ナミゲンゴロウ 採集記【山梨県】2023.5.26
幼い頃、両親に買ってもらった図鑑を眺めるのが好きだった。
私は日頃から好奇心の赴くままに図鑑を読み走った。
なかでも昆虫図鑑だけは、糸綴じが完全に解(ほつ)れ、図鑑をめくる度にページが抜け落ちたが、それを何度も修繕しながら、繰り返し読み込んだ。
とりわけ水生昆虫たちの自由な暮らしが描かれているページは美しく、東京生まれ、東京育ちのぼくにとって、あの見開きに広がる環境は、ただひたすら魅了された。
それからのこと、カブトムシには目もくれず、友だちには、ぼくたちが知らない外の世界にはゲンゴロウという生き物が生きていると教え、まわりの人間をも魅了していった。
ただ、ここは東京23区。
近所には田んぼすらなく、遠出しても小学生程度の知識では絶滅危惧種であるゲンゴロウを見つけ出すことは到底不可能であった。
そんなこんなで、私は大学生になり、自動車免許も取得した今、ナミゲンゴロウを捕まえようと思い立った。所属している大学の生物研究部にて企画を立てると、計7人が集まった。
2023年5月26日、私は5時に起床して、待ち合わせ場所である新宿駅西口まで車で友人たちを迎えに行った。それから首都高・中央自動車道を快調に飛ばし、予定時間より早く目的地に着いた。
早速、私たちはタモ網を片手に、ため池に向かう。
いきなり最初のポイントではタイコウチを2匹。
幸先は悪くはないが今回の狙いはナミゲンゴロウ。
足早に引き上げ次の場所に移動することにした。
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あらかじめGoogleでピンを刺した場所を順に巡る。
スポットに着くと「これは良い環境だ」と感嘆。
しかし、網を入れてみるがいない。
次のスポットに着く、網を入れてみる、いない。
去り際には「環境は良いんだけどなあ」と弁解がましく口ずさむ。
まだストックは10ヶ所以上ある、どれかのポイントには生息しているだろう……と思っていた。
最後のポイント、生き物の影すらなかった。
さすがに心が折れた。ガサガサは試行回数ゲーであることは重々承知だが、生き物が何も入らない網を振り続ける忍耐力はなかった。
「まあいとも簡単に見つかる虫ではないよな」と思いながら、一応近くにあった素掘りにタモ網を適当に入れてみる。
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なんか入った。
泥を被さったやや黒褐色を帯びた大きめの物体が勢い良くタモ網を這い上がってくる。
なんだ!?
(直感でガムシではないと分かった。)
え!?
(昔からずっとファンです!図鑑で良く見てました!)
まさに幼い頃、図鑑で何度もみたナミゲンゴロウである。
心底うれしい。
生息環境がイマイチ把握できてなくて、ダメ元だった採集の雰囲気が本気モードに転変する。
「大丈夫だ、ポイント選びは間違ってない!」
さらに、タモを入れ続けるとなんとクロゲンゴロウが入った。
山梨県ではCR(絶滅危惧ⅠA類)らしい。
立て続けに、シマゲンゴロウも捕まえた。ちなみに、シマゲンゴロウは私が最も好きな種類である。気分は上がり続けた。今ならなんでも獲れる気がした。
結局、ナミゲンゴロウは4匹 捕まえることができた。
諦めないって素晴らしい、記憶に残る幸せな一日だった。
<つかまえた!>
ナミゲンゴロウ
シマゲンゴロウ
クロゲンゴロウ
コシマゲンゴロウ
ガムシ
コガタガムシ
コオイムシ
タイコウチ
その他水昆
おまけ
ここまでみてくれてありがとう!
おしまい