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”男系男子継承温存”に妥協しかかる立憲民主党~「全体会議」で示された皇位継承についての各党・各会派の考え方①
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◆1月31日の「全体会議」で配布された各党・各会派意見の要点
1月31日、昨年中断された「天皇の退位等に関する皇室典範特定法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果の報告を受けた立法府の対応に関する全体会議」(以下、全体会議とする)が衆議院議長公邸で再開された。衆参両院政府議長は「1月24日から開会されている通常国会の会期中に議論をまとめたい」との意欲を持っているという。
この間、筆者が指摘しているように、2022年12月22日に岸田文雄総理(当時)に対して答申された有識者会議報告書が提起した内容に沿って全体会議で「立法府(国会)の総意をまとめたい」というのが目的なのだが、報告書そのものが「悠仁親王までの皇位継承順位はゆるがせにしてはならない」とか、「皇統に属する男系男子を養子として受け入れるか、法律によって皇族に繰り入れる」などの方策を結論としたもので、本質的に男系男子継承の維持・温存が前提となったものだ。当然、これについて女系・女性天皇容認の立場を明らかにした党・会派等から反発する意見が出ている。
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◆総選挙では86%の候補者が「女性天皇賛成」の立憲民主党、”妥協”は公約違反
立憲民主党も「有識者会議報告書は、附帯決議の要請に十分に応えているとは言えない」と批判的見解を明らかにしたが、その一方で「有識者会議報告書は差し戻せないので、これを前提にやるしかない」などといきなり妥協的立場を明らかにしている。男系男子継承の維持に阿った形なのだが、同党には昨年10月27日施行の総選挙では、NHK候補者アンケート調査によると86%の候補者が「女性が天皇になるのを認めることに賛成」との意思表示をしており、全体会議に出席した野田佳彦代表らの態度が果たして党内の総意を示しているか疑わしいものとなっている。
いずれにしろ、世間に公表された衆院選の候補者アンケートは各党の候補者が選挙に当たって有権者に示したものであるので、上記のような状況だったのに選挙間もない今の時期に、党内で本格的な議論をした形跡もないまま全体会議で「やむをえない」的な態度で「女性天皇容認」から「男系男子継承維持」に転ずるのは、悪い言葉で言えば詐欺的行為、控え目に行っても公約違反に等しいふるまいと言わなくてはならないだろう。
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いずれにしろ、憲法第1条で言うところの「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存ずる日本国民の総意に基づく」という原則に立つなら、国民から選出された代表たちであるとはいえ、国会の正規の議場ではない公的か私的かの性格もあいまいな衆院議長公邸の密室の会合で皇位継承のあり方、もっと言えば皇統の存続を左右するような重要問題を内々に審議しようとする現在の国会のあり方自体がおかしい。そこで、この全体会議で示された各党・各会派の意見のうち、立憲民主党など議論のカギを握ると見られるいくつかの党派の見解を全体会議で配布された資料の記載を抜き書きして紹介する。
資料は各党・各会派からあらかじめ文書提出されたり、これまでの全体会議(昨年5月)などで述べられて示された見解を額賀福志郎衆院議長の要請で衆議院法制局と同憲法審査会事務局がまとめ、1月31日に全体会議出席者に配布したものである。
◆立憲民主党の意見の要点
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以下、全体会議で配布された「各党・各会派の意見の要点」のうちの立憲民主党から示されたものについて、掲載する。適宜、※を付して引用者(篠原)による補足説明と批判的観点を短文で示した。
「◎」以下の項が有識者会議報告書で示された項目で、それぞれについての党派意見を「・」以下に列記した。
(以下、有料版)
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