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私のあの人

どうしてこんなことになったのだろう。

私の愛おしいkはガチガチの理系だ。
誰もが知ってる大学を出てるけど、その時に頑張る力を使い果たしたのか、
今はアイドリングしながら生きている男だ。
知性知力の盛大な無駄遣いをしている、と私は日頃思ってる。
それでも大学受験時とかは流石に勉強していたようで、
仮眠をとったあと寝ぼけ眼で、「目覚まし時計を問題と認識して解こうとしていた」という時期もあったらしい。
想像がつかない。そして意味がわからない。

いつも難しい本を読んでいる。
何が楽しいのか全くわからない。
仕事にも関係ないし、ジャンルが幅広すぎる。
筋トレしてムキムキだし、添加物をほとんど取らないで徹底した食生活を送っている。何が楽しいのだろう。お酒も飲まない。私はそこそこ健康オタクだけど、kのそれは常軌を逸してると思う。
多くの大人が頑張るようなこと、例えば仕事とかには興味がなく、よく「めんどくさい」と言う。やる気になればいくらでも稼げるのに、最小限のエネルギーで仕事をしてる。
性的に強靭で、人間離れしているため、「一体、kの体の中どうなってるのさ」と情事の後に笑いが止まらなくなる。人は自分の想像をこえるようなことが起こると、例えそれがムーディーな場面でもシリアスな場面でも、とにかく笑ってしまうのだ。

愛だとか肉体関係だとか、とかく人は男女関係を分類したがるけれど、
どこに分類される関係なのかよくわからないし、当てはめたくもない。そうする意味がわからない。
ただ、お互い出会うことは必然だっただろうし、こんなに真逆なのにこんなにも似ているという、不思議な感覚がある。

私は今、パソコンの前でカタカタとこの文章を打っているが、目の前で
紫色で天体望遠鏡のようなものと、チョコレートのような正方形の箱に収まったショッキングピンクのと、2つの玩具を充電している。

どうしてこんなことになったのだろう。
こんな状態を家族の誰にもみられてはいけない。
一体何と説明したらいいのだ。
見ようによっては、肩こり解消のマッサージ機に見えなくもないが、
実演するには難しい。

そうだ。性的にではなく、体の構造とか真面目な話をしていたはずなのに、kが唐突に「もっと大きいやつを買おうよ」と言い出したのだ。その玩具は私の中に入るものであるのだけど、ただ入るだけではなぜかkが満足せず、周波数が変わるだとか、伸縮するだとか、リモコン付きだとか、温度が変わるだとか、機械音痴とはいわないけど、そこそこ機械苦手な私には、高性能すぎる。
そもそも、充電自体が難しい。
CEマークがついてたので、ヨーロッパ製品だろうが、磁気充電式とはあまり馴染みがない。もう一つは防水用に栓が付いており、そこが充電の差し込み口だったのだけど、そこまでなかなか辿り着けず、あちこち触って動き出した時の冷や汗。(まろんさんから、そのような玩具が深夜止まらなくなって、雪に沈めたという話を聞いていたので、冷静に長押しできた。ありがとう、まろんさん)。
そして、止めるタイミングで長さが変わってしまい、元々入っていたブリスタの内在に収まらなくなってしまった。なんなの、ルーレット的な仕掛けなの?
まあいい。とにかく、

困ったら冷静に長押し

生きる上で大事なことだと思う。

最近仕事で忙しかった。頭から「プシュー」と聞こえるぐらいに、疲れ果てた。
ただkに会いたかった。そう伝えたはずなのに、「俺が支払うからやっぱり買おうよ」とどう考えても問と解が一致しない返事がきた。もうめんどくさくて、「じゃあ選んでよ」と言ったら、本当に選んできた。2つも。「どっちがいいの?」「どっちも」「刺激強すぎない?一個づつでいいじゃん。私はジェットコースターに乗れない女なのに」「いいじゃん。買っちゃおうよ」。
どうしてそんなに知力を無駄にするのだろう。
前も、技術者が新しい治具を手にしたように、素早く形状を確認しているようで、私はkのその姿を一糸まとわぬ姿で眺めていた。
今回、こんな高性能なやつが私の目の前に二つもある。
仕事の時にも見せない真剣な表情で、これを手にする姿は容易に想像できる。

充電が終わった。
動作確認だけはしてほしい、とkがいうので、動かしてみた。
静まり返った部屋に響く振動。10の周波数違いの確認はできなかったけど、とりあえず動いた。

どうしてこんなことになったのだろう。

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