ」も、北京の大学生たちが始めたものとも言われている。
学生運動が先鋭化したのは、大学卒業後の就職マッチングが中国社会でうまく行っておらず、就職率が極めて低調なことも背景にある。例えば、2022年の中国統計によると、文系学生で12.4%、エンジニア系が17.3%、理系全体でも29.5%という低さで、23年はもっと下がるだろうと見られている。
中国の大学、専門学校(専科大学含む)に入学する学生数は、ここのところ1000万人超で推移(2022年は1113万人)しているが、専門学校を含めた卒業者の企業就職率もここ数年は半数程度だ。これにともない、社会的ニーズが減った専攻学部が廃止されつつあるというが、全体的な大学、専門学校の設置学部・学科の改編、運営の変更は中国経済社会の変貌に追いつかず、卒業者の就職先とのミスマッチ状況がますます深刻になっている。
こうした状況は、学生たちを精神的にも追い詰め、何かきっかけがあればすぐに抗議の火が燃え上がるような土壌を生み出している。これを恐れた習近平指導部は、「習同志の重要講話」や「中国の優れた社会主義特質と社会主義的民主主義の優位性」などについて各大学の党委員会を通じて学生内での学習運動を煽っている。しかしながら、実地的な大学での教育学習や研究を通じて世界の情報に触れることのできる学生たちに対して、中国共産党宣伝・教育部門が打ち出す教条的な理屈で意識を変えるなど、まずもって難しいことは明らかだ。
◆「国家重点大学」で中国共産党大学委員会と学長室を一体化へ
なかなか効果の上がらない「学生への党性教育」(党の路線とイデオロギーに基づくものの見方を植えつけることを目的とした教育)の現状をふまえ、「国家重点大学」(北京大学、精華大学、上海交通大学、復旦大学などを含む全国112校)を中心に学内の大学党委員会と各大学の学長室を一体化する措置が進められようとしているという。これにより党務と学務を統一し、共産党が大学の教育研究活動全体についても主導権を握ることになる。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?