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北朝鮮で「反離婚キャンペーン」を強化~離婚者を強制収容所送り


【画像① 北朝鮮「建国の父」=金日成(右/キムイルソン、1912-1994)とその妻、金正淑(左/キムジョンスク、1917-1949)は「抗日戦争」中に”革命の密営”で結ばれ、後継者・金正日(抱かれている子供/キムジョンイル、1941-2011)が生まれたとされる。実際は日本の官憲と軍に盗賊同然に追われてソ連国境を越境し、ソ連極東部で金夫妻が暮らしている時に正日は生まれたのであるが、チュチェ思想の核心部分である「革命的血統」につらなる理想家族の伝説として”革命の密営”(中朝国境にある白頭山の麓の森林地帯とされる)で物語が創作されている。これが、北朝鮮の教義では全人民が理想とすべき夫婦像、家族像だと位置づけられている。】




◆離婚急増に最高指導部が危機感~チュチェ思想に基づく社会主義社会の崩壊につながる⁉


北朝鮮では、新型コロナウイルスの影響で悪化した生活環境を背景に、2020年以降、離婚件数が急増している。北朝鮮の指導思想であるチュチェ(主体)思想は、「完全なる社会体制=政治的・社会的有機体」のトップの部分を”聖家族”、つまり「革命的血統」である金一族が位置づけられるもので、「建国の父」である金日成主席をはじめ直系の先祖及び子孫が理想的な伴侶を得て代々を形成したとし、それを北朝鮮の社会主義社会でも各層の人民、家族が理想のモデルとしなくてはならないものとされている。


チュチェ思想では、建国の父である金日成とその妻・金正淑を理想の夫婦像として掲げる。この夫婦像を基盤とする「家庭」が北朝鮮社会の基本的な構成単位とされており、夫婦関係の崩壊が独裁体制の基盤崩壊につながる可能性があるとして、指導部は危機感を強めている。「離婚」急増は、”チュチェ社会”の土台であり最小単位ともされる家族を崩すものであり、看過すべきではない事態なのだ。


◆離婚件数5倍化に「収容所送り」の強硬措置で対処はかる


北朝鮮では、基本的に不貞行為が認められた場合のみ離婚が許可されてきた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響による経済的苦境が長期化し、生活苦を背景にした原因が主なものとなっている。特に農村部では深刻な食糧不足が続き、それに起因した家庭内の不和が頻発している。このため裁判所への離婚申請が急増し、各地の裁判所には早朝から離婚申請者が列を作る光景が見られる。


【画像② 1990年代よりは相当改善されたとされるが、北朝鮮農村部の暮らしはここ数年猛威をふるった新型コロナウイルス感染拡大の影響で闇市場などの”裏経済”が壊滅状況になり、相当なダメージを受けいまだ回復していないと言われている。その中で、北朝鮮人民各層で離婚が急増した。】


韓国外交筋によると、北朝鮮の現在の離婚件数は2021年の約5倍に達し、総計で100万人を超える。この事態を受け、北朝鮮当局は最高指導者「金正恩」署名の重要指示を出し、「反離婚キャンペーン」の展開を始めている。「故なき離婚者は、労働改造所送りにする」という強硬措置が指示されており、事態の重大性が窺われる。


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