2024/06/16でかい話2
あらゆる闘争が、その可能性の危うさの上に成り立っているのだから、またあらゆる闘争はより大きなものへの挑戦である。
これ以外の闘争は、もはや闘争ではなく、作業に過ぎない。
その巨大な少女は、われわれを踏み潰すことに初め躊躇していたが、じきに状況に慣れ、かえって痛痒を感じないようになっていた。
われわれは彼女を排除する必要に迫られた。
「相手は少女である」
「人間である」
そういった反対意見もあったが、結局のところ、われわれがなんらかの対象に尊厳を認めるためには、その対象が十分にわれわれ自身と共通の要素を共有できていることが条件らしい。
つまり、その巨大な少女は人間とは見做されず、一個の災害として無力化する必要があるものと結論づけられた。
とはいえ、相手がわれわれと同じ構造をただ大きくしたものに過ぎないことは十分に理解できたため、その排除の方法もさして議論の余地はなかった。
せいぜい、物理攻撃によってか、それともバイオ兵器によってかが議論されたに過ぎない。
一旦、排除すると決められたら、この際だからと処置前に色々と実験を行うこととなった。
電流を流してみたり、血液を採取したりするなど、その生態についてできる限り記録をとることがまっとうなアプローチであるとされた。
少女は、遠からず自分が抹殺されることを悟り、当然のこととしてそれに対抗する手段に出た。
「私は神の使いである。自然の脅威が具現化したものである。
もし、私に危害を加えるのであれば、誰であれ報いを受けるであろう」
まず、市民のうち洗脳されやすいものたちが少女の側についた。
一個の教団のようなものとなり、世論が二つに割れた。
そうして、われわれが手をこまねいているうちに信者がわれわれに襲いかかってきた。
信者たちが攻めあぐねると少女本人がやってきて加勢する。
こうなると、われわれに勝ち目はない。
ついに、少女は大人の女になった。